浮かれていられない
昼休み。
冬休みの前のテスト範囲のノートを見る麗音愛。
「玲央、今回も頑張ってんだなぁ……」
西野がパックジュースを飲み終わり話しかけてきた。
「ん、まぁ」
「石田を見ろよ……あの浮かれ具合
それに比べたらお前は浮かれなさすぎじゃないの? なんか最近暗いぞ」
石田は最近男友達ではなく、教室で彼女と昼食を食べるようになり
今はデレデレと2人で携帯電話を見て話している。
「そうかな……別に、普通だよ」
「なぁ! やっぱ嘘なんだろぉ!?
玲央と椿ちゃんが付き合ってるとか嘘だ!
不釣り合いにもほどがあるだろ!! だって! 玲央だよ!?」
「清々しいほど、失礼なやつだな……カッツー」
騒々しくなった、とノートを閉じる。
「麗音愛!!」
「椿」
寒くなり、セーラー服の上からカーディガンを羽織っている。
麗音愛のセーターと同じブランドでメンズ物を買ったので少し大きめでそれも可愛い。
「あのね、このチョコ美味しいから持ってきたの」
「ありがとう」
「お昼のパンのお金も」
「あぁ、いいよ。俺が勝手に渡したんだから」
今日はお互いにコンビニでパンを買った。
麗音愛もすぐお腹が減るので4つは自分のため。
椿は最近食べる量が多いと恥ずかしがって少なく買うので6個買って、2個渡したのだ。
「あの明日ね」
「うん」
「お、お昼ご飯……一緒に食べたいな」
「えっ」
交際を始めてからはなかったし、椿が頬を染めて
しかも皆の前で言ったので麗音愛の胸も高鳴る。
「……うん、一緒に食べようか。学食?」
努めて自然に返事をした。
「あ、ううん」
「じゃ、明日もパンにする?
椿買ってたの美味そうだったよね」
「美味しかった! でも、違うの……あの」
「ん?」
「とにかく! な、何も買わないで明日待ってて!」
「えっ」
「あ、もう時間! じゃあまたメールするね!」
お昼休みも終わるチャイムが鳴って、椿は慌てて走って出ていく。
「処刑するぞぉおおおおおおおお!!」
「本当可愛いよなぁ椿ちゃん…… あ~俺も打ちひしがれてきた
カッツー、合コンまじ頼む」
「相手がいねぇんだよ……椿ちゃんの友達もみんな……男できて……」
「だよなぁ、いいなぁ玲央」
「はは……」
幸せに包まれていた気持ちのなか、今夜の任務についてのメールが着てハッとなる。
「……浮かれてられない……」
椿の事が好きだと思えば思うほど、この前の自分が引き起こした失態がのしかかってくる。
任務もあれから、要望を出して増やしてもらった。
次にもしも紅夜会のナイトと戦闘する事があれば、拘束し何か情報を聞き出したいと考えている。
予定を見れば琴音と組まされている事が多かったが文句は言えない。
今日は単独任務で今週末は久しぶりに椿との任務だ。
絶対に守りたい――そう、思う。
◇◇◇
朝の待ち合わせに、龍之介と梨里が合流する。
椿はかばんの他に大きなトートバックも持っていて、麗音愛は龍之介に肩パンをされた。
「椿、荷物多いね大丈夫?」
「うん! き、気にしないで!」
「うん?」
隠すような仕草をするので、また女の子同士でお菓子パーティーでもするのかな? と思いあくびをした。
「玲央ぴ、眠そう~まぁた任務?」
「あぁ……単独で……結構遠くて……ま、寝不足はいつもだけど」
麗音愛は呪怨の影響で眠りが浅く常に寝不足状態だ。
帰宅が遅かったので、椿へのメールもできなかった。
「私も昨日、緊急で行ってきたんだ」
「え! 椿も!?
だから眠そうだったんだ」
「え!? あ、眠いのはちょっと……少し早起きしただけ」
「大丈夫だった? いくらなんでも単独だなんて……」
「全然平気! 市内だったしすぐ終わったよ」
「妖魔の数増えすぎだって~そろそろ民間人にも存在を知られるようになるかもねー
発表したりするのかな」
「……そうなる可能性は大きいけど、大パニックになるだろうから」
「まぁ、そんな問題はおっさん達にまかせておけばいいべ
ったく、色々ムカつくぜ! このクソ玲央がぁ!」
「お前はなんなんだよ、さっきから!」
「うるせー! くっそ!」
「ジェラってんだよ、気にすんなし~」
「……なんだよ?」
「釘差君! 朝ごはん食べたでしょ~!! さぁ急がないと遅刻しちゃうよ」
きゅっとコートの袖を握られ、椿は早足で歩いた。
龍之介が不機嫌でジェらっているという理由は
昼休みに、椿がもじもじしながら教室に来てわかった。
「あ、あの……お、お弁当作ったの」
随分と大きい、包みを見せてくれた。
トートバックの中身はこれだったのだ。
「……弁当……」
「うん……食べてくれるかな?」
「椿が……俺のために……食べるに決まってる!!」
つい大声を出してしまい、皆の注目が一層集まってしまった。
クラスメイト、特にカッツーは半分死んだ目をしている。
此処で食べればどうなるかわからない。
「どこか……場所」
「ど、どこにしようか学食かな?」
「おい、玲央。
西校舎の奥の階段、隠れカップルスポットだから行ってこいよ。
いいぜ、あそこ」
ダンパからのこの期間に、石田は随分リア充になったようだ。
「隠れ、カ……カップルスポット……」
椿はその言葉を聞いて、驚きながらまた頬を染めた。
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