白夜団の子供達~わちゃわちゃ放課後~
「んでぇ、結局あたしらは~こき使われるだけなんですけどぉ」
チョコチップクッキーを食べながら文句を言う梨里。
「お前は母ちゃんと会議出なかったのかよ」
缶コーヒーを啜る龍之介。
「俺は幹部じゃないし……まぁ椿も年齢的な配慮とかで
出席させてもらえなかったのは俺はおかしいと思うけど」
マグカップでコーヒーを飲む麗音愛。
「私が原因で絡繰門さんが殺されたんだもの……」
同じくマグカップでココアを飲む椿。
「そうやって人の心の隙を狙ってくるのよ。気にしたらダメよ」
美子は、花柄のティーカップでコーヒーを飲み、梨里から順番に渡されたクッキーもつまんだ。
その後カンバスの横にあるミニテーブルにクッキーを置く。
「……っておい! ここは俺のアトリエなんだぞ!!」
と、美術部部長の佐伯ヶ原が学園内にある自分のアトリエで叫んだ。
美術室の隣の教室を改造して作られたアトリエは
カンバスや石膏像、資料本などが置かれ、テーブルにモデルが座るソファや椅子などがある。
そこで、放課後のお茶会が開かれていた。
「いいじゃん、ここが1番集まりやすいし~」
「てか亜門、俺にもドリップコーヒー出せよ!」
「ざけんな! サラのための特別ブレンドだ! おい藤堂も図書部はどうした」
「片付けも落ち着いたし、クリスマスの絵本展示も終わったしご心配なく」
「うるせーから、お前ら早く帰れよ」
「とか、言いながら玲央ぴのデッサンしてっし~」
「当たり前だろーが!」
あはは……と皆が笑い、二人掛けソファにいる麗音愛も椿と微笑みあった。
「妖魔が沢山出てくるようになったから、しか言わないでさ
戦闘だけあたしら子供にさせて~
絡繰門当主の殺害だって、隠蔽されてるとかないよね」
「親父達も知らねーから……いいのかこれで」
「相変わらず、白夜団はバラバラ……なのよね」
「腐ったダメ組織だからな。あ、サラのお母さんの事を言ってるんじゃないですよ」
「わかってる。俺も腐った幹部だと前から思ってるし」
「姫もいるんだからさ~いっそあたしらで新組織でも作っちゃうとか」
「えぇ!?」
「椿、鹿義の冗談だよ」
「うん……私は、本当はみんなに闘ってほしくない……
これからどんどん危険になっていくし……」
椿がギュッとマグカップを握る。
「そんな心配するなって。俺と梨里はずっと訓練してきて
ヤバイ時の逃げ方なんかも熟知してんだ。
亜門と美子は非戦闘員だし、こいつは不死身だし、なぁ」
いつもなら、俺ツエーという龍之介にしては控え目な反応だ。
「麗音愛だって不死身じゃないし、痛いんだよ……」
「俺は大丈夫だよ。
腐った幹部のいるなかで、こうやって俺達の間で情報交換や連携ができたら今はありがたい。
みんなこれからも頼むよ」
麗音愛の言葉に皆が頷く。
「あ、そろそろ時間だから行くね。
じゃあ鹿義と龍之介、椿を頼む」
「おっけー」「言われなくても」
「麗音愛、任務気をつけて」
カップを片付け、コートを羽織る麗音愛に椿が駆け寄った。
不安そうな椿の頭を撫でる。
「大丈夫だよ」
「うん、絶対ムリしないで……私も一緒が良かった」
「俺もだよ」
ハッと気が付くと、梨里と美子がニヤニヤと見ている。
「じゃ、じゃあ行ってきます」
「帰ったら、メールしてね」
「うん、みんなも帰りは気をつけて」
寒い廊下の風が吹いて、麗音愛は出て行った。
寂しそうにソファに座った椿の隣に梨里が座る。
「ねぇ~この学校、どこチュッチュする場所ある~? 教えてよ
隠れカップルスポット」
「ちゅ!? そ、そんなの知らないよ」
急な会話の変化に驚き戸惑う椿。
「じゃあ、普段どうしてんの?」
「なに、普段って!」
「だってうちにも来ないし……見張りもいなくなったし、2人でどっか行ってんの?」
「どこにも行けてない……コロッケも食べそこねちゃったし……」
「や~そういうんじゃなくって~~」
「やめろ! 小猿にはまだ早い!」
麗音愛のデッサンを終えた佐伯ヶ原は手を拭い、コーヒーを入れ直しながら怒鳴った。
「じゃあ、今度うちに誘いなよ
あたしに会いに来るってことにして姫の部屋でチュッチュすればいい~じゃん」
「な……!? ちゅっ……!」
「……椿、お前……どんだけピュアなんだよ……まさかまだ……」
「おい、ゴリラ! 俺の聖域で下品な話をするんじゃねぇ!」
「誰がゴリラじゃ、このチビが!」
「揉めるのは、やめなさいよ。
梨里も龍之介も、椿ちゃんに変な事言わないで。
2人には2人のスピードがあるでしょ」
「そうだ椿はこのまま、天然記念物でいいんだ。やっぱり最高だ……お前は……」
「ちゅう……キス……」
顔を赤らめた椿が次に不安そうな顔をしたので、皆が見る。
「椿ちゃん?」
「う、ううん! な、なんでもないよ!
そ、そういえば制服みんな着た?」
「あー、あたし胸サイズ合わなくて~~」
「また胸の話?」
「なによ、仕方ないじゃ~~ん! デカイんだから」
すぐに話は変わり、またワイワイと盛り上がりだす。
外はまた雪がちらつき始めていた。
校門を出て少し歩いた場所に、小型バスが停車している。
麗音愛はナンバープレートを確認すると乗り込んだ。
いつものバスとは違う。
「お久しぶりです、玲央先輩」
「……加正寺さん」
加正寺琴音が、麗音愛に微笑んだ。
いつもありがとうございます!
今回はセリフ多めで少し雰囲気を変えてみた回です。
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