修行旅行!~白夜団特殊鍛錬場所・白狐地獄谷~
真っ暗な洞穴。
その前に佇む白夜団一行。
「今から此処に入るぞ~!」
武十見の威勢のいい声で松明が揺れる。
入り口には
沢山の札やロウソクがあって不気味さは一際だ。
外も暗くなり
武十見の松明だけでは、後ろにいる佐伯ヶ原など暗闇のなかにいるのと同じ。
ホーっと鳴いたどこかの鳥に美子もビクッとなり、無意識に麗音愛の近くに寄った。
「あの、武十見さん、炎を出してもいいですか?」
「お! 椿の炎
是非見せてくれ」
「はい」
ブワッと椿の炎が発生し、辺りは一面明るくなる。
「さすが桃純家当主ですね。椿さん」
「椿ちゃん、ありがとう助かるわ」
少し安心した美子が椿に微笑み
皆に褒められ椿は照れ笑いした。
「よし!行くぞ! しんがりは剣一
玲央は俺のすぐ後ろ、真ん中は合波さん頼みます。
後は適当に着いてこい、下っていくからな。転ぶなよ」
麗音愛が武十見の後ろにつくと
ササッと琴音、梨里が続く。
「あんた落ちたら困るんだから後尾に行った方がいんじゃない?」
「情報調査部ですから!」
睨み合うまではいかずとも、お互いに相性は悪そうな2人だ。
「梨里の言う通りだな! 加正寺……琴音は後方だ!
合波さんか剣一の近くにいろ!
……美子は浄化結界の護符を用意しておけ
妖魔もいるからな。あと龍之介は前方に来い」
「あぁ~?全然適当じゃないじゃん」
ダルそうに龍之介は麗音愛の横に来る。
「ごめん、椿ちゃんは後ろの方にいてくれるかな」
「はい、剣一さん」
戦闘に向かない美子、琴音、佐伯ヶ原がいるため椿も後方へ回る。
一応は、美子も佐伯ヶ原も一般的な訓練は受けた身なので
それなりの耐性はある方だが一同が緊張感をもつ。
最初は大きな洞窟だったのが、少しずつ狭くなる。
足元はもちろんゴロゴロとした岩だ。
歩きにくさで佐伯ヶ原は転びそうになり、剣一に首根っこを掴まれた。
コウモリの羽ばたき、上から滴る水。
皆が無言で歩き続け、穴の先に少し灯りが見え始める。
「うわ……すごい」
武十見の後ろにいた麗音愛が声をあげた。
到着かと思いきや
そこからは下方に巨大な空間が広がっていたのだ。
「やっべ~」
「嘘でしょ……」
それぞれが独り言を呟く。
それは綺麗な世界などではなく
広がるのは地獄のような、土と石と岩。
もくもくと煙も上がり地獄のような場所だ。
何故か真っ暗ではなく、岩がオレンジ色に光って夕刻のような明るさはある。
崖にある階段を、一同は降りていくことになった。
その階段も崖を削って作ったような粗悪なもので、壁に一応あるロープも既にボロボロだ。
滑り落ちればこの何十メートルの高さ、怪我だけでは済まない。
「落ちたら死ぬぞ!」
言われなくともわかる、と若手全員が思う。
琴音は伊予奈の手をがっちりと握り、美子も剣一の腕にすがりついた。
東支部の2人は特に気にもせず、近所でも歩くように重い荷物を背負いながら
悪路の階段を鼻歌まじりに降りていく。
麗音愛はチラッと椿を見ると、佐伯ヶ原を支えている椿もこちらを見て目が合った。
椿は頷き微笑みを返してくれたので、麗音愛も頷く。
その時、一匹の妖魔が飛来してくるのが見えた。
すぐに晒首千ノ刀を構えようとしたが、武十見の静止が入る。
「! 玲央は待て! 龍之介!」
「おう!」
龍之介は四角の結界を一つ張ると瞬時に針のように形を変化させ
妖魔に突き刺し、崖の壁に突き刺した。
「椿、浄化を頼む」
「……! はい!」
遠い壁に突き刺さった妖魔でも、椿の炎ならば届き浄化された。
「雑魚妖魔はウヨウヨいる、気をつけろよ~
玲央、龍之介も見た目はクソなギャル男だが今の針留結界はかなりの精神集中が必要だ
見習って鍛錬するがいいぞ!」
「おっさん! クソは余計だっつーの!」
「わはは! 口の聞き方に気をつけろ! 此処は酸素も薄いぞ!
後で小屋の周りを15周だ!」
「あぁ!?」
「おい! 龍! いいから言う事聞いておけ!
後で後悔するぞ!」
後方から剣一の声がして、その真剣な声色で龍之介は言い返すのを我慢した。
龍之介も何度かは会っているので、武十見の人となりはもちろん知っているのだ。
だが訓練の教官になるのは初めてだ。
『鬼の夜十木』
そんなありがちな時代錯誤の鬼教官なんて、もう十分に強い自分が世話になる事などないと思っていた。
気に食わないが、面倒くさい事は御免だと龍之介は思っているので黙った。
今回の修行旅行は、龍之介には違う目的がある。
「椿、炎をありがとう! もう明るさも十分あるから大丈夫だ」
「はい!」
地面に近付いていくと、地面の土も発光しているようで
灯りは必要なくなり、武十見に素直に返事をして椿は炎を消す。
「椿はやっぱいいな……俺の血筋にぜってー入れたい。嫁にしてぇ」
気になる一言が耳に入り、龍之介を見ると
ふふんと挑発の目を向けられるが麗音愛は無視した。
一同はやっと地面に降り立つ。
長い緊張で、つい琴音や佐伯ヶ原は地面に尻を着いた。
『白夜団特殊鍛錬場所・白狐地獄谷』
地面に突き刺さったボロボロの木の板には
そう筆字で書かれていた。
椿がそっと、麗音愛の横に立つ。
「麗音愛、此処が……」
「うん。此処が、修行場所……」
聖流と邪流の混じり合う混沌の地獄。
近くの岩から、蒸気が強く吹き出て一同を歓迎した――。
いつもありがとうございます!
カラレスのハロウイン短編を先日アップ致しました。
ありがたい事に
現実恋愛の日間59位まで昇る事が出来ました!
皆様のおかげです!
ありがとうございます!!
もしお時間ありましたら是非遊びに来てくださいね
『バニーガール! ラブ☆ハロウィン~妖魔退治して家に帰ったらバニーガール姿の女の子が俺を待っていた! ColorlessNight外伝ハッピーハロウィーン!~』
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本編は緊張感がありますが
今回の短編はラブコメちっくでちょっぴり……お楽しみ頂けるかと思います☆
ブクマ、評価☆(下部の☆です)
感想、レビューありがとうございます!
大変励みになっております!
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