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罰姫~驚愕の事実!~

 


 麗音愛の絶望の絶叫が響く。


 だが、倒れたのは闘真だった。


「は?……なんだと……?」


 血を吐きながら、ドサリと崩れ落ちる闘真。


「よ、美子……??」


 美子はスラリと立ち上がっていた。


 不思議な形の棒を持っている。

 杖の先に丸い鏡が付いているが、その先には槍のような刃がついている。


 それを、闘真に振りかざしたようだ。


 もう、泣いているような顔はしていない。極めて冷静に

 鏡の槍をくるりと回し、槍についた血を振り落とし制服から出した紙でソッと吹く。


 美子はすぅっと深呼吸をすると


「玲央!!」


 ビタッと足を止めて呆然とする麗音愛に大声で正気に戻す。


「こちらへ!! 早く!!」


 戦場の雰囲気が一気に変わり、全ての者が美子に注目した。


 コーディネーターが、初めて焦りの顔をした。


「あの女……」


 美子は紙をばら撒き、パァン! と両手を合わせる。


「結界を張ります! 私の傍にいて!!!」


「よ、美子!? 一体……」


「時間を稼いでくれてありがとう」


「はっ!?」


「今、こちらの世界にあちらから干渉をきっとしているはず!!」


 何が起きているのか全く理解できない。


「ぼぉっとしないで! 理解してよ!」


「何が!? できないよ!」


「本当の世界の方からこの世界を壊そうとしているはずなのよ!

 あなたのおじいさま達が!」


「え」


「でもさすがにこの世界を破壊するまでの力は私達にはない……だから

 紅夜の力が強まる前の一瞬、少しだけ弱まるこの時に私からも力を送って

 私達が逃げられるだけの穴を開ける!!」


 美子が書いていたと思っていた手紙は護符だった。


 ばらまかれた護符は青白い炎を出して燃えていく。


 肉塊の化け物達が突っ込んでくるが、蒸発するかのように燃えて消えていく。


 ザーーーーーーーーーーーーーン!と音が出るかのように鏡が細く振動し光輝く。


「美子……、一体どういうことなんだよ」


「私は白夜団(びゃくやだん)、団員の1人」


「びゃくや……だん?」


「そう、百八の武器が……と話していたわね。それを統括する組織があるのよ

 私はこの、槍鏡翠湖(そうきょうすいこ)の継承者……」


「なぜ……隠してた……」


罰姫(ばっき)がいる前でそんな事話せないでしょう、私達を殺そうとした今回の元凶なのよ」


「ばっき……?」


「紅夜の子ども、厄災の娘……白夜団が管理してきたのに……逃げ出すなんて!

 生まれてきた事が罪の、罰当たりの姫……罰姫寵、彼女はそう呼ばれている」


 冷たい汗が出るのを麗音愛は感じた。


「そんな名前で呼ぶな!」


「玲央、今、あなたは継承したばかりで正常な判断ができないのよ!」


「椿も連れて行く!」


「馬鹿な事を言わないで!! 今がチャンスなの! 穴を開けられるのは今この時だけだよ!

 隠れて結界の場所を造るのに苦労したんだから!

 逃げられればなんとかなるわ!

 向こうで白夜団ができる限りの対抗策をしてくれているはずだし!

 でも……あの子を連れて行けば紅夜にすべて殺されてしまうかもしれないのよ!?」


「だけど……!」


「罰姫はそういう運命なのよ!!」


 二重三重に美子の結界が広がって力が増幅していく。

 その力に、紅夜の手下も手を出せないらしい。


「……そんな」


「玲央!! いい加減にして!?私達、巻き込まれただけなんだよ!」


「椿は、美子を気遣って結界を張っていたし!」


「知らない! あの子がどうなっても私は元の世界に戻る!!!

 玲央もいいの!? あんな昨日会ったような化け物の娘に人生めちゃくちゃにされて!

 みんな、あなたが継承者にならないように守っていたんだよ!!

