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同化剥がし~麗音愛への訪ね人~

 


 加正寺琴音(かしょうじことね)はにっこり微笑んで麗音愛を見上げている。

 セミロングの髪が艷やかで今どきの可愛い女子高生という感じ。



 加正寺琴音(かしょうじことね)


 その名前に聞き覚えはない……。


 いや、ある?


 そういえばこの前

 宴会の時両親が……


『そういえば、加正寺(かしょうじ)家の分家の娘さんが入団されるんですって?』



『なんだか、力の強いお嬢さんらしくてね。


 きっかけは偶然にも公園で妖魔に襲われて運ばれたことだったんだが――。


 玲央、覚えていないか?』


 あの会話を思い出した。


 椿が不安そうに見守るなか

「もしかして、公園の?」

 と麗音愛は言った。


 椿も先日の話を思い出したようだ。


「はい!ありがとうございました!!」


「白夜団の関係者だったんですね」


「あの時は、まだ何も知らなかったんですが

 色々あって……入団することに決めたんです」


「あの、立ち話もなんだから……中にどうぞ」


 椿がそう言って、琴音を中に入れた。

 麗音愛は内心、挨拶だけで終わりにしてほしかったと思うが

 確かに琴音は話がしたそうだった。


「すみません~お疲れなのに」


 そう言いながらも嬉しそうにソファに座る。


「玲央さんに助けてもらわなかったら、私死んでました!

 命の恩人です!

 ありがとうございました」


 頭は下げず麗音愛を見ながら伝えてくる。


「いえ、そういう使命というか……

 団員の仕事なので、気にしないでください」


「かっこいい~」


「えっ!?」


 驚きの声をあげたのは椿だ。


「いや、俺だって『え』って思ったけどさ」


「ち、違うよ。なんていうか」


 この大層好意のある瞳を麗音愛に向けている感じ……。


「麗音愛のお顔、見えてる?」


「はい!はっきり!

 すっごくかっこよくて綺麗です」


「え……いや、そんな」


 椿に言われた時よりも照れる仕草をする麗音愛。

 モヤモヤと胸焼けを感じる椿。


「実は、玲央さんの事を私が詳しく話すので

 そこで力があることがわかって……

 うちはお父さんも会社の社長で普通の家なんですけど

 私が自分で白夜団に入りたいって思ったんですよね」


「はぁ……」


「どうしても玲央さんにもう一度会いたくて」


「「えっ」」


「はい!会いたくて!」


 困惑した2人を前に、琴音は終始頬染めニコニコだ。


「そ、そういう理由では入団しない方が……な?椿」


「そ、そうですよ……うん」


「? そうですか?」


 まさに、やっと今解決してきた話だ。


「襲われていた化け物を相手にするんですよ」


「はい!でも玲央さんと一緒なら大丈夫です」


「いやいやいやいや」


「守りながらなんて無理だよ、加正寺さん

 麗音愛だって怪我しちゃうし」


 焦る2人に琴音はマイペース。


「じゃあ、その時考えます。

 死ぬ気はないです、せっかく守ってもらえた命ですし!

 所属もまだ決まってないし、調査とか研究もいいかなって

 大学もそっち方面行かせてくれるようなので」


 明るくて、未来が絶対あると思っている眩しい笑顔。


 椿は

 自分の存在が惨めに思えてきた。


 胡蝶の夢にしがみついてる自分。


「椿、疲れてるね。休もう」


「……麗音愛」


「れおんぬ?あだ名ですか?

 可愛いですねー!

 私も呼んでもいいですか?れおんぬさんって」


 琴音の可愛い声で呼ばれた『れおんぬ』という名前。

 椿の胸がまた痛む。


 断る理由もない


 きっと麗音愛はいいよって言う……。




「ごめん、れおんぬは椿だから呼んでもらってて

 れおんぬ呼びはちょっとやめてほしいかな、

 複雑なんだ、ごめんね」


「えーそうなんですか

 わかりました、残念」


 琴音は大して残念にも思ってなさそうに

 すまなそうに微笑む麗音愛を、見てる。


 話は進んでいくけれど、椿のさっき痛んだ胸はほわほわと温もる。


 勝手に笑みが出る。


「じゃあ、玲央さんPLIN教えてください!」


「えっ」


 ぐいぐい琴音にたじたじの麗音愛。


「俺、ああいうのちょっと苦手で……」


「それかSNS、スイッターとかイラグラやってません?」


「うん、そういうのも一切……ははは、ごめん」


「じゃあ、メアドか電話番号教えてください」


「えっ」


「嫌ですか……?」


 八方塞がりだ。

 結局アドレスを教えてしまった。


「すっごく嬉しいです」


 宝物のように、携帯電話を握りしめる琴音。


「あんまり返信もできないかもしれないよ」


「いいんです!嬉しいです」


 2人を見ていると、また辛い気持ちになってくる

 自分の儀式服の袴を椿は握りしめた。


「ごめんね、俺ら疲れているから

 今日はもうこれで」


 椿を見て麗音愛が切り出した。


「はい、すみません桃純(とうじゅん)さん」


「ん、全然、大丈夫です」


 そう言って琴音が立ち上がったその時

 ドタバタと廊下から大人数の声がする。


「だから、疲れてるから休ませてあげないと~~」


「いいべ~顔見るくらい!」


「そうそう、玲央に会いたいし」


「少しにしろよ玲央がキレたら……」


 ガチャっとドアが開き

 地下鉄浄化作戦で一緒に闘った

 梨里(りり)龍之介(りゅうのすけ)

