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龍之介の無理強い~拒絶の炎~



 ゲームは止められ

 真っ暗な中

 2人の瞳が照らされて光っている。


「俺の家は、罰姫のお前を

 是非嫁にって言ってる」


「……そんな事言われても……」


「高校の何も知らない男らと違うから安心だろ?

 俺は罰姫のお前も、知ってる」


「……そ、それでも」


「紅夜の娘でも、俺はお前を愛せるし

 結婚して子どもも産めるぞ?」


「結婚? 子どもって……

 そんな事考えた事もない!」


 龍之介は、それでも話をやめない。


「紅夜を討つったって

 何百年もできなかった事

 そうそうにできるわけないだろ」


「……それは……」


「で?

 玲央が大学行って女ができて、あいつが家庭持って

 幸せなとこを見て

 その横で1人で生きてくんか?」


「……麗音愛が……」


 そんな先の未来など、椿は考えた事もなかった。

 春すら見えない、闇。


「今だって、あいつを好きな

 梨里や琴音なんかが寄ってきてんだ。

 そろそろ落ちるだろう」


「麗音愛は、なんにもないって言ってたもの」


「そんな事信じてるのか?

 男だぞ?

 男なら誰でも落ちるレベルだってわかんだろ」


 椿の瞳が動揺で一瞬動いたが、キッと龍之介を見た。

 

「釘差君の言葉より、麗音愛を信じる

 男とかじゃない麗音愛は麗音愛だもの」


「そりゃ、今は親友ごっこで満足かもしれないけど」


「ごっこなんかじゃない……!!」


 叫んだ椿の声が、部屋に響く。


「じゃあ、玲央が誰かと付き合うのを

 親友として黙って見ていろよ

 そんで寂しくなったら俺が一緒にいてやる」


「寂しくなんてならないし

 釘差君に一緒にいてほしくなんかならない!」


「強がるなよ」


「……強がってなんかない!」


「このまま玲央と一緒にいても

 お前が傷つくだけだぞ

 どうせ嫌になる」


「嫌に……?」


 椿のコントローラーを持った手を龍之介が引っ張った。

 無理矢理抱き寄せようとしたが

 2人の間に炎が巻き上がる__!!


「私に触るなっ!!」


 反射で腕を引っ込めた龍之介を押しのけて

 椿は、そのまま走って部屋を出ていった。


 玄関のドアが閉まった音がすると、ただ沈黙が残る。


「……あ~……くっそ

 俺ともあろうものが、何狂わされてんだよ

 ……やべーな……」


 ひっくり返った缶から、どぷどぷと

 飲料が溢れ出て床に広がっていく。

 そこにピカピカとテレビの

 『クラックシッククラシックホーム』のタイトルが映った。


 


「はぁっ……はぁっ……」


 上着も羽織らず、携帯電話も持たず

 家を飛び出してしまった椿はそのまま走りながら

 涙を拭った。


 コンビニも通り過ぎたが、梨里の気配はない。


 戻ってくるつもりはなかったのか……。


 見張りの気配もない。

 椿も寮として、あの部屋で龍之介、梨里と一緒にいる時間は

 見張りからは解放される事になった。

 しかし飛び出した今、もう報告されて探されているかもしれない。


 桃純家の当主、なんて言っても

 結局、罰姫の頃と変わらない。


 そんなものも振り切るかのように

 椿は走り続けた。




 その頃、麗音愛達は任務地に着いたのだった。

 暗い林の中。

 

「じゃあ、俺の安全が証明されれば

 椿とまた組めるんだろ?」


「まぁ、それはね

 2人を引き離したいわけじゃないってよ。あくまで安全」


「……鹿義は、安全の保証もないのによく承知したね」


「修行見てっし~、好きな男信じなくてどうするって感じ?」


「……だから、いい加減に」


「好きなのは自由っしょ?」


「冗談だってわかる」


「試してみる?」


「なにを?」


「あたし」


 わざとに身体をくねらせ、セクシーポーズをとる梨里。


「だからそういう事を言うのをやめろ……

 さっさと終わらせて帰るよ」


「いつでも玲央なら、あたしはまじ歓迎~!

 さっさとは同意

 早く帰らないと……待ってるし……」




 今回の任務は大したものではなかった。

 麗音愛1人でも完了できるものだったし

 安全性といっても

 紅夜会が所有してしまった魔笛『哀響』がなければ

 麗音愛の呪怨が暴走しないかなど、わかりもしない。


「あたし、な~んにもしなかったね~」


 ぷらぷらと梨里が歩いて後ろから付いてくる。

 ワゴン車まで距離が少しあったので、すぐに椿に電話をするが

 やはり出ない。


 もう22時だ。


 梨里の携帯電話が鳴る。


「あ、バカ龍……?

 え?

 はぁ? ざけんなだし……うん、まじ?」


「……鹿義?」


 梨里が小さく『姫』と言ったのを麗音愛は聞き逃さなかった。


「え、ちょっとやめて」


 梨里の携帯電話を麗音愛は奪った。


「おい! 龍之介!

 椿がどうした!?」


『出てった。

 探してるけど見つからない

 そろそろ本部に捜索依頼を……』


「お前が何かしたのか……?」


『お前には関係ねぇよ』


「なんだって……」


『俺が見つける!』


「……いつ出ていった!」


「ちょっと揉めてる場合じゃなくない!?」


「鹿義は此処にいてくれ。

 まだ任務をしていると思わせてくれ」


「えぇ!? こんな寒いとこでぇ!?」


「頼む」


 麗音愛に真剣に見つめられ、梨里の心臓も珍しく疼く。


「ま、まぁわかった……でもせいぜい30分」


「45分耐えてくれ」


「えぇ??

 もう~!! まじ最悪!!

 言う事なんか聞いてよぉ!?」


「あぁ!」


 麗音愛は送迎人に見つからない最小限の力で呪怨をまとい浮かび上がると

 一気に街へ飛んで行った。


「……あ~何言うこと聞いてもらお……

 さっむ!! バカ龍!! なにあったのさ!?」


 梨里はダウンのポケットにからカイロを取り出し

 ネイルの指先で器用に開け身に付けた。


 冷たい風が吹き荒れる。




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[一言] 龍之介、お前では駄目だ…… 何かもう、怒りが沸々と……
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