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第四章開始!すぐに崩れるもの

 



 深く……意識を沈めて


 自分の魂にまとわりつく


 自分を殺そうとする呪怨……


 継承した呪い刀の


 晒首千ノ刀の幾千の亡者の叫びを


 統制する


 それを上回るチカラで……


 自分の魂のチカラで……





「んぬ……麗音愛……」


 聞こえてくる、自分を呼ぶ声


「麗音愛?」


 ハッ! と顔を上げた。


 高校の教室。


 麗音愛と呼ぶのは1人だけ。


「椿、どうしたの?」


 ハーフツインテールの少し紅い髪ががぴょこっと揺れる。


「ごめんね寝てた?」


「いや、少し考え事。何かあった?」


「今日やっぱり一緒に帰ってもいい?

 カラオケやっぱり苦手で……」


「うん、もちろんだよ」


「ありがとう! じゃあ放課後に」


 椿の大きな瞳がふわりと笑顔になって

 カッツー及び、クラスの男子も笑顔になる。


 椿は麗音愛の微笑みを見て

 少し照れたように手を振って教室を出ていった。


 あの遊園地の後も

 特に何も変わらない。


 とりあえず、兄の剣一には

 殺気を放ち合コンへ行った事については抗議したが

 仲直りのきっかけを作ってくれたのもわかっていたので

 それだけに収めた。


 私用での呪怨使用については白夜団内でのお咎めはなしだった。


 が、団長である母の直美には酷く叱られ

 しばらく外出も控えさせられそうになったが、父の雄剣が間に入り

 代わりに剣一がしばらく外泊禁止になったのであった。


「また麗音愛と一緒に任務できるようになって良かった」


「うん、この前の単独は

 イレギュラーだったって、何故か父さんが謝ってきて

 兄さんの指示ではなかったみたいだし、わけわかんないね」


「うん」


 2人一緒の帰り道。


 琴音と出掛け任務を見せた翌週の月曜日。

 麗音愛は朝に琴音を訪ね、改めて侘びて

 それから琴音が会いに来ることはなくなった。


「麗音愛! コロッケ食べて帰ろうよ」


「うん、そうしようか」


 すれ違いがあった事など、すっかり無かったように

 2人の仲は何も変わらずだ。


 自分の気持ちに気付いても、何も変わらない。


 ――何も変わらない。




 週末に椿との任務が決まっている、ある日の夜。


「成人してて、外泊禁止とか意味わかんねーんだよなぁ」


「お前が玲央君に嘘ついて、呪怨使わせるからだろうに……

 椿ちゃんは今日は来ないのか……じいちゃん寂しい」


 兄と祖父との男3人の夕飯を食べ終えても

 リビングに留まっていた。

 遊び好きの兄が家族団欒を大切にしている理由に気付いてからは

 麗音愛もそうしている。


「じいちゃん」


 それでも口数は少ない麗音愛が剣五郎に話しかけたので

 剣五郎は優しく耳を傾ける。


「どうした」


「……俺、強くなりたくてさ」


「……お前はもう、十分強いぞ

 十分に。紅夜にだってきっと……」


「俺の心が、まだ」


 剣一も、ソファに座りビールを飲みながら

 もちろん聞いていた。


「どうかしたのか、玲央」


「最近、呪怨の統制がうまくいかない時がある」


「なんと、

 晒首千ノ刀の力が強まってきたのか、大丈夫か玲央!」


 剣五郎の慌てぶりに麗音愛は少し驚く。


「ち、違うんだ、じいちゃん。

 多分だけど晒首千ノ刀の方がどうってことじゃなくて……」


「ほぼ継承した者の記録のない刀……

 だが絡繰門氏に問い合わせ、過去の……」


「だから!そうじゃなくて

 俺が!」


「うん?

 れおんぬ……玲央君どういうことだ」


「だから……」


 椿への気持ちに気付いたら

 心が揺れて統制の力が下がった……なんて言えるはずもない。


「最近ほら、進路とかで悩んだり

 不安とかあるから……」


「加正寺さんに言い寄られたりなぁ!」


「殴るぞ……」


 ニヤニヤで声をかける剣一を睨むが

 剣一は笑ったまんまだ。


「つまり精神修行ってやつか」


「そう、そうだよ。そういうのがしたい。

 じいちゃん何か、心を鍛える修行はないのかな」


「なるほど、そういう事か

 玲央君は偉い……あんなに小さかったのに……」


「じいちゃん昔のことばっか思い出してるとボケるぞ

 じゃあさ秋の休みに精神修行ツアーでもするか」


 兄の白夜団での実績は知っている。

 正式に設立され記録が残るようになってからの歴代No.1実力者なのは

 間違いないが、全ての言葉が軽く感じる。


「ツアーって……

 俺は本気でさ」


「いい場所あるし、継承者で集まって

 みんなで精神修行! いいだろ」


「継承者って……」


 思い浮かべる東支部の、龍之介と梨里。

 もちろん麗音愛は苦手だ。


「最近、紅夜会も……妖魔も活発化している。

 おっさん連中も頑張ってくれてはいるけど

 じきに俺らが総出で闘わなきゃいけなくなるだろう

 そうなった時はお前が大将だぜ」


「やめてくれよ

 大将なんて考えてはいないけど、もちろん対紅夜会として

 俺は強くなりたい。それが1番だよ」


 そう、椿を想うのなら

 何よりもまず紅夜を討つ力を。

 守るだけじゃない、紅夜会を滅ぼさなければ

 あの笑顔の影に隠された心の闇は消せない。


「椿ちゃんのためにもな」


「あぁ」


「ふ~ん、そういうとこは相変わらずなんだな」


「何がだよ!」


 玄関のチャイムが鳴る。


「椿だ、さっき帰ったらこっち来るって言ってたんだ」


「おお~椿ちゃん。じいちゃん寝る前に挨拶するか……」


 友達と遊んだ帰りは、何かしらお土産を買ってくる椿。


「えへ、チーズタルト買ってきたの」


「ありがとう」


 はにかみ笑顔に、くすぐったくなる。


 またコーヒーを淹れようか、平和な1日だった、思ったその時

 麗音愛、椿、剣一の携帯電話が一斉に鳴った。


「緊急か!」


 平和はすぐに崩れるものだ――。




いつもありがとうございます!


本日、ありがたい事に

レビュー、感想、ブクマも頂きまして

(Twitterではファンアートまで)

クリスマスかな!?と思える程幸せな感激感動感涙の1日です。


皆様に読んで頂き、本当に幸せでございます!!


第4章が始まります

是非お付き合い頂ければと思います!

皆様ありがとうございます!



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― 新着の感想 ―
[一言] じりじりと進む関係にむずむずします。仲直りできてよかった。 自覚した勢いで進展するのかな?と思いきや涙の親友宣言が切ないです。 ハラハラ展開だったので一気に読んでしまいました!
[一言] 剣一は絶対に麗音愛のいろんなことに気づいている気がするのは気のせいかな…… いや、気づいてるな、この人……
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