 剣一と佐伯ヶ原がなだれ込んできた。


「玲央~~!! やばかったよ~」


「椿!! お前はまじで最高だよ!! さすつば!!」


 うわっと顔に出る麗音愛と椿。


 梨里はセクシーなスーツ姿で

 麗音愛に抱きついた。


「ちょっと! 何するの!?」


 そう叫んだのは、琴音。

 椿も驚きはしたが言えない。


「はぁ? なにあんた」


 麗音愛は梨里の肩を掴んで自分から離し

 椿に抱きつこうとする龍之介の前に立つ。


「私は加正寺琴音ですが!?

 七当主の加正寺ですが!!

 馴れ馴れしくしないでもらえます?!玲央さんに」


「はぁ? うるせーし!新人でしょあんた!」


「彼女じゃないんですよね?」


「これからなる予定!」


「な、私だって」


「椿ぃ~なでなでしてやるからさ~」


「弁当足りなそうだな」


「そうですね、余りがないか俺聞いてきます」


「今メアド聞きましたから!」


「はぁ!?何勝手に!」


「椿、可愛いなぁ、そんな玲央の影隠れてないでさ

 俺と話すべ?」


 がやがやと騒ぐ声に

 椿が麗音愛の羽織の背中をぎゅっと握った。


「いいからお前らもう出ていけ!!

 死闘のあとだぞ!!」


 麗音愛の怒鳴り声が部屋に響き

 静まる3人。


「そうそう、こういう子が怒ると怖いわけよ」


 剣一がやれやれと呟いた。


「兄さん、佐伯ヶ原

 申し訳ないけど弁当追加頼む」


「おっけ、ほら行くぞお前ら」


「えらそーにすんなよ、玲央」


「もう、龍がうっせーから」


「すみません」


 ゾロゾロと出ていく5人。

 はぁっと麗音愛の後ろいた椿が息を吐く。


「おい、俺ら

 二学期から水環に転入すっから」


「うん、さすがに一学期中途は

 やばいっしょって二学期からなんだけど」


『はぁ??』と呆然とする麗音愛と椿。


「私は今月に転入します!

 1年生なんですけど、よろしくお願いします

 玲央先輩」


「「え」」


 麗音愛が怒鳴った事など、なかったかのように

 琴音はにっこり笑って手を振り

 部屋から出て行った。


 廊下でまた梨里との揉めが聞こえてくる。

 公園では

 震えていた気がしたが相当に気は強いらしい。


 静かになった部屋で2人はまた長い息を吐いた。


「ありがと麗音愛」


「いや、なんか俺の用事に巻き込んでごめん」


「ううん……」


 元気のない椿を見て、麗音愛は椿の顔を覗き込む。


「本当にごめん」


 麗音愛の長いまつげと、綺麗な瞳が椿を見つめた。


 また脈打つ、じわりと温む胸。


「全然、大丈夫」


「良かった

 着替えようか、俺一旦出るね」


「うん、あの」


「すぐ戻る」


「うん!」


 何も変わってほしくない、そう思う2人の気持ちとは

 真逆に

 進んでいく秋の、秋の気の流れ。






いつもありがとうございます!!


読まずとも大丈夫なのですが

加正寺琴音のエピソードは

「七夕に想う 色の無い夜に・Colorless night~最強呪刀に呪われた俺は異能を駆使し無双。追放された魔王の娘と恋に青春を謳歌する~外伝  」

の外伝で読むことができます


シリーズで紐付けしているので(ページ上にリンクがあります)

ご興味ある方は読んでいただけると嬉しいです


第3章じれじれ、麗音愛モテキ?

楽しんで頂けると幸いです!




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― 新着の感想 ―
[良い点] アッ! 噂の琴音さんだっ!! 今のとこ押しの強いかわいいお嬢さんだけど、これからどうなるー? 美子ちゃんは大丈夫かなー 彼女の内心はとても身勝手ではあるけど、気持ちは分かるというかリアル…
[一言] まさかモテ期が来るんですか?ヤキモチ展開ですか?? またパワフルな女の子。ぐいぐい来そうな予感でわくわくします。 でも美子ちゃんの今後も気になる。出番減ってきてるし、同化剥がしも成功したから…
[良い点] 一人残らず圧が強い…椿とれおんぬ以外 これは前途多難ですね。美子も絡んでくるだろうし…
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