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修旅~それぞれの修行!~

 

 龍之介の放った針状の結界!

 それに対し麗音愛は呪怨を放出して防ごうとしたが……


「やめろバカども!」


 武十見の声で、一瞬で2人の結界と呪怨は消し飛んだ。


「おう、さすが」


 剣一が寝転んだままニヤリと笑う。


「勝手な私闘は厳禁だ!

 お前ら2人で10周!」


「「げっ」」


「麗音愛は悪くないのに……」


 椿が心配そうに麗音愛に駆け寄った。


「いいよ、相手をしようとした俺も同じだ」


「ちっ玲央、調子こいてんじゃねーよ」


「お前みたいなのに、普段から俺は飽き飽きしてるんだ」


 闘真の事かな? と椿は思う。

 そう言うと麗音愛は龍之介より早く走り出して

 龍之介(りゅうのすけ)もすぐに追いかける。


 同化をしていれば、確かに体力も肉体も通常の人間より強化されるが

 武器の干渉をコントロールしながらの戦闘では

 もちろん日々の訓練で鍛えていなければならない。


 麗音愛も同様で、呪怨の力だけで戦っているわけではない。

 椿との鍛錬の成果を今、同じ同化継承者とトレーニングをしていると感じる。


「あれ、どったの~?

 玲央っぴ、やば! バカ(たつ)と張り合えてんじゃん」


 騒動のキッカケになった梨里は、トイレから涼しい顔で戻ってきた。


「先輩……すごいかっこいい……」


「さ、結界練習よ」


 ボーッと麗音愛を見つめる琴音に美子が声をかける。


「椿は呪符を使った結界ではないから

 その特務部長に教えてもらってくれ」


「はい」


「え~……俺は教えられる事は特に……」


 ようやく立ち上がった剣一だが、ふらりとして椿がそっと支えた。


「お前が桃純(とうじゅん)家の資料を雪春に頼んで読んでいる事は知っている」


「えっ……剣一さんが」


「あ~もうどうして、そういう事バラすかなぁ全く……あ~恥ずかしい」


「剣一さん?」


「椿ちゃんのために、ちょっと炎の使い方調べちゃったのよ~ん」


 支えていた椿を剣一がおどけて抱きしめる。


「こら! セクハラ厳禁!!」


 呪符勉強組を集める前に、伊予奈が剣一に鉄槌をくだした。


「け、剣一さん、ありがとうございます

 私がしなきゃいけない事なのに……」


「いいんだよ、椿ちゃんは学校の勉強もあるし

 桃純家の術については血筋がやっぱ必要だから放置されてて古文書のままだったしね」


「ありがとうございます」


「と言っても、多分そんな役には立たないと思う

 でも始めてようか」


「はい!」



 ハードな筋トレの後にまたランニングをさせられ

 さすがにバテ気味の2人前に武十見が立つ。


「また私闘をしようとすれば、10周追加で増えていくから

 覚えておけよぉ!! じゃあ離れて向かいあえ!」


 茶色い土と石、岩の荒れ地に向かい合い立つ麗音愛と龍之介。


「玲央、お前は龍之介の針留結界(はりどめ)と同じ形状の細い呪怨を使い

 龍之介の針留結界を防ぐ事を第一の目標とする」


「えっ?」


「繊細なコントロールがかなり必要だぞ」


「できるかな? お前に」


 龍之介が鼻で笑う。


「龍之介! 此処は聖流と邪流の混じり合う場所だ。お前にも難しいだろう!

 コントロールが暴走すると危険だからまずはお互い1人で針にするまで特訓をする!

 集中しろ!!」


「向かい合う必要はあるんですか」


 龍之介が俺の台詞だと言いたげだが、その前に麗音愛が言った。


「できる限りの針留を作れ

 多い方が勝ちだ」


 男子2人の間に火花が散る。


「玲央はそこに座れ。そこは流れが安定している、まずは針にするのも難しいだろうからな」


 へっへっへっとバカにしたように龍之介は笑うが

 麗音愛は無視して、言われた場所に座る。


「龍之介、お前も瞬間的に創るのは出来ているだろうが留めておくのは難しいぞ!

 今日は1日お前達はこの特訓!だ」


「はぁ!? まじかよ」


 地味な作業に龍之介は文句を言うが麗音愛は黙り、自分のなかに精神を集中させた。


 今までの闘いでは呪怨の槍で追撃は何度もしてきたが、力任せに放出させていただけで

 押しつぶすようなものだった。


 晒首千ノ刀を振りながら

 単純に『往け』と意識を向ければ呪怨はそう動いていた。


 今でも十分に戦える。


 しかしあの魔笛『哀響』の影響や自分の最近の心の揺らぎの影響で

 もっと強い統制力は絶対に必要だと感じている。


 呪怨を掌の上に発動させる。


 黒い闇、不快な黒、呪怨。

 此処にどれだけの魂が蠢いているのかわからない。


『お前はこんな呪われた力を使うのか――』


 と問いかけてくるような

 ――しかし、そんなものは無視だ。


 精神を集中させろ

 心を殺せ、その先の――その先に。


 ぐぐぐっと集中し呪怨を細く、細くしていく。


 キィン! と尖った針状になったかと思えばそのまま

 呪怨は行き過ぎた麗音愛の精神命令により消滅してしまう。


「集中しろ

 細く研ぎ澄ませ……!」


 武十見の声は浄化作用でもあるかのように荒れ地に響き渡る。

 麗音愛はまた自分の精神に潜り沈み込んでいった。



「だから~これをこうして、こうすんの。んでこう」


 コテージ前に適当に置かれたボロボロのテーブルと椅子に座る『結界勉強組』。

 梨里の掌の呪符が結界を発動した。


「梨里さんの説明、全然! わかんないです!!」


「コットン理解力ヤバない?」


「何そのアダ名! 梨里さんが語彙力ヤバイんですよっ」


「はぁ? アタシ、チッタァのフォロワ~1万いるし

 いいね、もらいまくりだし~」


「えぇ!? 私白夜に入るからってやめさせられたのに!」


「残念過去の人~」


「きー!! ひっどい! 部長に文句言わないとー!!」


「うるせぇ女ども……」


 同じ工程を経て作られた結界を握りつぶすは佐伯ヶ原。

 美子は綺麗にノートをまとめている。


「ねぇ、亜門、あとで玲央っぴとの写真撮って?」


「えっ!! 私も欲しい!!」


「あぁ!? ざけんなよ」


「あなた達……復習の為に教え合いをしなさいと言っただけで

 雑談しろとは言ってないわよー!!

 いい加減にしなさいーーーー!!」


 伊予奈の怒声は椿と剣一にも聞こえてくる。


「今の怒声は……伊予奈さん……?」


「あはは、正体バレるの早すぎ。

 あの人、褒めるのが今の教育! とか言い出して教育改善してるけど

 元々超絶鬼教官だから……」


「えぇ!!」


「舐めてると怖い目見るぜぇ」


 あははっと剣一が笑い、驚く椿の耳に梨里の絶叫が聞こえてきた。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 梨里ちゃん可愛い〜!ギャルは良き…♡ そしてやはり剣一くん格好良いわ〜( *´艸`) 陰ながら支えてくれる兄貴最高!
[一言] いろんな状況の中でも冷静にいられるように、という事も含まれての修行だと思うけど、この中で集中できるのは流石だね、麗音愛。
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