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日常下落~闘真来る~

 

 同化剥がしは、成功に終わった。


 今回の槍鏡翠湖(そうきょうすいこ)

 珠ではなく、椿と同化している事が判明し

 前代未聞と

 椿の力の強さが改めて示されたのだが


 同化剥がしを望む声も上がってしまい

 今後の戦力を考え慎重に対処すると

 団長の母・直美と、父・雄剣は家に帰る時間もない程だ。



 椿は健康上も問題なく

 同化剥がしの次の日から学校へ行っている。

 美子は2,3日の入院後にとの事だった。


 しかし椿の心中は

 今月には転入してくるという琴音で不安がいっぱいだ。


 終わってしまうのだろうか?


 何が……?


 平和な麗音愛との学校生活が。


 そこは椿にもわかっていた。


「あの、ごめんなさい本当に

 誰ともお付き合いする気はないんです」


 また椿には憂鬱の告白の断り。


 最近は時間を取られるのも嫌なので

 その言葉を出されれば、即お断り。


 呼び出しも名前があれば手紙で返事をし

 無記名の呼び出しには行かない事にした。


「あー椿ちゃん

 可愛いよなぁ

 玲央~昼も一緒に食べようって言えよ~~~

 女の子の匂い嗅いで飯食いたい」


 カッツーが遠くで笑う椿を眺めながら

 学食のラーメンを啜る。


 隣で麗音愛はカツカレーだ。


「変態発言やめろよ

 椿にも椿の時間があるんだから」


 今日はお互い食堂で

 お昼ご飯を食べているが

 麗音愛の方から

 椿の元に行く事は用事が無ければ殆どない。


 椿が友達と遊ぶ時間を大事にしたいと思う。



 椿フレンズ達は今日もキャッキャと

 可愛く盛り上がっている。

 可愛い女子グループは椿も加わって一層注目の的だ。


「椿~

 今日放課後どっか行かない?」


「ごめん、今日は麗音愛と遊ぶの」


「ホント、つばちん、玲央君と仲良しだね」


「だって親友だもん」


「親友……ねぇ」


 詩織は何か言いたげな表情をしたが、何も言わずに

 ダイエット食品を食べる。


 椿は、カツカレーラーメン大盛りセット。


「椿、痩せてていいなぁ」


「あは、鍛えてるから」


「部活でもないのに」


「うん、趣味かな?」


「なにそれ~」


 白夜団としての闘いは、一に体力、二に体力だ。

 痩せてるとか、そんな事何も魅力に感じない、と椿は思う。


 普通の人間であることが一番羨ましい。


 うっと、カツカレーが喉につかえそうになり

 椿は慌ててそんな感情を水で流し込んだ。




 麗音愛も友達とワイワイ食べ終え

 パックのコーヒー牛乳を飲む。


 ふと遠目に目に入る、椿の笑顔にふと頬が緩んだ。


「玲央、今日の放課後は?

 椿ちゃんと?」


「あ、うん。あれ? 俺言ったっけ?」


「いや、なんとなく」


「なんでわかった?」


 西野と石田は顔を見合わせて笑った。




「麗音愛ーー!」


 放課後、麗音愛の教室に走ってくる椿。

 カッツーや他の男子達の憩いの時

 そして麗音愛に集まる嫉妬の時間にもなっている。


「椿、ごめん。

 少し待っててくれるかな

 此処の掃除が終わればすぐ行けるよ」


「うん!」


 麗音愛もその椿経由の注目は自覚していたが

 注目など生まれて初めてのこと。


 それが敵意だとは、なんとも哀しい。


 しかし、呪怨の怨念の叫びに比べたら

 男子高校生の嫉妬など

 綿あめのように感じてしまう。




 麗音愛を少し待って

 2人は校門を出た。


「カラオケすっごく楽しみだな~!!」


 椿がはしゃいで、笑った。 


「俺もそんな得意ではないけど

 大声出すと、いいストレス発散になるし」


「麗音愛、ストレス溜まってるの?」


「どうだろ? またテストもあるしね

 とりあえず叫んでおくか」


「うん!!」


 飛び跳ねるハーフツインのぴょこぴょこ椿と一緒に歩いていたが


 ふと、麗音愛が足を留め

 椿の手をとって自分に引き寄せた。



 椿もそこでドキリとはせず目前に迫る敵を睨みつける。



 そこには、高校生のブレザーを着た

 闘真が立っていた。


 一瞬で張り詰める緊張感。


「なんの用だ?」


 椿を背後に隠すと、麗音愛は呪怨を足元から呼び起こす。


 いつもの通学路のアスファルトから、真っ黒な闇が溢れ出す。



「お前に用なんかあるか!! 姫様に会いに来た」


天海紗妃(あまみさき)と、また来たの!?」


「まさか!! 俺はあいつ殺したいですよ!! 

