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加正寺琴音と病院へ

 

 椿に告げたように

 土曜日の鍛錬が終わると、麗音愛は1人電車に乗った。


「玲央先輩」


「わざわざありがとう」


 琴音だった。


 今だに他の当主からの声で、麗音愛には見張りが付けられているが

 琴音と一緒の時には、それをやめるように琴音が加正寺当主に主張したのだった。

 当主は、琴音のボディガードが見張るという交換条件を出したのだが

 もちろん琴音は自分のボディガードに暇を出した。


「いえ、嬉しいです」


「勉強を見るだけだから」


「はい、私立病院の隣のムンバで私は教科書を開いていれば

 いいんですよね」


「絶対にそこにいて、俺の後をついてこないように

 何があるかわからないし…

 ごめん」


「いいえ~!!

 私が提案した事ですよ、先輩が後輩の勉強を見てくれるなんて

 普通にあることですよね」


 曖昧な関係、とは言っても

 自分の心が琴音にない事はわかっているはずだ。

 これは

 琴音を利用している事になるのだろうか。


 誠実でいたいと思っている。


 でも、紅夜会のもくろみを暴きたい。

 早く、椿の悲願

 紅夜を討つ、その手がかりが欲しい。


「そんな顔しなくても、玲央先輩の気持ちわかってます。

 私も白夜団ですから紅夜会を潰したいんですよ」


「……ありがとう」


「終わったら、少し勉強教えてくださいね」


「俺にわかる事なら」


「玲央先輩って……ダンパは?」


「俺は裏方、友達とね」


「……本当ですか?」


「本当だよ、生徒会の名簿にも名前書いてる」


「そうなんですか……」


 その後は電車の中で、琴音にダンパのドレスの色などを聞かれ

 わからないながらも一応は答える。

 今日だけで、こんな事は終わりにする。


 そう決めて、ムンバで別れ私立病院へ――。


 探る、と言っても

 とりあえずグルりと周囲を歩いたが、普通の大病院だ。

 土曜日で外来は休み。

 その代わり、お見舞いに訪れる人が絶えない。


 マスクをして、病院の中へ入る。


 そんな事をしても、やはり普通の病院だ。

 だが、何か感じる……。


 何度も死闘をしてきた宿敵だ。

 気配……のような

 違和感……。


 ただ、病院なだけあって

 色々な魂が漂っているのが麗音愛にはわかった。

 修行の成果で

 そこにいる()()を呪怨に引きずり込まないように

 統制する。


 ふと、外来へ向かう暗い廊下に

 1人の少女が立っていた。


 無念の顔で下半身から下がない。


 怨念だ。


 口からは血を流し、目は曇り、何も映さない。

 それでも麗音愛は目を逸らさなかった。


 呪怨は手招きをしようとするが、それを絶対に許さない。


 お見舞いに来る人の群れに逆らって

 立ちすくむ麗音愛だったが、誰も麗音愛にも気付かない。


 妖魔の被害は、実際に報告されているより多いのだ。

 彼女も妖魔の被害者だとすぐにわかった。


 少女の怨霊は、す……と千切れかけた指を下に向ける。


 その意志を麗音愛は受け取った。


 この病院の地下になにかある。

 無念の一心で、その姿のまま追いかけてきたのだ。


 麗音愛は休診で立ち入り禁止になっている、その少女のいる場所に行く。

 誰か後ろから

 止める声がしたが、聞かず早足で彼女の元へ行く。


 浄化の術は、麗音愛にとって禁忌ではある。

 それでも

 こんな場面をこれからも見ていくだろうと、修行旅行中に

 教わったのだ。

 

 伊予奈の力が込められた護符と、聖水。


「ありがとう、あなたの無念は必ず果たします

 だから、もう休んでください」


 どうしても怨念深く呪怨に引き込まれてしまう魂もある。

 その判断を自分がしているのはおこがましいのかもしれないが

 できる事なら、浄化して救いたいと思って

 麗音愛は

 浄化術を発動させた。


 力のあるものだけが見える美しい光。 


 手のひらが溶ける煙と一緒に少女の霊も、上っていく。

 ふっと微笑んだ気がした。


 彼女に対する安堵と、紅夜会への怒りが

 麗音愛の魂を揺さぶる。


「あの、今日は外来は休みですので」


「……すみません」


 地下に何かあるのだろうが

 下手に探って病院ごと爆破などとなっては困る。

 麗音愛は、そっと病院を出た。


 



いつもありがとうございます


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― 新着の感想 ―
[一言] この病院への潜入は、白夜団の仕事としてではなく、麗音愛の考えだけで行動したのか……。 大丈夫だろうか?力の使い方が前よりは上手くできるようになったからとはいえ、まだまだ修行が必要なはずなのに…
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