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第五章開始!ダンスパーティー!?



 修行旅行を終えた、麗音愛。


 休みの後

 修学旅行から帰ってきたカッツーに

 お土産として自分とご当地アイドルが写った写真を渡された。


 気を遣って話をされないよりは、まあいいかと

 麗音愛は友人達の旅行話を聞き

 椿は、テーマパークのお土産のぬいぐるみのキーホルダーと

 うさぎ耳のカチューシャを貰って皆で写真を撮ったという。

 

 「それでね、今日の放課後にみんなが勉強会しようかって

 麗音愛先生! お願いします!」 


 うさぎ耳が可愛く揺れて、クラッとしてしまう。

 そして放課後に、久々に集まる椿フレンズと麗音愛一行。


「玲央君、頭いいもんね~!教えてもらえてラッキー!」


「俺も! 頭いいよ!」


「カッツー君~あはは」


「いや、本当だって! 隣に座りなよ!! ほらぁ!!」


 悲鳴があがり

 結局、最後はおしゃべり会になってしまったが

 楽しそうに笑う椿を見て、麗音愛も楽しく思う。


 明るい煌めく店内、温かいコーヒー、笑い声に、BGM。


 あの修行の時間が嘘のようだ。

 呪怨の統制力が強まって

 今まで殺していた心が少し動いても平気になってきた。

 それでもまだまだ

 秒も休む事なく、呪怨は麗音愛を襲い続ける。

 その止めどない黒い叫びの力。

 だけどその分、晒首千ノ刀は強い。


 強さがあれば、守る事ができる。


「ねぇ、麗音愛もそう思うよねっ!?」


 無邪気な椿の笑顔が、

 煌めく瞳が、自分に向けられるとドキリと胸を打つ。


「うん、そうだね」


 一緒に生きていくためなら、どんな力でも使ってみせる、今はそう思えた。


「ダンパの日決まったよねぇ!

 もうドレスどうしよう~~」


「ダンパ? ダンパって何?」


 椿が不思議そうな顔をする。


「あ……」


 麗音愛も、そういえばと思い出す。

 カッツー達も、怯え凍えるような顔をする。

 そうだ『伝説の生徒会長』なんて呼ばれていた

 兄の剣一の代から始まった忌まわしきダンスパーティー。


 椿フレンズは、嬉しそうにその話を始めた。



 帰宅後、椿は咲楽紫千家で夕飯を食べる。

 今日は剣一の当番で旬のカレイの煮付けだった。


「剣一さんが企画してからの名物なんですってね

 ダンスパーティー」


「いっひっひ~実現するのに大変だったんだぜ~

 今年もやるんだね、良かったな」


「全然良くないよ」


 麗音愛は、呆れるように言って味噌汁を啜る。


「なんでだよぉ! 海外ドラマみたいでいいじゃん

 プロムって卒業ダンスパーティーみたいでさ

 それを全学年参加にして~パーティー前に女の子誘って

 みんなドレス着るんだよ」


「みんなドレスの話で盛り上がってました」


「うんうん、ダンパの時は女の子はみんな輝くからな~

 カップルが誕生して、愛の生徒会長って呼ばれたもんだよ」


 剣一は思い出すように遠い目をしながら、頷く。

 麗音愛は

『爆発しやがれ! 余計なパーティーなんぞ作りやがってぇ!』とカッツーが発狂していた1年生のダンパを思い出す。


「一緒に行く人がいなかったら、どうするんですか?」


「椿ちゃんは、そんな心配ないでしょう

 むしろ断るの大変なんじゃない?」


「私は、ドレスもないし……行くかどうかも」


「じいちゃんが買ってあげるよ」


 椿の隣に座っていた剣五郎が、ニコニコと話す。


「で、でもドレスって高いだろうし……いらないです」


 椿の表情は苦笑いだ。

 確かに、女子がドレスで盛り上がり始めると

 椿は会話に入らずカッツー達と話をしていたのだ。


「椿ちゃん、学校行事なんだから必要経費だし!

