ドキドキ隠れカップルスポット
隠れカップルスポット、その言葉を聞いて一瞬お互いの顔を見た。
椿は恥ずかしそうに、下を向く。
「椿ちゃーん! 無理しないで学食でいいんじゃなーい??
いつでも男避け彼氏なら俺がなるよん!」
「カッツー、椿に近寄るなっ!
階段、行ってくるから覗きに来るなよ」
まだ疑ってるカッツーにそう麗音愛は言い放つと、椿の手を取る。
叫び声をあげるカッツーに『やっぱ本当なのかな?』と2人の交際を疑っていた声が聞こえた。
皆の前で、手を繋ぐのは麗音愛もかなり恥ずかしさが込み上げるが
不釣り合いだと言われ続けている事に苛立ちも感じる。
高校生の立場でも、白夜団での立場でも不釣り合い、不釣り合いそればかりだ。
「れ、麗音愛……」
椿も手をぎゅっと握り返してくれたが
皆に見られながら無言で階段まで歩く。
西校舎は屋上のある校舎側で、奥にある階段は利用する生徒が少ない。
そのため、お互い見えない間隔でそこで弁当を食べたり話をするカップルが多いのだ。
正直、こんな場所があると麗音愛も今日まで知らなかった。
「寒いかな……」
「私、ブランケット持ってきたよ」
椿を見ても、下を向いていて表情がわからない。
1階から2階へ行く階段には、本当にカップルがいて男子生徒の膝に女子生徒が座って話をしていた。
女子生徒は男子生徒の首に腕を回している。
「わ! あ、すっすみません」
こちらに気付いても、2人は慣れたように話をやめただけで麗音愛と椿は慌てて階段を駆け上がった。
ここまでいちゃつくカップルを見たのは初めてで、驚きと恥ずかしさがゴチャまぜになる。
「な、なんかこんなとこ連れてきちゃってごめん! やっぱ学食行こうか?」
「……でもみんなにお弁当見られるのも恥ずかしいし……ここでいい……」
そう言うと3階の階段で椿はブランケットを敷いて座る。
「あったかいお茶もあるんだよ」
「あ、ありがとう」
「麗音愛も、座って?」
「は、はい」
微笑まれただけで、心臓がまた跳ね上がって慌てて隣に座った。
相当ニヤけているかも、と思いながら2人でエヘヘと笑いあう。
「美味しくないかもしれないけど……」
「美味しいに決まってる!」
「……あ、開けるのやっぱり恥ずかしくなってきちゃった」
椿の膝には綺麗な重箱が乗っている。
華奢な膝小僧が見えて、麗音愛は学ランを脱いでかけてあげた。
「椿のお弁当、食べたいよ」
「下手でも笑わない……?」
「嬉しくて笑いたい」
「本当?」
「うん、本当。だからお願い食べさせてください」
「ふふ、じゃあお願いだから食べてください」
椿が開けた重箱は運動会のお弁当のように
唐揚げに、ウインナー、卵焼きに、プチトマトや、ほうれん草の胡麻和え、マカロニサラダがキラキラと輝いていた。
「すごい! 美味しそう!」
「私、簡単なものしかできなくて……」
「そんな事無い! 俺、こんな弁当初めてでめちゃくちゃ感動してる」
幼い頃から両親ともに多忙で手作り弁当なんてものは無縁だった。
いつも近所の小料理屋の仕出し弁当を行事には食べていた。
「卵焼きも、まだ下手なの」
「すごくうまそう! すごく上手だよ!」
「麗音愛が、だし巻き卵好きだから練習したんだ」
「そんな事まで考えてくれたの? めちゃくちゃ嬉しい」
「うん、当たり前だよ。唐揚げも好きだよね」
「うん!」
自分の好物を覚えていてくれたなんて感激すぎて涙が出そうになった。
「おにぎりもいっぱい作ってきたよ、梅とチーズおかかとツナマヨと」
可愛いアルミホイルに包まれた三角のおにぎりも受け取る。
全部、自分の好物ばかり。
「……こんなに、ありがとう。いただきます!!」
感動とともに、卵焼きを頬張った。
じんわりと、甘さとだしが良い塩梅で口いっぱいに広がる。
「すっごく美味しい!!」
麗音愛の笑顔を見て、椿も微笑む。
「良かった!!」
「最高に美味しい、今までで食べたなかで1番美味しい」
「へへ……褒めすぎだよぉ……梨里ちゃんの卵焼きとか剣一さんのサラダとかすっごく綺麗だし」
「椿のが1番に決まってるよ!」
いくら階段とはいえ、大声を出し過ぎた。
「嬉しい」
柔らかく微笑む椿は可愛かった。
「椿は食べないの?」
「なんか、緊張しちゃって……お腹いっぱいみたいな」
「一緒に食べようよ、こんなに美味しいのにもったいないよ」
「うん……へへ」
「俺は、沢山食べる椿が……いいと思う」
「もう! ……ありがとう」
『好きだよ』と言おうとしたけど、なんだか言えなかった。
感動と嬉しさでいっぱいなのに、椿が静かで緊張が伝わってくるようで変にドキドキする。
でも食べ物を食べる時のニコニコ笑顔を見ると、幸せをじんわり感じた。
いつもありがとうございます!
らぶらぶれおつば回
いかがでしょうか。
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