遠離悦遠障奇界~麗音愛VS紗妃!?~
紅夜会の摩乃の名前を摩美に変更致しました。
麗音愛は私立病院の一件は気になっていたが
椿の傍を離れたくない、と思い
週末の予定も入れていない。
琴音との距離は、できれば離したい。
なんだか、彼女といると騒がしくなるのは麗音愛も気付いていた。
まるで、自分の呪いが軽くなっているような……。
しかし
この前まで素人だった彼女が
白夜団の両親が色々と手を尽くして調べてもできなかったこの呪いの
解呪をできるとも思えない。
元々が話題のお嬢様が傍にいるからと
考えるのが妥当だ。
無意識に琴音を考えている事に気付いた麗音愛は
ふぅ……と息を吐いて
目の前の教科書と教師の話に集中しようと背筋を伸ばす。
「……(なんだ)……」
違和を感じる。
あの病院で会った少女の霊の事を思い出した。
彼女はもう昇ったはずだ。
だが、何か感じた……。
行かなければと感じる程の、強い衝動だった。
「あの、すみません。少し体調が……」
教師に告げ、急いで保健室へ向かう。
保険医がベッドで横になるようにと言い、少し席を外したすきに
麗音愛は2階の窓から飛び立った。
今の麗音愛にしてみると
『見張らせてやっている』ようなもので
探知できないギリギリの呪怨を使えば
学校にいると思いこんでいる見張りの目を欺ける。
椿のクラスには、佐伯ヶ原もいるので
とりあえず安心だ。
いつの間にか信用できる相手になっていた。
そして曇り空のなか麗音愛は私立病院へ飛んだ。
前回の休診時とは違い
混み合う病院周り
送迎の車がタクシーが列になり
沢山の人がごった返す。
麗音愛はマスクをし、病院に入る。
「外来の方は診察券をこの機械に……」
案内の声を無視して、そのまま前回の少女の霊がいた方向に向かった。
今日は人が行き来している。
検査待ちでベンチに座る人
書類を持った事務員。
診察が終わり会計へ向かう人。
どれもが、病院内の日常だ。
「通りますよ」
「あ、すみません」
そこに佇んでいても、何もわからない。
地下へは、中央のエスカレーターに乗らなければいけない。
歩き出す麗音愛
ふと、エスカレーターで降りようとする
見覚えのある顔が見えた。
「――絡繰門雪春!!」
手にはアタッシュケースを持っていた。
動揺して一瞬、呪怨が揺らめく。
ヒュッ――!!
背後に殺意の斬撃を感じ、麗音愛は身を翻し飛ぶ。
「……玲央君!?」
エスカレーターから雪春の声が聞こえる。
振り返る間もなく、次の斬撃。
迷いを消し、晒首千ノ刀を構え刃を交えた。
殺気の主を見て麗音愛は凍りつく。
「天海……紗妃……!!」
「死んだと思ったか……?」
見間違えるはずもない!
椿を憎む、桃純家で虐待を受けていたもう1人の娘!
確かに麗音愛が、晒首千ノ刀で貫いたはずだった。
手にはやはり
禍々しい鎌、華織月。
紗妃はニヤリと笑みすら浮かべている。
キィン!! と病院内であり得ない
刃同士のぶつかる金属音が響いたその時――
麗音愛の身体に衝撃が走る。
「遠離悦遠障奇界!!」
「なんだっ!?」
ズレを感じた。
「異空結界か!!」
雪春の叫び声が聞こえた。
結界にも色々な種類があるが
干渉を防ぐ一般的な結界の他に
椿が麗音愛と初めて対峙した際に使用した異空結界がある。
異空結界は
同じ場所ながら異空間に移動させる結界術で
最高度の結界術だ。
術完了と共に、病院内は麗音愛、紗妃、雪春。
そして
「だから、あんたと一緒に行動なんて嫌だったのよ!!」
と叫んだ摩美。
縄使いの摩美が
仏具の独鈷(両端がとがった短い棒)に似た武器をもっている。
「うるさい!!
害虫見つけたら殺すんだよ!!」
「バカ!!」
「玲央君……!」
2人の言い合いの間に、雪春も麗音愛に声をかける。
「君はどうしてここに……!」
「あなたこそ……何故?
何故この病院にいるんです」
「……僕は……ただ診察を受けにきただけだよ」
「そのケースは、なんです!」
「これは……来るぞ!」
リノリウムの床を蹴って、紗妃が襲いかかる。
2人を裂くように鎌を振り下ろすと
即座に回転し
麗音愛に斬り込んでくる。
死んでいなくとも、大怪我をした身体とも思えない。
むしろ以前よりも
軽くなったようにすら思える。
しかし、麗音愛もあの辛い修行に耐えたのだ。
紗妃に劣る事などしない。
「玲央君ここは……呪怨が干渉しにくいかもしれない!」
雪春には、摩美が攻撃をしている。
調査部部長とはいえ、絡繰門の時期当主だ。
相当不利な状況にならなければ、助け舟はいらないだろう。
「残念だったな! 黒男!」
確かに、呪怨の力がいつもより落ちている。
きっとあれも
108の武器のひとつで聖なる力の効果なんだろう。
しかし、麗音愛も増幅する呪怨を抑える事ばかりしていたわけではない。
逆に
呪怨を一切まとわずに、紗妃へ斬り込んでいく。
「残念かどうか身をもって知れ。
椿を傷つける奴は、何度でも俺が――殺す!」
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