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初めてのデート~クリスマス・イブ~ ◇

 

 椿の態度が少し気になった麗音愛だったが

 次の日も笑顔を見せてくれたので、蒸し返すような事はもう言わなかった。


 何やら学校でも『世紀末』なんて言葉を耳にする。

 クリスマスの陽気のなかに混ざるには不穏な言葉だが

 イブを前に『世紀末!』と叫んで首を締めてこようとするカッツーが広めているんじゃなかろうかと

 麗音愛は思った。


 浮かれていて、いいのか……そう思う時もある。

 でも、それでも今のこの時間を大切にしたい。


 あの残酷な紅夜会が、椿の幸せな時間を潰そうとしてくるだろう予想はできる。

 穏やかな時間であっても、その外では麗音愛も常に気を張り詰めて呪怨の結界で椿を守っているのだ。


 そして土曜日クリスマスイブ、1人での任務を終え夕方に家に戻る。


「ただいま~!!」


「おお。玲央君、おかえり」


「じいちゃん1人?」


「あぁ、2人とも仕事だ。

 今日は剣一も帰ってこないと」


「まぁそうだよね」


 家には剣五郎がいるだけだったのでホッとした。

 両親は梨里との交際をとりあえず、信じているようだが

 何を言われるかわからないので今日は顔を合わせたくない。


 梨里は冬休みには実家に帰るので、落ち着いたら食事でもと言われている。


 とにかく今日は、初めてのデートなのだ!

 焦る自分の勇み足のせいで週末に任務を沢山入れてしまいデートをまだしていなかった。


 普通だったら振られていたかもしれない、椿の優しさに感謝する。


 この日のために服も買い、初めて髪のセットやら着こなしの本も買って勉強した。

 剣五郎にも変に思われないように隠れながら支度をし、時計を見て家を出る。


「いってきます! じいちゃん夕飯大丈夫?」


「あぁ、小料理屋に行くつもりだよ。玲央君は彼女とデートだろう。椿ちゃんはどうしてる?

 1人なら、じいちゃんと一緒に……」


「つ、椿だって、友達と過ごすよ大丈夫!」


「そうか……気をつけて楽しんできなさい」


「うん、行ってくる!」


 若干寂しそうな顔をした剣五郎に手を振られ少し胸が痛む。

 椿を気に入っている剣五郎なら、自分達の交際を応援してくれないだろうか。

 そんな事を考えた。


「また降ってきたか」


 今日は2人で出て行くわけにはいかないので駅で待ち合わせだ。

 胸が高鳴る。

 雪の中、駅に近付くにつれてクリスマスソングがケーキ屋から流れてくる。

 幸せそうに歩く人達。


 今までのなんとも言えない、寂しいような気持ちはない。


 寒いのに、あったかい。


 もうすぐ会える嬉しさ。

 誰かに会える事がこんなにも嬉しいだなんて。


 もう着いているというメールが来て、また急ぐ。


「あれ」


 遠目からも椿を探すが、いつものベージュのコートが見当たらない。

 電話をかけようとしたが……。


「麗音愛」


 後ろから声がした。


「椿」


 振り向くと真っ白なコートが目に飛び込んできた。

 真っ白なコートに、自分のお下がりのマフラーをリボン結びで巻いている椿。


挿絵(By みてみん)


「コート、お出かけ用もあるといいよって言われて……買ったの

 白が似合うって言われたんだけど派手かな……やっぱり……」


「……」


 微笑む椿は、髪をカールしてお化粧をしているようでキラキラしている。

 真っ白なコートはとても似合っていて

 下はスカートを履いて、可愛いブーツに、ショルダーバッグ。

 全部初めて見る装い。

 照れて上目遣いの瞳が煌めいた。


 控えめに言って、天使である。


「……麗音愛……?」


 こんなに可愛い子と恋人だなんて

 こんなに可愛い子と2人きりでデートだなんて、と急に意識してしまうと感動で言葉に詰まってしまった。


 椿もジーーッと麗音愛を見ている。


「……麗音愛……かっこいい……」


「えっ」


 それきり下を向く椿。

 2人で立ち尽くし、またお互いを見る。


「つ、椿も最高に可愛い!!」


「えっ」


 最高にバカップルだ。

 でも、きっと最高のイブデートになる、いやする。

 お互い下を向いたまま。

 照れくさくて、どうしたらいいか……と思いハッとなる。


 自分がエスコートしなければ!


「き、今日はよろしくお願いします」


「こ、こちらこそよろしくお願いします」


 行こうか、と歩き出す。


 今まで、何回一緒に出かけただろう。

 でもそれは親友として……。


 今日は恋人として、初めてのデート。

 手は繋げないけれど一緒に電車に乗った。


 少し混んでいて、立ったまま揺られる。

 椿は相変わらず沢山の人に見られているが、このイブの夜に一緒にいるのだから

 自分がこの女の子の恋人だって誰が見てもわかるだろう。


 人混みで2人少し寄り添って

 近くで見ると、もふもふした白いイヤリングもして

 唇は艶めいている。

 よく見たら爪もピカピカしていた。

 なんだか、とにかく可愛い。

 きっと今日のために、こんなに可愛くしてくれたという事がまた嬉しくなる。


「麗音愛……私……変?」


「え?」


「いっぱい見てくるから……今日、女の子っぽくしちゃったから……」


 いつも椿はカジュアルで、スカートを履くのも制服くらいだ。

 今日のコートもバッグも、ガーリッシュで可愛いらしい雰囲気。


「変……?」


「……可愛い」


「え」


「ごめん……可愛いから……可愛いなって見てしまう」

 

 慣れない格好をして、椿も落ち着かないんだろう。


「あ、う、嬉しい……麗音愛も買ったの? お洋服も……髪も」


「うん、実は俺も色々買った……初めてだよ」


 麗音愛も今日のためにコートまで買っていたのだ。


「最初、麗音愛だってわからなかったもん。かっこいい」


 じわじわ広がる幸せな気持ち。


「……嬉しいけど、照れるね」


「うん、本当だね。私も……」


 椿は罰姫として罵られ、麗音愛は呪いで人に構われず生きてきた。

 そんな2人がお互いに心のまま褒め合う事で、褒められる事で少しずつ自分自身を認められるような気持ちも芽生えてきた。


「今日はどこ行くの?」


「椿も行ったことある場所」


「え?」


 一緒に行った事ある場所はそこまで多くはない。


「もしかして!」


「うん」

 

 椿の笑顔に、麗音愛も笑った。

 麗音愛は今日のデートに以前2人で行った古い遊園地を選んだのだった。



いつもありがとうございます!


昨日、カラレスとは関係ありませんが

短編伝奇小説を投稿しました!

おかげさまでランキングにも入ることができました。

お読み頂けると嬉しいです!


今回の挿絵は可愛く描けたかなと思っております(//∇//)

挿絵の感想も頂けると最高に喜びます。


ブクマ、評価、感想、レビューが

励みになっております。

是非よろしくお願いします!


季節は初夏ですが

2人のクリスマス盛り上げていきます☆


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― 新着の感想 ―
[一言] 先ずは……挿絵の椿がめちゃくちゃ可愛い!!! 雰囲気がちゃんと出てますな! クリスマスの雰囲気も、麗音愛と会える喜びも、おしゃれした照れ臭さも、全部ちゃんと見えます。 そしていつまで経って…
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