白高メンバーでクリスマスパーティー??
ムーンバックスでまた2人の世界を創ってしまった麗音愛と椿を他の4人が見つめる。
「みんな今日は2杯目のコーヒーは玲央に奢ってもらいましょう」
美子が微笑みながら静かに言った。
「えっ!?」
「賛成~!! 目の前でイチャつき過ぎだもんねぇ」
「俺はフラペチーノのトッピング増し増しデカイやつな! 1番高いやつだクソ!」
「なんでだよっ!」
そうは言いながらも、居座る時間も長くなっていたので
ワイワイ皆で二杯目を買いに行く。
「そういや琴音から、白高メンバーでクリスマスパーティーしませんか?
とか俺にメールきたぞ」
思い出したように龍之介が言う。
白高メンバーとは、白夜団高校生メンバーの略だろう。
「即、断れよ。ゴリラが」
「それでも加正寺さんは、もう副当主なわけだし……あまり無下にもできないんじゃない?」
「副当主とか、あたしらには関係なくな~い? どうでもいい!
どうせ玲央ぴ狙いでしょ?
どすんの正妻? お妾さん許しちゃう~?」
「むぐぅ!?」
2杯目のチョコフラペチーノを変に飲み込んでしまう椿。
「椿に変な事言わないでくれよ。彼女はもう俺の事なんてなんとも思ってないし」
椿は、琴音に『大嫌い』と言われた事は伝えていなかった。
麗音愛はわかっていないが、あの彼女が麗音愛を諦めたとはどうしても思えない。
麗音愛はできるだけ任務は一緒に入らないようにすると言ったが、嫉妬の気持ちを伝えられた事だけで椿は十分だと言った。
「そんな玉かなぁ? あの子かなり自我強いよぉ
いいのぉ姫は? 玲央ぴ~とられちゃうよ」
「だから! 俺には椿だけだって言ってる」
ガンガン言ってると、慣れるものだな、と麗音愛は思う。
「わ、私も負けないもん!!」
そんな麗音愛を見て、椿も拳を握る。
「椿」
「小猿」
「姫よく言ったぁ~パチパチ~」
「じゃあ、クリパオッケーな、返信っと」
ローストビーフのサンドイッチを口に放り込み、龍之介は琴音に返信を送る。
「この話の流れでは、やめようになるんじゃないのかゴリラ」
「まぁいいんじゃない? この際はっきり言えばいいっしょ~姫」
「玲央も優しくてすぐ付け込まれるしね」
「お前が言うか図書部長」
「何か言った? 美術部部長」
「別に」
佐伯ヶ原は抹茶オレを啜る。
「そしたらぁ、3000円以内でプレゼント交換ね~サンタコスもしよ!」
「あぁ? そんなプレゼント買う時間ないぞ」
「今日の解散後、買えばいいじゃない。モールにいるんだから」
「放課後、亜門のアトリエでやろうぜ!」
「ふざけんじゃねぇ!!」
「椿は大丈夫? 椿が嫌なら俺らは欠席でも……」
「大丈夫! 麗音愛の彼女は、わ、私だもん!
サンタさんの格好もしてみたい!」
「椿……そして椿のサンタコス?……佐伯ヶ原アトリエ頼む」
「はい、サラ」
ワイワイと皆と過ごした後クリスマスツリーが飾られたモールを歩く。
手は繋がないが、できるだけ傍を歩く。
「クリスマス、何が欲しい?」
「う~ん……一緒にいられたら、それで……」
「俺のワガママ聞いてよ。あげたいんだ」
「……うん」
じんわりと椿は微笑む。
「ネックレスとかどう?」
丁度、アクセサリー屋さんの前を通る。
そういえばこの店の前で、いつか第2ボタンの話をした。
「えへへ、これ」
「ん?」
マフラーの下からゴソゴソ出したのは、紐にぶらさがった第2ボタンだった。
「え……それ」
「宝物だもん、ネックレスにしちゃった」
「椿……」
「これって……第2ボタンって、好きな人に渡すものだったんだね
知らなかった……凄いもの欲しがっちゃったんだね」
いつでも思い出せる、屋上で花火をする椿の姿。
きっとあの時に、もう恋に落ちていた。
「嬉しかったよ」
「麗音愛は知ってたの……?」
「そりゃあね」
椿は少し驚いた顔をして、照れたのを隠すようにボタンをまた胸元に仕舞う。
「卒業式……出られるかな」
ふいに出る言葉が、辛い。
でも、そんな不安も伝えてほしいと思う。
「出られる。その時にまた渡すよ」
「嬉しいな……へへ」
「それがあるからネックレスはいらない?」
「うん!」
「……じゃあ、指輪にする?」
「えっ……」
アクセサリー屋の広告パネルが変わって
エンゲージリングの広告に変わる。
「ゆ、指輪……」
「まっ、まだ早いね! あはは
……でもいつか……」
「……う、うん……」
「いつか……渡したい」
「麗音愛……」
卒業なんかよりも、もっと先の事。
見えない、見えない闇。
でも、一瞬椿は考えてしまった。
エンゲージリングの後はマリッジリングの広告に変わって
美しい花嫁の姿が映し出される。
「わっ! えっえっと、ビレッジグレイブヤード行こう!
プレゼント交換のプレゼント買わなきゃ!!」
アクセサリー屋さんを通り過ぎてモールの1番奥にあるごちゃごちゃした雑貨屋。
そこに向かって、椿は駆けるように早足で向かう。
拒絶されたわけではない事はわかってる。
同じ気持ちだから、よくわかる。
淡い儚い願い、それを手に入れる難しさ。
麗音愛は追いかけるようにして、また椿の手を繋いだ。
「あの店なら、狭い通路だし誰もわかんない」
その未来を手に入れるために、しっかり手を繋いでいく。
もうそれだけは間違えない。
気持ちがしっかり伝わったように、椿も強く手を握ってくれた。
◇◇◇
「……それはどういう事ですか?」
白夜団の仮事務所。その会議室ではリモート会議が行われている。
そこで、直美は画面越しに言われた言葉に眉をひそめた。
『どうもこうもない、咲楽紫千直美君。君にはもう団長を辞めてもらう』
紅夜会に居場所を知られたくないという、七当主の面々は律儀に声を変え仮面を着け、直美にそう言った。
いつもありがとうございます!
第二部では白夜団の謎にもピックアップしていく予定です。
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