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観覧車、舞う雪、煌めく夜景 ◇

 


 あの日、2人で来た遊園地。

 すれ違いをして、仲直りして恋心に気付いた場所。


 今日は親友から恋人になって、また此処に来る事ができた。

 中に入ると2人を祝福するかのように、一層イルミネーションが煌めいている。


「……綺麗……!」


「すごいイルミネーションだ」


 沢山の家族やカップルが、感嘆の声をあげ写真を撮っている。

 少し夏の福火渡しを思い出す。

 皆が、幸せそうに笑っている。


 目の前にある皆の幸せに、椿は涙を滲ませる。


「みんな、幸せそう……すごく素敵……」


 過酷な運命を背負っていても、人の幸せを喜びその平和に涙できる。

 麗音愛は隣にいて、その椿の綺麗な心を尊く思った。


 衝動で、そっと手を握る。


「れ、麗音愛、外だよ……」


「こんな場所にこうやって、いるんだもん。

 誰が見たって、誤魔化せない恋人同士だよ」


 まさか白夜団の誰かがいないかと、キョロキョロと当たりを見回すが

 皆が、自分の事に夢中で誰かを見る余裕もない。

 まぁその中でも椿に見惚れ怒られる男は数人いるようだ。


「俺も、こんな素敵なクリスマス初めてだ」


「……今までどうしてたの?」


「えー、特に何も……家族でクリパなんてする年齢でもないし」


「女の子と……とか」


「女の子と過ごすクリスマスはこれが人生初めてです。

 考えないようにしてたよ。クリスマスなんて……なんてって思ってた」


 モテない日陰人生17年。

 わかっているはずなのに、なんだかホッとするような顔をする椿が可愛く思える。


「写真、撮ろうか」


「え……いいの?」


 写真は苦手で嫌いだけど、最近少し意識も変化してきた。


「うん、俺も椿の写真欲しいなって思う」


「う、うん! 私も麗音愛との写真欲しい!」


 うまくはきっと撮れないだろうが、2人でインカメラにして写真を撮った。


挿絵(By みてみん)


 お互いにも写真を撮り合って、椿が宝物のように携帯電話を胸に抱く。


「じゃ、観覧車に乗ろう」


「え! やってるの!?」


「うん、直って今日は稼働してるって」


 また、離れてしまった手。

 さっき繋いでいたけど、どうしよう……と椿は思う。


 繋ぎたいけど、本当にいいのかな……と思っているとぎゅっと麗音愛に握られた。


「あっ」


「あ、冷たかった?」


 手袋をしていない手。

 特に呪怨の影響で冷たい麗音愛の手。


「冷えちゃうかな」


「ううん、大丈夫」


 椿も握りしめる。

 冷たい冷たい麗音愛の手も、椿には1番温かい手だ。


 ちょうど良いタイミングで、観覧車にはすぐ乗れた。

 あの日は麗音愛が椿を抱き飛んで、2人で見た夜景。

 今日はゆっくりと上に昇っていく。


「雪が降ってて、また綺麗」


「うん、すごいね……綺麗だ」


 薄暗い観覧車の中、お互いに向かい合って座り外の景色を見ていた。

 ふと、目が合ってドキリとする。


 麗音愛は椿に手を伸ばした。


「寒いし、こっち……来る?」


「う、うん……」


 手を伸ばしてきた椿を、少し強く引いて抱き寄せるように夜景が見える側の隣へ座らせた。

 あの日も同じ夜景を見て、触れられなかった事を思い出す。


「わぁ……見て、電波塔も見える……綺麗」


 麗音愛は椿の頭の上から夜景を見ていると喜ぶ声が、小さな肩が愛しくて

 そのまま後ろから抱きしめた。


「ひゃ……」


 椿が驚くのもわかるし、自分も恥ずかしいというか大それた事をしているのはわかっている。

 でも、抱きしめずにはいられなかった。

 少し不安になったが椿もそっと、抱きしめた腕を掴んでくれた。


 はらはらと……白い雪が夜景に混じって幻想的だ。


「……みんなの灯りを守っていかないとね……」


「うん、そうだね……守ろう……」


 1つ1つが、生活の、皆の命の灯り。


「……化け物の娘でごめんね……」


「椿……」


 この言葉をネガティブだ、そんな事を言うもんじゃない、とは言えない。

 どうしたってこの事実はずっと椿を苦しめ、ずっと椿を責め続ける呪いだ。


「私が普通の女の子だったら……

 私なんかじゃなかったら麗音愛は……」


 椿が何を言おうと、麗音愛はそれを受け止め続ける事を決めている。


「椿……俺は椿が好きなんだよ。

 椿に出逢えて良かった。

 だから椿のお母さんの篝さんに感謝してる……」


「麗音愛」


「また来年も一緒にクリスマスを祝って過ごそう

 ずっと、ずっとこれからのクリスマスもずっと」


「うん」


 どんなに椿が自分を否定しても、それ以上の言葉で態度で幸せにしてみせる。

 椿の存在を肯定し続ける。


「椿、大好きだよ」


「……うん、私も大好き……世界で1番、麗音愛が……好き」


 椿の頬から涙が溢れて、麗音愛の手に落ちた。

 いつだって、君の命を祝福する存在でいたい――。






いつもありがとうございます!


前回の「レストラン・ノクターン」回を読んでくださった

リスペクト「ビストロ・ノクターン」の作者、銀多ぺん様から

素敵過ぎるイラストを頂きました(#^.^#)


挿絵(By みてみん)


麗音愛と椿を祝福してくれる「ビストロ・ノクターン」の皆様(´;ω;`)ぶわぁ!!

憧れの作家様にこんな素敵な絵を頂き感無量です。


もう初夏、ですがこのイラストを見るとクリスマス気分がまた盛り上がります!

ありがとうございました!!

カラレスは沢山のファンアートも頂いておりまして本当に幸せです。


此処での皆様のブクマ、評価、感想、レビューも

大変励みになっております!

気に入って頂けましたら是非お願い致します!



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― 新着の感想 ―
[一言] 今回も美しい夜景と二人の仲の良さとちょっとのドキドキが伝わってきました。 それから素敵なイラストも! どうかこの幸せが長く続きますように……
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