 それも全部水の泡! 何も知らなくて良かったのに!!!」


「なんだ……って……」


「黙って!詠唱をする」


 美子達の頭上から光の線が紅い空へ放たれた。


 遠い玉座から見ていた紅夜が鼻で笑う。


「へぇ……あの女も白夜の……

 落ち着けコーディネーター」


「こ、紅夜様、私共の完全な失態です」


「別にいい、部屋から虫が出て行ったところで構わない

 今回、俺が突然こんな行動したせいもあるしな、赤ん坊のお前らにしては良くやった……

 俺は身内には甘い……可愛いお前らに仕置はしない」


「紅夜様……」


「あの咲楽紫千の首は惜しいが

 寵は……?」


「はい、もちろんご無事でございます」


 ドーンと爆発音がした。


「寵か……? だな……寵は置いておけ」


「はい」


「まぁ、あれがどうするか最後まで余興だな」


 紅い空から蜘蛛の糸のように、上からも光の線が降りてくる。


「やった!! 帰れるよ!」


「美子、俺……」


「なに、もう行くから準備して!

 襲ってくるのがいたら玲央は下の敵をどうにかできる?」


「みんな俺を、守ってたってなに?」


「何も知らないんでしょ?」


「……うん」


「そういうことだよ

 玲央! ねぇ! 白夜団はずーっと何百年も続いてきたの、でもその中で

 なーんもしなくて楽しく過ごして死んでった継承者もたーくさんいるんだよ

 私もそうだと思ってた! だって、紅夜はもういなくなったって教わってきたんだよ

 こんな事が現実に起きるなんて……知らなくて良かった! こんなこと!」


「美子」


「だけど、あの子のせいでこんな事になった!巻き込まれたんだよ!

 あの子が来なかったら、こんな事にならなかった!!!

 礼央もそんな刀を背負う事なかったのに!

 助ける義理ない!!!!

 私達の事は、家族みんな待ってるよ!!

 みんな待ってるよ!?」


「そんな」


「でも、あの子はこっちの人間なんだよ。あっちに待ってる人はいないんだよ」


「……!」


 グサグサと胸をえぐる美子の言葉。

 もしかすると、刀の影響で自分が狂っていてそれが正常な判断なのかもしれない。


 だけど……。


「繋がった! ほら紅夜も何も思ってないみたい。罰姫がいればいいんだよ

 さぁ行こう」


「でも俺は椿を」


「椿なんていない!

 私を帰してくれるんでしょう!?」


「っ」


 魂の抜けたように、立ち尽くす麗音愛の腕を掴み

 また詠唱をする美子。


 ふわりと身体が浮いていく。


 だが、やはり攻撃をしようと向かってくる者達がいる。


 大抵は結界が弾くが、ヴィフォのような術者の技が2人が登る糸の結界に

 明らかに影響を及ぼしていることがわかった。


 ガイィィン!と結界が弾く音が聞こえ、

 まるで光のエレベーターの中で麗音愛はハッとなる。


「美子、俺はやっぱり椿を置いていけない!!!」


「玲央! ダメ! しっかりしてよ!!」


「どっちみち、攻撃されてる!

 このままじゃ壊される! 俺は降りる!」


「八つ裂きにされて殺されるよ!?」


「俺が結界を守るから! 美子だけでも帰れ!」


 そう言った時にドーンと爆発音が響いた。


「椿!」


 拘束を解いた椿が、全速力でこちらに走ってきた。




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― 新着の感想 ―
[一言] ま、まさかの白夜団の一員〜エェ━Σヾ(・ω・´;)ノ━!!!! いやしかし…れおんぬ〜!!椿ちゃんも連れていきたいよなぁ…でもどうするんだろう。いや…きっと椿ちゃんも連れてくだろうな(◍ ´…
[良い点] 美子ちゃん今までパニックになってるような演技してたのか! 演技派~~!しかも強い!驚いた!!
[一言] まさか美子、今までの演技だったのか!!! しゅ、しゅごい!!(語彙力死亡)
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