2 邪魔された水浴び
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おかげさまで総合評価34というスーパーウルトラスタートダッシュを決めることができました。
あと、ランキングというものを導入してみたのでよかったら押してみてください(使い方教えて…)
足下はときどき木の根が出っ張っているところもあって歩きにくい。
これで熊とかだったらどうしよう。……序盤死だけは避けたいな。
しかしこの新しいこの体はかなり運動能力が高いらしい。遠いと思っていたが、あまり疲れない。祝福を受けた肉体だ。もとの肉体よりは強靭に違いない。
「このあたりだったよな……」
立ち止まって気配を探してみたりしてみる。気配てなんだ気配て。厨二病が過ぎるな。もうこのシチュエーション自体がもう大分キテいるけれど。
とりあえず耳を澄ましてみる。お、なにか水の流れる音がするな。そうか、湧水かなにか汲みにいったのだろうか。うーん、水道設備が整っている世界ならそんなことしないよなぁ。でもだいたい文明が開いてない世界にいくのが常套だ。おそらく洗濯か、水汲みか。そんなところだろう。
水音に導かれて、数分。あれが水場か……。小さな滝があって、そこから小さな清流がどこかに流れている。人影を追ってきたけど、誰もいないなぁ。この清流を下ってみるか。村にでもたどり着くかもしれないし。
そう思って歩き出した瞬間、天地がひっくり返っていた。ついで全身に感じる大きな衝撃。
「うわ……なんだ」
俺の上に、めちゃくちゃ可愛い子がいる。銀髪碧眼美少女。そんな七文字熟語が存在するなら、この子のためにあると思う。
「喋らないで」
透き通るような声が響いた。なんて綺麗な声だ。
「お、おう」
「同じこと言わせないで」
思わずあげた呻き声のような返答すら、思わず聞き惚れてしまうような声が遮る。絞められた首が圧迫されて呼吸が苦しい。
「あなたは誰?どこから来たの?」
「えっと、なんか森に放り出されて人を探してたんだけど……。名前はシンヤだ」
「シンヤ……?とにかくなにかしようとしたんじゃないのね?」
「あぁ、もちろん。というか君が何者なのかも知らないし。それと……」
「なによ」
言い淀んだ俺に、見るものに知性に富んでいることを感じさせるその目が有無を言わさない圧力をかける、
「水浴び……してたんだな。邪魔して悪かった」
「そうよっ、これから体を清めようとって時に……って、あれ?水浴びってーー」
そう、水浴びをしようと思っていたのだろうところにお邪魔したおかげで、今俺に跨りなさっている美少女は一糸も纏わない白く輝く姿なのだ。解かれた豊かな銀髪が大事なところを隠しているだけで。
ぎこちない動きで目線を自分に向けて、自らがどんな姿をしているかを理解していく。顔は羞恥に染まっていき、それに伴って輝きを失う眼。
あ、俺死ぬかもしれない。あれは人がしちゃいけない目だ。
可愛い悲鳴が耳に届くと同時に、目の前が鈍い音と共に暗転した。
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「で、シンヤだっけ?森に放り出されたって言ってたけど、どういうことなの?」
気絶させられていたせいでまだくらくらする。緑と白を基調にした、RPGにでてくる旅人のような服をまとい、濡れた銀髪をタオルのようなもので拭きながら尋ねる銀髪美少女。答えるのはいいんだが……
「なんで俺は縛られてるんだよっ?!」
俺は気づくと後ろ手に縛られて、ご丁寧に足も縛られていた。硬い地面にお尻が当たっていたい。それに、さっきからいろいろと全身が痛い。
「はぁ……、当たり前でしょ。乙女の水浴びを覗いておいてなにを言っているのかしら」
呆れた目で見下ろされる。全裸で飛び掛かってきてなにを言っているんだ――そんなことを言ったら本当に殺されそうなので、それは飲み込んだ。
「俺はただの遭難者でさっきのは事故だ……」
「あなたが納得のいく説明をしてくれれば信じるわ」
この世界に何人も、外の世界から送られている人がいるはずだ。ということは、このことは知られているのかもしれない。しかし、簡単に教えていいのだろうか。もう力を持っている転生者に売られて殺されたりしたらたまったもんじゃないが……。仕方ないか、こんな可愛い子が仲間になるかもしれない。神様も王道を行けと言っていたし、話してもいいだろう。
「えっと、俺はこの世界の人間じゃない。ついさっきほかの世界からやってきた」
「……」
なにを馬鹿なことをと一蹴されることを予想していたが、なにやら黙ってしまった。とりあえず説明を続けるか。
「それでこの森に飛ばされてきたんだけど、まったくこの世界についてわからないし森を一人で歩いた経験もない。うろついていたら人影が見えて、追いかけてきただけなんだよ。水浴びをしているなんて思ってなかったからさ」
「とある噂がまず流れたの。「異世界から不思議な力を持った人間がきたら、それは金の卵のようなものだ」っていう。その後、それを消すように流れたのが、「どこから来たかわからない人間が来たら、厄災をもたらすから殺せ」っていう噂」
なるほど。このゲームが始まった頃はまだ転生者は少ない。まだ助け合いの精神が残っていたのかもしれない。
しかし転生者が増えるにつれて、いわば転生者のリスポーンキルのような状況が望まれるようになった、ということか。
「とにかく、1つ目の噂を知ってる君とまず出会えてよかったよ。2つ目しか知らない人だったら殺されてそうだし」
「まだ迷っているのだけれど」
「え」
まだ俺の命の危機は去っていないらしい。
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