 玲央はスーツどうすんだ?

 早めに用意しておけよ~」


「俺は別に去年のでいいし、

 ダンパとか興味ないんだよ」


 チラッと椿を見ると、目が合った。

 そう、去年までは興味もなかったし

 今年もそんな行事がある事をすっかり忘れていた。

 だけど今……。


「玲央君は、この前のデートの子を誘うのかい」


 祖父の言葉に、ぶっと吹き出しそうになる。


「さ、誘わないよ!」


「じいちゃん、そういう話はダンパ前にタブーだぞ!

 みんな、それぞれ心に秘めた人を誘うわけだから」


「おお! 悪かった!」


 もう一度、椿を見たがもう目は合わなかった。

 椿はこれから、沢山の男にダンパに誘われるだろう。


 この前、恋人はいないと言っていたし……

 親友として軽く誘ってみるのはどうだろう?と心をよぎる。

 でも、皆が真剣に誘うなかで気持ちを隠した誘い。

 それは不誠実だろうか。


 今は恋人がいない!

 と安堵したばかりなのに、ダンスパーティーまでにもしかしたら

 椿は誰かと交際してしまう……?

 でも椿の幸せを考えると、それは喜ぶべきなのでは……?

 でもそんな事を考えたらまた……。


 そんな事を考えていたら、夕飯の時間はよくわからないまま終わってしまった。

 椿がお茶を淹れてくれている。


「まったく、傍迷惑な生徒会長だよ……余計な行事……」


「あ~ん?

 あ、そういえば、正式に通達がくると思うけど

 お前のポジションが上がったから」


「どういう事?」


「嬉しくない出世、まぁ給料はあがるけど

 色んな場面で駆り出される事になるかな~班長になったり浄化の時の見張りとか

 調査部とかに協力したり……」


「調査部……」


 琴音の事を思い出す。

 まだ修行から数日だ、近く話しをする場面を作ろうと思っていた。


「まぁお前もは受験生だし……そこまで働かせはしないだろうけど

 椿ちゃんは保護対象だから、今までと同じね。

 椿ちゃんも受験に向けて塾とかいいの? いかなくて」


 麗音愛が言いたいと思っていた事を剣一はあっさり口にした。

 ほうじ茶を淹れてきてくれた椿は目を丸くする。


「私は大学なんて、考えていませんよ」


「えっそうなの?

 じゃあ、他にやりたい事があるの?」


「……やりたい事……

 紅夜を討つ事……です」


「……椿……」


 今日の勉強会でも、楽しそうな椿が少し話に入らなかった時があった。

 ダンスパーティーのドレスの話と進路の話。

 椿が、皆と同じ未来を進まない、進めないと思っているのが

 わかる。

 

 今の学校生活が始まる前までは

 あの燃えた屋敷で、母が死に酷い一家に軟禁され生きてきた椿。


 それからやっと開放されて、笑顔が見られるこの生活が

 いつか終わりを告げるなど、考えたくもなかった。

 でも椿は紅夜を討つ事だけを考えて

 それは自らの死も覚悟しているのだろう。

 

 そんな未来には絶対にしない。

 

 未来を考える余裕も浮かれる暇もない。 

 ダンパだとか……恋心など、考えてはいけない。


 紅夜を、討つまでは――。 



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― 新着の感想 ―
[一言] ダンスパーティーだと?!(((o(*゜▽゜*)o))) 麗音愛は椿を誘うに決まってるでしょうが! と言いたいんだけど、この二人すんなり行くかな…… お互いしかいないのは火を見るより明らかなん…
[一言] 新章突入、お疲れ様です(*´▽`*) これからさらにれおんぬさん達がどんな戦いに突入するのか楽しみにしております! でもそれよりなにより、 ダンパ!! 椿ちゃんもれおんぬさんも悩んでいるよ…
2021/01/02 10:47 退会済み
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