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秘密の甘い珈琲甘い時間

 

「いただきます」


 椿と龍之介、梨里の奇妙な3人生活。

 同居数日後、宅配弁当を食べた梨里が味に不満を言い

 夕飯は手料理を出すようになった。


「美味しい、梨里ちゃん」


「でっしょ? 明日はバカ龍な」


「あ~出来合い買ってくるわ、椿うまいとこ教えてくれや」


「う、うん」


 龍之介は、まだ苦手だが

 梨里はギャルっぽくさっぱりしていて椿には付き合いやすく感じた。

 そして

 手料理を出されては、麗音愛の家に行く事もできず。

 お風呂から上がった椿は

 話しかけてくる龍之介に勉強するから部屋に篭ると言って

 ベッドで携帯電話を眺めていた。


 今日は麗音愛は塾のはずだが、明日は土曜日で休日だ。

 今までは

 麗音愛の帰りに合わせて、外に出て話をしたりしていたが

 今はまるでお目付け役のように梨里達がいる。


 麗音愛が椿に怪我をさせて以来、2人での任務もまだ

 許可されていなかった。


「……麗音愛」


 もふもふ君を抱きしめる。

 リビングはすっかり梨里と龍之介の趣味で

 色々な高級家具が置かれ

 椿は自分の部屋に今までリビングに置いていたテレビやゲーム

 ソファを持ってきた。

 小さな絨毯も、そこに座って一緒に過ごした思い出が宿ってる。


 誕生日プレゼントの第2ボタンをぎゅうっと握りしめ

 ベッドからゴロンと降りて

 テレビとゲーム機の前に座る。


 1人でやってもつまらない。

 麗音愛への連絡もどう伝えたらいいのかわからない。


 コン……コンコン


「!」


 バッと、ベッドの近くの窓から離れ、緋那鳥を具現化する用意をする。


 でも、すぐに誰か分かった。

 素早く窓を開ける。


 ぶわっと冷たい風が部屋に舞い

 目の前に、学ランにコート姿の麗音愛が、しーっと唇に人差し指を当て

 椿にアイコンタクトをして、そっと部屋に入った。


「れ……れ、麗音愛……」


 小さな囁き声で、椿が言うと

 麗音愛はそっと窓を閉めた。


 まだ、しーっと指はそのまま。


 そのまま、ドーナツ屋さんの袋を渡される。

 麗音愛も小さく囁いた。


「ごめん、お見張りさんの気配が今薄れたから

 メールする前で……急にごめん」


「ううん……」


 胸の高鳴りを椿は感じる。


「本当に大丈夫?

 ごめんね急に」


 麗音愛も麗音愛で

 湯上がりのパジャマ姿の椿を見て、心臓が高鳴り

 まるで自分が変質者にも思えてきた。


「帰ろうか、俺、ごめんね」


「帰ったらや、やだ……っ」


 ぎゅっと掴んでしまったコートの裾。


「……うん」


「うん……来てくれて、嬉しい

 ドーナツも嬉しい……今日はこの部屋で……」


「うん」


 しばし無言で立ち尽くす2人だったが

 ハッと気付き、小さな絨毯に座った。

 コソコソ話で

 ゲームの電源を入れる。


「あ、コーヒー淹れてくる」


「いいよ。バレたら困る」


「大丈夫」


 椿は、すぐにインスタントコーヒーを

 自分のマグカップに淹れて持ってきた。


「1つしか持ってこれなかったけど……

 麗音愛飲んでね」


「ありがとう……ブラックにしたの?」


 椿は苦いコーヒーは飲めないのだ。


「うん、麗音愛好きでしょ」


「砂糖と牛乳入れてきたら?」


「でも」


「そしたら……一緒に飲めるし」


「……あ、う……うん

 ちょっと待ってて」


 また部屋から出る椿を見たあと

 麗音愛は自分の顔の熱さを自覚した。

 サラッと同じコップで一緒に飲もうと言ってしまったが

 間接キスになってしまう。

 急に夜に部屋に押し掛けて本当に大丈夫だったろうか。

 そんな不安もまた押し寄せる。


 でも、戻ってきた椿の笑顔を見ると

 不安も忘れて傍にいたくなる。

 2人で隣で

 嬉しそうにドーナツを頬張って……。


「コーヒー飲みなよ」


「うん」


 2人で甘いコーヒーを飲んだ。

 少し意識してお互いカップの反対を使う。


「麗音愛、甘いの大丈夫?」


「うん、美味しいよ」


「ドーナツもすっごく美味しい」


 コソコソの甘い甘い時間が過ぎていく。

 ゲーム中、2人で笑いを堪えるのも大変だった。


「明日の、鍛錬なんだけど……

 俺軽く済ませたらちょっと出掛けてくるね」


「そうなの……?

 うん……」


 それ以上は椿は聞かなかった。

 麗音愛のプライバシーだと思って、いつも深く聞かない。

 麗音愛もそれを知っていた。

 寂しそうな顔を見て心が少し痛むが

 明日、私立病院を調べに行くつもりだ。




いつもお読み頂き

ありがとうございます!


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いつも私の励みになっています。


気に入って頂けましたら

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― 新着の感想 ―
[良い点] 内緒のこそこそ逢瀬、燃えますね 悪いことばかりじゃないなあ
[一言] さすが麗音愛! 会えない寂しさは椿も麗音愛も同じだもんね。 こういうちょっとした気遣いとか、ちょっとした何でもない時間の積み重ねが二人の気持ちをなおも強くするんだと思う。 頑張って欲しい!…
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