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干渉と失敗~琴音との共闘~

 

 トラップ式の浄化結界が発光し研究室を包む!


「俺への罠か……!」


 麗音愛はすぐに琴音を抱き上げ部屋の外へ出る。


「……!! 妖魔が来る……!!」


 一気に肌が粟立ち妖魔の気配を感じた。

 そのままエスカレーターも駆け上がり、玄関から飛び出した。


「戦闘に入るぞ! 屋上に行く!」


 空を見上げれば妖魔の群れが牙を剥き出し一気に向かってくる。


「はぁい!」


 大病院の玄関前で戦闘はできない。

 そのまま麗音愛は飛び上がり、複数の妖魔を斬りつけながら屋上に着地した。

 

「行きますよぉー!!」


 麗音愛から離れた琴音は臆する事なく、妖魔の群れに突っ込んでいく。


 既に黄蝶露は具現化され、妖しい光を放った。

 ギラつくサーベル――。


 一瞬の心配なども振り払うように、琴音は妖魔を斬り落とす。


 麗音愛も晒首千ノ刀を振るう。

 闇の力、呪いの力、穢れた力。


 それと同じものを黄蝶露もまとっている。

 自分はそれ以上に恐ろしい不気味な刀を操っているのに

 黄蝶露を笑顔で斬り回る琴音に、麗音愛は少し寒くなった。


 そして何か、邪の力の武器同士だからだろうか

 共鳴というか干渉というか、自分にまとわりつく黄蝶露の気配を感じる。

 そして、自分の晒首千ノ刀も黄蝶露に干渉している――?

 

 何が起きているのか、よくわからない初めての感覚だ。


「玲央先輩と一緒だと、いつもよりもっと強くなれる気がしますっ!!」


 最後の一匹も琴音が斬り伏せた。

 確かに、この実力は龍之介も越えるかもしれない。

 あの秋の修行旅行で怯えながら黄蝶露を手にした少女とは思えない。


 華奢な姿はそのままで、まるで剣豪のように琴音は黄蝶露に残った妖魔の体液を振り払った。


「……やりましたね……」


「あぁ……俺達を殺すためというよりは、翻弄するためだけの妖魔の数だった。

 病院関係者にもバレない程度の数だ」


 また遊ばれただけか。


「……外で襲われたのでは、病院側に圧力はかけられないです……」


「くそ……」


 余計な事をして、せっかくの情報を逃してしまった。


「玲央先輩……先輩は何も気にする事はありませんよ」


 琴音はもちろん、あの戦闘の事は知らない。


「大丈夫ですよ、私も頑張りますから!

 じゃあ浄化班を頼みましょうね。私、浄化が苦手になっちゃって……玲央先輩が連れ出してくれて助かりました」


「……いや……」


 病院の屋上で、浄化班を待ち報告は琴音がノートパソコンで済ませた。

 新制服も清浄する為回収となる。 


 琴音は学園のセーラー服に着替えていた。


「学校には行ってないですけど、私立だし白夜の息がかかってる学校なんで授業として認めてもらってるんです。

 そろそろ学校にも行きたいですけど……でも平和のために仕方ないですよね」


 力強く、1人頷く琴音。

 その後は静かになり、お互いに会話もないまま麗音愛は挨拶をしてサロンバスを降りた。

 それを見送って、ふぅ……と琴音は息を吐く。


「あ~……やっぱりまだ好き……

 本能みたいなものが、玲央先輩を求めちゃってる……

 黄蝶露だって……喜んでるみたい」


 ふふっと次には微笑み、嬉しそうにバスの座席に倒れ込んだ。


 ◇◇◇


 もうすぐ帰るとメールをしていたので、椿がマンションのベランダから顔を出していた。

 つい、見張りもいなくなった事で人通りを確認してそのままベランダに飛んでしまう。


「麗音愛……!」


「しー……」


 またウサギ耳のパジャマを着ていた椿。

 驚きながら嬉しそうに笑った。


「おかえりなさい、お疲れ様でした」


 周りに聴こえないような小さな声でも胸に沁みる。

 ただ嬉しさだけではなく痛む。


「椿……」


「……麗音愛? どうしたの……」


「俺のせいで、重要な手がかりになるはずだった紅夜会の手がかりを……

 みすみす逃してしまった……ごめん……」


「そんな……私に謝る事なんて何もないよ」


「……情けない……」


「そんな事……」


 椿がギュッと麗音愛の手を握った。


「麗音愛は……巻き込まれた立場なのに

 巻き込んだのは私なのに、誰よりもいつも、みんなのために頑張ってくれて……」


「椿……」


「いつもありがとうって思ってる」


「……うん」


 短パンから素足が見えて、こんな時なのにドキリとしてしまい、また情けなさも込み上げる。


「なか……入る?」


「……いや、今日は汚れてるから帰るよ……寒いよね

 ありがとう。話ができて嬉しかった」


「私も」


 本当は抱き締めたかった。

 だけど自分の失態の情けなさと、

 闘っているのは世界平和のためでも、みんなのためでもない――ただの自分の1つの欲望のため。

 それを知られてしまいそうで、できなかった。



いつもありがとうございます。

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