修旅~兄弟稽古・麗音愛吠え上がる!!~
紙のはずの護符は、まるで金属のように硬化し
剣一が発動させた瞬間、矢のように麗音愛を襲う。
ただの1枚。
触れて落とすか!?
しかし出た答えを一瞬で変更し、呪怨の羽で飛び避ける。
――来る!
空中で、触れてはいけないものが更に襲いかかってくるのを鳥肌で理解した。
人間とは思えぬ跳躍力で飛び上がった剣一の追撃。
三撃、刀でやり合いそのまま地面に着地する。
「何度か一緒に戦ってたのに、手を抜いていたな」
「……それは、そうでもないぞ場所的な問題もあるしな
して、
俺は死にたくないから、そこまで無茶も全力もしないんだ」
「今は……?」
「今は……まぁ、この聖流の影響もあるし、お前に稽古してやれるなら全力でいくさ……兄貴だからな」
幼い頃に、遊んで泣いた麗音愛の手をとった時のような微笑みだ。
キラキラとまた聖流の流れが見えた。
聖流が剣一の力を増強させている……
しかし、邪流も同様に流れているはずだが……。
疑問をもつ隙きを与えない。
襲うように、結界が部分的に張られる。
自分を守るためではなく、攻撃の補助として使うやり方だ。
麗音愛も同じように呪怨の槍を、剣一の足元に出現させようとするが
聖流の流れに飲まれ弱まり、一瞬で浄化されてしまう。
今までの戦いで、呪怨にどれだけ頼ってきたかわかる。
しかし自分も、あの死闘を乗り越え、数々の任務をこなしてきた。
修羅場をくぐり抜けてきた!!
このままでは終われない!!
「うぉおおおおおおおおお!」
麗音愛の覇気が、爆破の衝撃のように響く。
剣一もあてられ、まとった聖流が乱れた。
そこに斬り込んでいく!
闇は光には勝てない。
しかし、そんな道理を捻じ曲げるのが――闇だ!
浄化されても、浄化されても、生まれ続ける闇の気迫。
「麗音愛……」
椿は冷えていく、麗音愛の身体を思い出す。
使えば使うほど、強くなる
そして死んでいくように冷えていく――。
自分を殺しながら得る力――。
「玲央先輩……」
琴音も、さすがに稽古とはいえ迫力に呆然としている。
美子は不安気に伊予奈に寄り添うと、伊予奈もぎゅっと腕を組むように支えた。
美子は今まで剣一に白夜団など辞めてほしいと願ってしまったこともあった。
それでもこの闘いを見れば、彼がこの世にもって産まれた運命がわかる。
龍之介は睨みつけたまま武十見や梨里は黙って見ていた。
続く攻防のなか剣一の剣技も、斬り合うことで理解できた。
剣舞のように美しく無駄がない。
一撃は寸止めされ切られず済んだ。
そんな余裕があるのだ。
斬り合っているだけで想像以上の疲弊が身体も心も襲う。
「先を見ろ!」
「!?」
「目の動き、呼吸、筋肉の動き! 相手が次にどう動くか一歩先をいけ!」
そう言いながらの剣一からの衝撃。
斬撃ではなく結界だ。
やはり手加減されている。
「この程度の浄化結界は、入りたてのひよっこでもできるぞ!」
「くっそ!!」
術は初歩的でも、使う相手の力でこれだけの驚異になる。
ブスブスと溶けた腕から再生の煙が上がる。
「大丈夫か」
「兄さんも――
手加減するな、稽古にならない!!」
「ん」
「紅夜会は、こんなに優しくはない!!」
「……そうだな……そうだな!!!
お前も全力でこい!!!」
呪怨を無数の針にする。
槍より細い、それは脆くは無くより強固だ。
目視しにくく、敵にとっては驚異になる。
「あいつ……あんなに」
針の数を見て驚く龍之介。
一気に剣一を襲うが、ばら撒かれた護符によって浄化され爆発が起きる。
爆風から、煌めく刃が見えた。
呪われし濁り刀で受ける。
麗音愛の太刀筋をうまく利用されているかのように切り込まれた。
腹部に受ける傷。
そうだ、この兄はあの紅夜もすぐに修復できない大穴を腹に開けたのだ。
大した事があるに決まっている。
今更の今更の実感。
しかし、剣一も肩から血を流していた。
「玲央!
俺が邪流も利用している事がわかるか?!」
「!」
「光も闇も、どちらも己の中にある。それが人間だ。
なんでも極端になりすぎると、歪む」
そんな話をしていながらも、斬り合いは激化する。
「お前はクソ真面目だ。真面目も極端だと、クソ真面目って言われっちまう
なんでもほどよく混ぜろ」
「なんだよっそれ!」
「抵抗するんじゃない、混ぜてうまく流す」
怪我をしても剣一の攻撃は衰えない。
瞬間に見えた――
麗音愛がまとった邪流を、反発力として使いスピードをあげている!!!
「――そうかっ!」
剣一から流れてくる聖流と、自分の邪流
ギリギリの間……!!
呪怨が吠え上がる!!
だが、呪怨の統制がうまくいかないっ!!
いや、掴む!!
この先にある……っ強さを――!!!
「来い! 玲央!」
爆発的に斬り込んだ闇の刃が首元をかばった剣一の腕にめり込んだ。
「……全てを輝きに――!!」
剣一も詠唱を終えた刻だった。
闇と光が混ざり合い、吹っ飛ぶ。
爆風舞うなか、椿は2人のもとへ駆け出していった。
いつもありがとうございます!!
バトルは書くのに時間がかかりますが、書き終わるとすごく
達成感があります。
いかがでしたでしょうか?
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