修旅~露天風呂いこ~ ◇
就寝前のミーティングは男女別で行われたが、何故か佐伯ヶ原は女子の方だ。
「だって佐伯ヶ原君は、こっちでの活動が多いから……」
「いっすけど……別に」
修行旅行も明日で終わり。
今日は予定通り
修理され綺麗になった露天風呂に入って1日が終わる。
「ここの温泉はすごく疲れに効くし
肌もツヤツヤになるわよ~じゃあ各自支度をして集合ね」
「姫~~おつかれ!!」
梨里が抱きつくと、揺れるおっぱいが椿の顔に当たる。
「露天風呂楽しみにしてた~!
洗ってあげる姫」
「え、い、いい!」
「遠慮すんなしぃ~
ヨッシィの自慢のバストも見せてもらお~じゃん」
「ほんっと下品ね!」
「ふふふ~先輩達ったら~」
と笑う琴音も余裕ありげだ。
椿は、また自分の胸元を確認すると、なんとも言えない顔をする。
「バカ龍が覗きとか言ってたけどね」
「えぇ~!? 信じられません~~
……でも、玲央先輩になら……見られてもいいな~」
「あはは、玲央っぴに見られたら
あたしの胸でノックダウンだよ」
「もう、やめなさいよ」
「幼馴染だから、玲央っぴのも知ってるの?
どう?」
「やめて!!」
キャッキャと盛り上がる?
女子達には入らず、椿はそっと、その場を去った。
丁度、男子のミーティングも終わったところだ。
「龍、くだらん事はやめとけよ」
「剣兄~こういうのやってみたいじゃん! アオハルぅ!
普通の場所でやったら捕まるけど、ここだったら
殴られるだけだろう」
「俺が言うのもなんだけど、相手を傷つけるから捕まるんだからな?」
「忍びのスリルっていうか」
「何言ってんだか
……ん?玲央どこ行く?」
「俺はもう、地下に戻るよ」
「風呂入らねーの?
覗きとかさせないし、ゆっくり風呂に入れよ」
「うん、まぁ地下で適当に済ますよ」
「今日は誰も降りないぞ?」
「うん、わかってる
椿に聞かれたら言っておいて」
「ふ~ん……まぁいいか。許可するよ
気をつけろよ」
椿と話がしたい、と思ったが
女子達でワイワイしているし
風呂の後といっても
女風呂の前で椿が出てくるのを待つ……なんてできるわけもない。
なんだか情けなさが
じわっと心に滲み出る。
なので、地下で寝る前に鍛錬して身も心も引き締める!!
そう決めた。
そうだ!!
あの小屋にある露天風呂
あそこに行ってみようか。
さすがに天然露天風呂に椿を誘う事はできないし
1人でのんびり、いいかもしれない。
少し1人になりたい気持ちもあったのだ。
正直騒がしいのは慣れてない。
早速、と思ったが
麗音愛は雪春に呼び止められた。
近況についてのデータが欲しいということで
なんだかんだ時間がとられてしまう。
「あ~……もうこんな時間か」
地下に入る頃にはもう、遅い時間になっていた。
鍛錬は壁階段の上から露天風呂までの呪怨での浮遊、という事にしようと麗音愛は飛び立った。
「うわ」
やはり、まだ邪流と聖流に煽られうまくは飛べない、が
最初に比べればここ数日で大幅な進化だ。
武十見にも、
『比べるべきは、過去の自分とだ!』
と言われていたので今はこれで認めるべきなんだろう。
小屋の方は確かに薄暗く夕暮れのようだ。
「お、すごい」
もくもくと風呂の湯気が上がっている。
地下に流れる川の水をうまく引いて
入れる温度の露天風呂にしたようだ。
巨大な岩がゴロゴロして、広く作ったのか
勝手に広くなったのか結構な広さだ。
いつも吹き出している黄色い蒸気
お湯と混ざり合って、なんとも温泉らしい匂い。
最近は忙しく、シャワーばかりだったし此処に来てからは水浴びの每日だ。
本能でお湯を見ると嬉しくなるものなのか
麗音愛は幼い少年のように小屋の脱衣所など気にせずに服を脱ぎ
適当に岩の上に服を置いて
入ろう! としたがまずは温度を確かめた。
管理もされてないのだろうし、熱湯だと困る。
いい温度だ!
とザブン! と入る。
「う、あ、うあああ……」
お湯が身体に染み入る……。
若いくせに……と思われそうだが
色々大変な思い続きだ。
お風呂は心までほぐしてくれる。
うああ、とか、はぁ
とか声が出て、顔をざぶっと洗ってしまう。
1人だし、誰も使っていない
使われない天然露天風呂だ。気兼ねない。
上を見上げても星はない。
ガスのような灰色の霧が天井に充満しているのが見えるだけ。
それでも、なんだか尊く思える。
しみじみと春からの出来事を考え
こんな場所にいるなんて信じられない、と改めて思ってしまう。
「椿は……露天風呂入ってるかな」
覗きがどうだの言ってはいたが
雪春も絶対にそんな事はさせないと言っていたし大丈夫だろう。
しかし薄暗い。
夜目は効くし、妖魔が出ても自分は平気だが
確かに、こんな場所に露天風呂があっても普通では入りたいと思わないだろう。
「あれ?」
大きな岩の影の方に、ぼんやりと灯が見える。
「なんだ?」
もしかしたら、水力発電とかで照明がついているのかもしれない。
だとしたら、あっちがメインの入る場所だったのかな。
そう思い麗音愛は泳ぎながら大きな岩に近寄っていった。
何か、声が……聞こえる……?
不安にかられながら、そぉっと
岩陰から覗いてみた。
炎が、揺らめいている……??
白い……ものが見える。
白い……影……。
「ひいろのははの……うでのなか……」
綺麗な歌声。
忘れない声。
白いのは、女の子の……肌。
炎に照らされる白い肌。
「いとしいひなどり……ねんねんころり……」
肌にタオルをかけ、岩に腰をかけていたのは
椿だった。
髪を結って、頬はピンク色で艶めいて
濡れたタオルが、肌にぴったりと吸い付き
2つの膨らみが……。
目を奪われて立ち尽くして、しまう。
が、触れた岩から小さな石が落ちて水音が鳴った。
ふと歌が止まり
2人の目が合った。
「つ、椿……っ」
かすれた声で名前を呼んでしまう。
「!?
ふぇ!?
麗音愛!?
き、きゃーーーー!!!」
「わ!
わわわ!!!」
「きゃーーー!!!」
「わーーーーーー!!!ごめん!!!」
「きゃーーーーー!!!」
大きな水音と、2人の声が洞窟内にこだまする。
いつもありがとうございます!
今回は挿絵も描いてみました!!
全年齢対応のため隠す部分を大きくしております~
Twitterの方でイラストも紹介しておりますので是非遊びに来てくださいね!!
評価☆、ブクマ、感想、レビュー
全てが創作のガソリンになります!!
気に入ってくださった方は是非お願い致します!!
また頑張ります!