 姫様を傷つけやがって!」


「お前の目的はなんだ!!」


「るっせ―ぞ!!ダークネス!!

 姫様、俺と話しましょう

 見せたいものがあるんです!


 ダメなら学校の人間10人殺します

 全員でも、もちろん」


 狂ってる……。

 そう思ったが、無関係の人間を巻き込めない。


「わかった! でも

 紅夜のところへ連れて行くわけではないんだな!?」


「そこは姫様の御意志でと言われてますから」


 会話に入らない麗音愛は、少しでも闘真が何かしようとすれば

 攻撃しようと臨戦態勢だ。


 最大限の殺気で威嚇する。


「うぜーぞダークネス」


「ダークネスはお前らだろ?」


「紅夜会こそ、正義だ」


 睨み合う2人。


「私に何をしろと!? 早く言え!!」


 守ってくれる麗音愛の前に、椿が立った。

 もう、演劇用とでも誤魔化せるだろうと細剣・緋那鳥を手にする。


「絶対に、姫様も気に入る場所があるんです

 そこに一緒に行きたくて」


「そんな事を許すわけがないだろ」


 また椿の前に、麗音愛が出る。


「人間殺しなんて、すぐできる」


 闘真は武器は手にしていないが

 上空には、妖魔が飛び交っていた。


 妖魔は本能的に動くので

 有益であれば、姿を見せ

 無益であれば、姿を隠す。


 隠れるのではなく

 普通の人間の前では不可視化できるのだ。


 これだけの妖魔が、下校時の生徒達を襲ったら……。


「……わかった、行くから

 皆殺しとか、絶対にやめて」


「椿!」


「姫様!すごく綺麗な場所ですよ

 行きましょう」


 そう言って

 闘真は手を差し出した。


「……麗音愛いいの、大丈夫」


「大丈夫なわけないだろ」


「だって、私の家にも

 火を着けたやつだよ、何するかわからない」


「俺が闘真を此処で殺す」


「こんなに人がいっぱいなんだよ? どんな騒ぎになるか」


 2人の話に闘真が割って入る。


「姫様、俺が支えますから

 こっちに来てください」


 闘真の上空に、妖魔が待機して

 飛び回っている。


 上空に手を伸ばし

 椿にも手を差し伸べる。


「だめだ、椿」


「……わ、私も嫌だけど」


「そこの婆さん殺しますよ?

 ほら、姫様

 俺の手を」


「……わかった、周りの人、麗音愛を傷つけないで!」


「それでは、こちらに」


 闘真に伸ばされた手を、覚悟を決めて近づき握る椿。


 いつも凶暴で喚いている粗暴な闘真が

 無邪気な幸福そうな微笑みを浮かべた。


 まるで恋をする少年のように、少し照れたように。


 それを見た麗音愛は引き剥がしたい衝動に駆られる。



 闘真はその笑みで椿の手を握り腰を支えた。


「麗音愛も行くから……!」


「え~……」


「この距離で私とやり合う!?」


「それでも3人は殺せますよ

 ワガママな姫様、遠くからならいいですよ

 着いてこられるならね」


 言い終わる前に妖魔で飛び立つ闘真。


 もちろん麗音愛もすぐに呪怨の羽で、椿のリュックも背負って

 闘真の後を追う。


 空中で、周りに被害が及ばないよう

 攻撃する事も考えたが

 椿との距離で難しい。


 一体何をするつもりなのか、麗音愛の心に殺意が湧く。

 濃く深く――。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 親友なのはいいけど、その言葉が2人の関係を停滞させて気持ちを縛って閉じ込めるものになってはいないだろうか…と思うなど(´・ω・`) 思春期、むずかしい…
[一言] 闘真!本当に嫌いだ、コイツ〜!!!(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
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