夜のお茶会~灰バニ白バニ~
塾から帰宅後、リビングのソファでぼーっとしている麗音愛の後ろを兄の剣一が通り過ぎる。
「おい、玲央。椿ちゃんにダンパの時
俺が送ってやるって言っておいてくれ」
「ん? わかった」
「その方が安心だろー……ってなに? その顔」
つい、剣一をグヌヌと睨んでしまう麗音愛。
「なんだか全ての元凶な気もするんだよなダンパ……
ダンパなんかなかったら……」
「なになに玲央君、なかったら?」
「なかったら……」
なかったとしても、この想いは無くなりはしなかっただろう。
やはりいつかは直面していた事なのか。
「あー、別になんでもない……
兄さんは、告られる側だろ」
「まぁな」
「あ~、ムカつく」
「なんだよ、告白の仕方でも教わりたかったのか?」
ニヤニヤとする剣一。
「……どうやったら、女の子に……好きになってもらえるのかな……とかさ」
そんな事を言う麗音愛を、丸い目で見る剣一。
「……お前はどうして、そんな自信ないわけ?」
「そりゃ自信なんてあるわけないだろ。ずっと誰からも見向きもされない人生なんだぞ」
「俺の弟なんだから自信もてよ!
チート級モテ無双リア充の俺の弟なんだから!!」
笑いながら肩を叩かれ、普通に痛い。
「やっぱムカつくな! ん……メール」
麗音愛の携帯電話が鳴る。
梨里だ。
お菓子を焼いたので食べに来いという。
もう23時なのだが……『姫もいるよ~』という文面を見て『了解』と返信をしてしまった。
なんだかバタバタとしていて最近は朝に一緒に学校へ行く時間くらいしか話はできない。
それも途中から色々な男子生徒に話しかけられたり挨拶されたりで
2人きりの時間はかなり減ってしまった。
椿にはマフラーを押し付けるような形でそのままにしているが
男物のお古を使わせておくのも、と考えていた。
週末にモールでも誘いたい。
何も紅夜会への手がかりも掴めず、椿との時間も減り
琴音や美子との関係。
モヤモヤしたまま、だが
椿に会いたい、その気持ちだけはわかる。
同時に何もできていない情けなさも込み上げて、ため息が出た。
「あ、玲央ぴ~~いらっしゃ~い」
今まで椿が出迎えてくれた玄関に、梨里が出てくる。
何も飾っていなかった靴箱にはオシャレなオブジェが飾られていた。
梨里はグレーのモコモコのパジャマを着ている。
モコモコ短パンで褐色の太ももが丸見えだ。かぶってはいないがパーカー部分に耳がぶら下がっていて
ウサギということがわかる。
短パンでお尻を揺らして前を歩かれても、まぁ何も感想はでてこない。
「入って入って~~」
「うん」
リビングに入ると、革張りソファの上、
色違いの白いもこもこパジャマで髪が濡れたまま本を読む椿。
麗音愛を見て驚いた顔をする。
「れ、麗音愛!?」
「え」
慌てて読んでいた本をクッションの下に入れる椿。
その反応に麗音愛も驚く。
「だから~
すぐ髪乾かさないと痛むよって言ったじゃん?」
「麗音愛が来るなんて言わなかった!」
「……帰った方がいいかな……」
「え! 違うの!
わ、私こんなカッコしてたから……」
椿が慌てて立ち上がると、真っ白で綺麗な脚がさらけ出されドキリとした。
「かーいーしょ。あたしとイロチでプレゼントしたんだぁ」
椿はモコモコパジャマをプレゼントされる運命なんだろうか。
合うサイズはなかったのか、萌え袖になっていて恥ずかしそうな顔。
濡れた髪もいつもと違う雰囲気で……。
控え目に言って……めちゃくちゃ可愛い。
初めて梨里に感謝した。
「私ジャージに着替えてこようかな」
「なんでよー! ダメ!! ほら髪乾かしてきて!
玲央ぴは珈琲淹れて」
「「は、はい」」
押しの強い梨里に言われ、2人はバタバタと動いた。
「そういや龍之介は?」
あんなに可愛い格好の椿がいつもリビングにいる生活を
龍之介は送っているのかと嫉妬と不安が混ざり合う。
「出かけるって。遅いって言うし
姫はいっつも自分の部屋に閉じこもってるから今日は無理矢理
リビングで過ごしな~って言ったの」
「そうか……」
安心納得。
椿の珈琲にはたっぷりミルクと砂糖を入れる。
渡された砂糖はカロリーがゼロだという。
髪を乾かしてきた椿は、とても良い香りがした。
前までは麗音愛と同じシャンプーを特売で買ってきていたが
今は梨里に言われた物を一緒に使っているらしい。
椿は、どんどん可愛くなっていく。
いつもありがとうございます
深刻回からの、梨里を交えての深夜のお茶会。
恋する心は落ち着かない!
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