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命の炎を!黄蝶露の呪いVS桃純家当主椿

 


 病院へ着くと

 武十見がすぐに手術室へ3人を走りながら案内する


「椿ちゃんの力を、今回この事件で広く

 知らしめてしまったら……どうなるかそこをなんとかしないと」


「剣一さん、今はそんな事はどうでもいいです!」


「急げ!!」


 本来は医師、看護師しか入れない手術室。

 扉の前に

 医師と白夜団所属の術師数名が立っていた。


「容態は!?」


「危険です、

 最初は、剣による裂傷で重症ではありましたが縫合をすればと

 思っていたのです。

 しかし怪我部分に呪詛のようなものがかけられていて、治療が効かないのです」


「なんだって」


「出血も止まりませんし、このままではあと数10分……」


「入れさせてください!」


 女子高生を前にして、医師と術師達は驚く。


「早く!」


「武十見さん! この人達は……!?

 こんな女の子に何が!」


「私は桃純家当主、桃純椿です!

 私なら治せるかもしれません!」


「桃純家……っ!!」


「いいから彼女を入れさせろ!!

 伊予奈を殺す気か!?」


 剣一の怒声に、術師の1人が手術室のドアを開けた。

 医師も案内するように入り椿も続く。


「必ず助けます!!」


 剣一に叫んだ椿は、麗音愛を見る。

 一瞬の瞳で交わされる意志。

 麗音愛は頷く。

 そして、また手術室のドアは閉じられた。



 すぐに伊予奈の元へ向かった椿は

 手術室で血にまみれた伊予奈を見る。


「伊予奈さん……!」


 輸血されているが

 右肩から左胸にかけての裂傷からは血が流れ続けている。

 既に意識はない。


 その場にいた治療班も、椿を見て驚くが

 1人が事情を即座に話すと皆が出て行った。


 青白いを通り越して、もう生気の失ったような伊予奈の顔を見ると

 先日の修行旅行での笑顔が思い出され

 椿の瞳から涙が流れる。


 それをぐいと拭いて、キッと傷を睨む。


 手術室のベッドに横たわる伊予奈と椿の周りを

 紅の炎と、そして蒼い炎が一瞬で連なり囲んだ。


 そして、椿の手には緋那鳥。


 紫の炎の存在も、最近知ったばかり。

 治癒専門でもない。


 どれだけの事ができるのか、わからない。


 でも迷っている暇も、失敗も許されない。


 椿はスラリと……伊予奈に向けて緋那鳥の切っ先を向ける。

 治療班を1人でも残していれば

 介錯をするつもりなのかと叫ばれたかもしれない。


 しかし、向けている切っ先は

 伊予奈の身体へではない。


 黒く淀んだ……黄蝶露の呪い。

 傷にしがみつく死神の影。


 突き刺す事はしない。

 微動だにしなかった。


 だが、椿と黄蝶露の呪いは干渉を繰り返す。

 蒼い炎が

 真白になっていく。


 一瞬で妖魔を蒸発することもできる強い浄化の炎。

 それが揺らぐ。


 目を閉じたまま椿の額から、汗が流れた。


 黄蝶露(きちょうろ)は、生まれた時から呪われていたものではないように感じた。

 人に使われ、人を殺し続け

 その過程で呪刀になったのだろう。


 加正寺(かしょうじ)家で何があったのかは知らないが

 強さを誇示するための、代々の所有者の叫びが聞こえてくるようだ。


 それをかき消すように強い浄化の力を放つ。


 母の、桃純篝(とうじゅんかがり)の血のおかげで

 椿は聖流も使え、浄化も平気なのだ。


 それでも

 妖魔王紅夜の娘。

 限度はある。


 負担があると言えば、心配させるに違いない――。


 なので言わずにいた。


 でも、命を奪い続ける存在の娘として

 誰かを助けられるこの力を出し惜しみするつもりはなかった。


 緋那鳥を持つ右手が弾けたように、血が吹き出る。


 閉じた瞳からも血が流れる。


 ぽたり……落ちた。


 

「消えなさい――っ!!!」


 カァッ!! と椿の声と弾けた閃光と共に黄蝶露の影は消え去った。


 即座に、椿は祈るように手を握る。

 紫の炎が伊予奈を包む。


 伊予奈の命の炎を感じた。

 今にも消えそうな、か細い炎だった。


 これが消えてしまえば、二度と灯せない。

 自分の命を燃やすように、椿は祈った。


 ありたけの炎を燃やし尽くしたあと

 目を瞑ったままの椿に、声が届いた。


「椿ちゃん……」


「……伊予奈さん……」


 血まみれだが、いつもと同じように微笑む伊予奈が

 椿に手を伸ばしていた。


「伊予奈さん……!」


 涙が溢れ、血の涙の痕を流れる。

 椿は伊予奈を抱きしめ、全て察した伊予奈も椿を抱きしめた。



 椿がまだ手術室に入ったばかりの時

 剣一は手術室の前で待ちながら椿の件の情報操作にあたると

 武十見と話をしている。

 雪春も来るようだ。


 そして麗音愛は琴音がいる部屋に来るように呼ばれたのだった。




いつもありがとうございます


皆さまの評価☆ブクマ感想レビューで

頑張れています!  

これからも励みに頑張りたいと思います

いつも応援ありがとうございます(#^.^#)



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― 新着の感想 ―
[一言] 今回は静かな気迫が感じられる文章でした! 生死に関わる事態に赴く椿の心情も痛いほど伝わってきて、手術室に入る前の一瞬の麗音愛との視線の会話にも鳥肌が立つ思いでした。 そして、父である紅夜…
[良い点] 情景や背景が鮮明にイメージできる。 地の文はほんとにすごいです。 椿さんいいな〜本当に魅力です。 またいいところで終わりましたな( ˶´⚰︎`˵ ) [一言] 月9ドラマのように楽しみに…
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