表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

206/472

お久しぶりです、玲央先輩

 


「お久しぶりです、玲央先輩」


「……加正寺さん」


 任務の迎えの小型バスに、加正寺琴音が乗っていた。

 真ん中のテーブルを囲んでイスが向かい合わせになっている。


「これ、加正寺のサロンバスなんですよ」


 とりあえず、真向かいをさけて座ると琴音にペットボトルの珈琲を差し出された。

 室内はほどよい室温で、シャンデリアも煌めいている。


「あ……ありがとう」


 ダンスパーティーの日、琴音をはっきり拒絶した――。

 そう思うと気まずいのは当然だ。

 加正寺家の別荘でも姿は見せなかった。

 今まで何をしていたのか……。


「任務ですから、仕方ないですよね」


『構わないでくれ』と言った事への言葉なのだろう。


「……もちろん任務だからね。

 今日は加正寺さんも? 聞いてなかったけど」


「この混乱のなかですから、そこまで連絡する余裕もないんでしょう」


「今日は、調査で?」


「いえ、戦闘員です」


「えっ」


「私は加正寺家の副当主に任命されたんです。

 勉強が忙しかったので、学校もお休みだったんですよ

 その後の絡繰門当主の殺害……

 実質、当主のお仕事まで任される形で、学校もいつ行けるか」


 さっきまで、張り詰めたような顔をしていた琴音がにっこり微笑んだ。

 場違いに思える微笑みだが、麗音愛も微笑みを一応返す。


「……そうだったんだ」


 もう彼女がどんな道を進もうとも、麗音愛は何も言うことはないと決めていた。


「……別荘にも来ていた?」


「リモートで、出席しました」


「そう、何か決まった? 俺も聞けてなくて」


「立場的にあまり話せる事はないのですが……人事異動はあると思います」


「そう……」


「あと、椿先輩の護衛がいなくなったわけですが紅夜会は未成年なら許容するという話がありましたので……。

 新しくできる桃純家当主護衛部隊の責任者に、私がなりそうです」


「なんだって……」


 護衛とは名ばかりの、白夜団の監視だったのは身を持って知っている。


「……龍之介や鹿義がもう一緒に暮らしている

 わざわざ加正寺さんがどうして」


「それが、この前の戦闘力実践テストで一位だったので私が」


「え!?」


 バスの揺れでシャンデリアも輝き、琴音の瞳も煌めいた。


「龍之介を除外して……?」


「いいえ、もちろんお二人いましたよ

 玲央先輩と椿先輩だけです除外は」


 先程、龍之介の威勢があまりないと感じたが椿との一件かと思っていた。

 しかしどうやら、今までトップだった地位を琴音に奪われたせいのようだ。


「私、頑張ってるんですよ」


 明るく言われる。


「あ、うん。そうだね、まさかこの前に同化したばかりで……

 本当に……すごいよ」


「わぁ、嬉しいです」


 また明るく微笑まれる。

 その度に麗音愛の心は何やら不安に包まれる。


「でも、椿の守護は俺もしているし、この大変な状況で護衛部隊を新設するなんて……」


「仕方ないんですよ。当主が暗殺されたんです。

 いつ椿先輩が危険な目に合うかわからない……」


 結局は当主達の安心のために監視なのだろう。

 麗音愛を除外している事から明白だ。


「そう……だね

 でも、龍之介を越えるなんて……」


 龍之介と一緒に修行をした麗音愛には龍之介の強さももちろんわかっている。

 一瞬、加正寺家で何か工作を……と思ってしまった。


「今、裏工作した~と思いませんでした?」


「……いや」


「ふふ、信じられないですよね。

 でも玲央先輩も同化後すぐにあの紅夜と渡り合って生きて帰ってきたんですし

 黄蝶露と私も相性が抜群なんですよ、きっと。

 すごく馴染むし、すごく……心地が良いんです」


「……そうか」


 不気味としか思えなかったサーベルだったが、琴音は嬉しそうに笑う。

 笑った後でペットボトルのコーヒーを美味しそうに飲んで琴音は言った。


「恋人の椿先輩を、私が護衛するのは不安ですか?」


 ギクリとなる。

 あのダンスパーティーの後に、梨里から話があった。

 梨里からも、団長達には椿との交際を隠した方がいいと。

 梨里と交際している、と思わせておいた方がいいと言われた。

 椿は、一瞬哀しげな顔をしたがそれを望んだ。

 麗音愛は椿の気持ちを尊重した。


 なので、白夜団として今、麗音愛が交際しているのは梨里という認識なのだ。


 それでも、琴音は――。


「俺は椿を、恋人を1番に守りたいと思ってる――」


 はっきりと琴音の前で言い切った麗音愛。


「……先輩……」


 驚いたように、目を丸くした琴音だがすぐに表情は戻り、笑顔になる。

 口止めをする気もなかった。


「だから、魅了だとか言っていたけれど

 任務として、椿に危害がないようにしてほしい」


「当たり前ですよ! しっかり椿先輩を守ります!」


「ありがとう。俺もこれから、できる事を精一杯したいよ」


「はい! 頑張ります!」


 そして、ゆっくりとバスは停まった。

 大した距離は走っていないような気がした。


 見えにくいスモークの窓から外を見る。


「……ここは私立病院?」


 それは、あの紅夜会との関与が疑われ紗妃との戦闘にもなった私立病院だった。


「はい、ここの関与が濃厚になったので、今から突入して必要であれば殲滅します。

 私と玲央先輩の2人で」


 新制服に身を包んだ琴音は、また微笑む。


「玲央先輩、外で120秒待ちますので制服に着替えてください」




いつもありがとうございます

皆様の応援がいつも励みになっております!

ブクマ、評価☆、感想、レビュー

気に入って頂けましたら是非お願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 戦闘力1位怖すぎる/(^o^)\ 黄蝶露とやらの呪われヤバパワーと琴音のどす黒い心がお互い高め合ってるのでしょうか 護衛とか最悪の組み合わせ…w
[良い点] ひええええ琴音が護衛…!/(^o^)\ 絶対守らんやろ!絶対守らんやろ!!!
[良い点] この不穏な雰囲気が良い
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