表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

172/472

ワイワイお見舞い

 

 少し恥ずかしい気持ちで

 椿は麗音愛の帰宅を待っていたが

 玄関がドタバタ騒がしい。


 麗音愛の声に、梨里、龍之介……佐伯ヶ原と思える声。

 そしてそのまま

 ノックがして、ドアが開けられた。


「小猿「姫「椿大丈夫か??」


「……静かにしろ」


 はぁ……とため息のついた麗音愛が最後に入ってきた。


「お、おかえりなさい」


 目が合って麗音愛と椿は微笑み合う。

 朝より大分調子も良さそうで、麗音愛も安堵する。


「く、釘差君、その顔……」


 まだ腫れている龍之介の顔を見て椿も驚いた。


「あたしが殴ってやったよ。姫をいじめんなってね。この発情男!」


「口を挟むな!

 ……椿、今回は俺が悪かった。謝る、ごめん」


「……ううん……私も……

 咄嗟に、怒鳴ったり……火傷しなかった? ごめんなさい」


「椿……!!」


「それ以上、子猿に近寄るな! この腐れ外道が!」


「さ、佐伯ヶ原君もわざわざ来てくれたの?」


「お前が熱出すとか、ありえないだろって思ってな

 ただの見物だ」


 そう言いながらも、途中で買ったらしい

 プリンやらゼリー、チョコレートの入ったコンビニ袋がローテーブルに置かれる。


「バカ龍も反省してるしさ、仲良く3人でまたやっていこうよ姫

 もうこいつと2人っきりにはさせない」


「梨里ちゃん……」


「悪かったって……

 椿が可愛すぎて俺もちょっと正気なくしたけど……気をつける

 俺、まじで惚れたから絶対もう傷つけたりしない」


「え……」


「キモい事言ってんなよ!

 さ、そこをどけ! サラが1番心配してんだ」


 真剣な龍之介の瞳に椿は、動揺してしまったが

 佐伯ヶ原の声でかき消され、麗音愛がベッドの椿の前に通された。


「よくなってきたみたいだね。安心した」


「ありがとう」


 2人の間を、ほのぼのした空気が流れる。

 渡された紙袋にはどっさりと学校のみんなからのお見舞いが色々と入っていた。


「おや、大勢だね」


「あ、雪春さん~おっつ~

 まだいたの~? なになに食材~?? 夕飯?」


「あぁ今日はあたたかい鍋にしようかと

 椿さんにはうどんか、おじやか……沢山買ってきたので

 皆で食べよう」


 その日の夕飯時に

 何が起きたかは雪春に隠しつつ

 佐伯ヶ原が提案し、3人暮らしでのルールを詳しく決めさせた。

 主に龍之介が椿に必要以上に近付かないような事だが

 龍之介はそれを承知した。




 雪春は椿の様子を見て、仕事があるからと先に

 帰っていった。 


 椿の部屋で食事をとった麗音愛も

 夕飯の片付けを手伝う。

 梨里も手慣れたように食洗機に食器を入れていく。


「玲央っぴも、たまに夕飯食べに来なよ」


「え?」


「剣兄と、じー様の分作ってもいいし~

 玲央に食べてもらえる方が、あたしやる気出る~」


「……わかった。ありがとう」


 梨里と龍之介。

 この2人の行動には毎回翻弄されてばかりだが

 極悪人というわけではないのだろうか。


 それにしても、先程の龍之介の告白に

 麗音愛はかなり動揺した。

 自分が封印している言葉を

 皆の前ででもはっきり言った龍之介。


 それに戸惑って困っている椿を見て安堵する自分が

 情けなく感じた。


「いて……」


 久しぶりに呪怨に噛まれ、一筋腕から血が流れていく__。



 夜の薬を飲んだ後にはもう

 椿はすっかり熱も下がり、顔色もよくなった。

 咳も鼻水もない。

 寝る準備を終えた椿のベッド脇に

 帰り支度をした麗音愛が立つ。


「良かったよ、今日もゆっくり休んで」


「本当にありがとう

 あのスウェット洗濯して返すね」


「あ……うん、わかった」


「いっぱいいっぱい、ありがとう……」


「いや……」


 椿が照れたように話すので、麗音愛もつい照れてしまった。


「……えっとじゃあ俺帰るわ」


「あ! 佐伯ヶ原君色々ありがとう!!」


「別に」


「俺からも、ありがとう。

 ルール提案してくれて、安心できた」


「サラ……!!

 いくらでもなんでもしますよ!!」


「態度が全然違う……!」


「当たり前だろ! 小猿が!」


 ぎゃあぎゃあといつもの2人の言い合い。

 また日常が戻ってきて、笑顔が戻った。

 




 椿は、次の日から元気に登校し

 心配していた大勢にまたワイワイと囲まれる。


 麗音愛はそんな椿の様子を遠目に眺めながら

 学食で1人ラーメンを啜る。


「先輩、珍しいですね~お一人ですか?」


 アイスコーヒーを持った琴音が、麗音愛の前に座った。


「今日はみんな用事があってね」


「うるさい人も?」


「カッツーね……委員会とか言ってたかな?」


「へ~

 あ~椿先輩、大人気ですね

 昨日の休み、みんな大騒ぎでしたもんね」


「そうだね」


 通りすがりの後輩や先輩にまで声をかけられている椿。

 川見にもお見舞いを頼まれた。


「……椿先輩って……

 魅了みたいな力があるかもしれないんですってね」


「え?」


「紅夜って、妖魔王で人と敵対するものなのに

 その姿を見た者は愛し讃え敬ってしまう……っていう言い伝えがあるって。

 夢中にさせちゃう魔法、みたいな」


 紅夜……

 確かにこの世のものとは思えないような、美しさ禍々しさだった。

 コーディネーターやナイト達はまさに紅夜に心酔している様子だ。

 それが

 紅夜の魅了の力で、椿にもそれがあると__琴音は言うのか。


「……それは、誰が」


「えっと、何かの調査部の資料で見ただけです。紅夜のね。

 みんなに愛される魔法って素敵ですよね」


「そう……かな」


 椿自身は迷惑に思っていると思うが

 それを望む人の方が多いだろう。

 また馴れ馴れしく椿の肩に触れる男が現れた。

 

 そんな魔力が本当にあるのだろうか。


「でも私には効かないんだと思うんですよね。

 だって私、椿先輩のこと……」


「え? ごめん、何か言った?」


「いいえ、先輩

 また病院行きます??」


 琴音はにっこり微笑んだ。



いつもありがとうございます!!


皆様の評価☆(下部☆です)ブクマ、感想、レビューが

いつも励みになっております。

気に入って頂けましたら是非お願いします!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 何だか琴音さん、心は紅夜会に近い気がしてるのですが……この子このまま闇落ちするんじゃなかろうか? それでも良い気がしてるけど…… その点椿は心配ないと思う。 どちらかといえば誰かに迷惑がか…
[良い点] 龍之介〜〜〜!! 麗音愛が口に出せない気持ちをアッサリと… しかも家のしがらみもない…だと… 素直に好意を言っちゃうとこは良いことだが 相手とタイミングが悪かった もう少し仲良くなってか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