1 神々の遊び
初めまして、ノクターンのほうで18禁小説を書いているTOMです。
そっちのほうを読んでくれてたら、感謝!
はじめての一般作なので、指摘や要望あったらどしどし感想かメッセージにお願いします!
Twitterもやってるのでぜひ https://twitter.com/tom59nct
白い光が目に飛び込んできた。
どうやら俺はいま、なにもない真っ白な部屋にいるらしい。床、壁と天井に継ぎ目が見当たらない。吹雪の中で起こるというホワイトアウト現象が、この奇妙な空間で起こっていた。自分がふわふわと浮き上がったような、地に足つかない感覚に襲われる。
はて、ここはどこだろう。夢を見ているのだろうか。この建物から出た時のような、夜暗い部屋の中で画面の輝度を間違えて最高に設定してしまったような感覚は、夢にしては少々生々しすぎる気もする。
「やっと適応したやつが来よったか」
どこかから声が聞こえてきた。適応?なんだ、それは?
「おっとおっといかんいかん。儂の姿が見えておらんのだな、今見えるようにしてやるわ」
声が止んだかと思うとそこには、今までで見たことがない現象が起きていた。正しくは、一人の老人が瞬き一つの間に現れていた。
ひと言で表すと仙人のよう。白髪に長い髭、小柄な体に和風の服装。ソシャゲにでてくる日本の神様って感じだ。
「はっはっはっ、皆同じように鳩が豆鉄砲を食ったような顔をするの。簡単に言うとな、おまえさんは死んだのよ」
――死んだ?俺が?
「信じられんかもしれないが、おまえさんは死んだ。これは事実だの。死因は運動不足と不健康な生活による心臓発作……ふむふむ、まぁ能力値も平均であったし、死ななくてもうだつが上がらない人生だったであろうよ」
「そんな……っ!」
これは夢だ。夢に違いない。だって俺はまだ童貞なんだぞ。やりたいことだってまだたくさんあった。まだ死にたくない。
動揺に陥る俺を見て、にやりと老人が笑う。
「そこでだ、今我々のなかで――おまえさんたちがいうところの神だな――、人生ゲームというものが流行っておってな。おまえさんはその参加資格がある。それをもつ死者がなかなか儂のところに来なくての、やれやれやっと流行に乗れるわい」
なにを言っているんだ?
困惑に眉をひそめる俺に、老人は続けて言う。
「あー、説明するとな、神々が能力の欠片もない若者に祝福を与えてだな、一つの世界に送り込むのよ」
欠片もない……。
「それでな、どの神が送った者がその世界のどんな地位にいるかで、神々同士の勝敗が決まる。どんな祝福を与えてやるのかも考えなければならない、いま神代から数えて一番アツイ遊戯なのよ」
はぁ、つまりバトル・ロワイアル・ゲームを上から見て楽しむゲームということか。
「伝わったようだのう。そこで祝福の話なのだが、異世界にいく本人が決めるのが常。しかし、儂はどうしても試してみたい祝福があるのでな、それをかけてやろう」
「は?!普通選べるんだろ!?」
使えない者を押しつけられても困る。
憤る俺をみて、神は酷薄に嗤う。
「おまえさん、知力も体力も知力もないおまえさんたちがかんがえるより、神である儂が考えた方がいいにきまっとるだろ?」
なんで知力二回言ったし……。まぁそれは確かにな。
「というわけで、行って来い」
「何の説明もないんですかね?」
「儂の希望を通したいと他の神々に言ったのだが、説明なしで送り出すならいいと言われてしまっての」
えぇ…。ってことは俺は与えられた祝福がなにか分からん状態でいくのか。心細いな。
「お、そうだ、あまりにも不憫だから容姿はよくしてやったぞ。これはみんな頼んでくるらしいからの」
不憫っていうな、不憫て。
「次会うときはおまえさんがかの世界で死んだとき。すぐ会わないようにしてくれよ。儂の名誉もかかっておるからにな」
「そんな物騒な世界なのか?」
「さぁ?」
こちらからの質問には応じないようだ。神は泰然として、薄い笑みを浮かべるまま。
「どうやっていくんだ?」
俺がそう問いかけた瞬間、ガチャッっと、鍵穴が開く音が、後ろから聞こえた。
後ろを向くと、白い世界の中に四角く通路が現れている。
なるほど、あそこから出ればそこは異世界ってわけか。
「じゃあ……って、あれ?」
扉から神に視線を戻そうとすると、もうそこには誰もいなかった。
静寂が白い空間を支配して、もうおまえは早く出ろといっているようだ。
洒落た演出をしてくれるじゃないか。一歩ずつ異世界に近づいていく。
白い空間との境に足を踏み入れると、一瞬視界を奪うように光に包まれた。
次の瞬間、鼻腔を草と土の香りが満たす。遅れて視界が回復すると、そこは自然に囲まれた場所だった。
わぁ……、なにこれすごい。これが異世界ってやつか。見渡す限りの自然なんて、生まれてこの方見たことがない。日本ならほぼ視界のどこかに鉄塔や電柱が必ず入る。
しかし、周りを見回してみても、生い茂った木が見えるだけ。熱帯雨林のような湿地でないだけ良かったかもしれない。イメージ的には北欧の森だ……ヨーロッパ行ったことないけど。
これは困った。遭難スタートというのは鬼畜過ぎやしないか。何かする前に獣に襲われて死にそうだぞ。さすがに本当に人気のないところに送り込んだということはないと思いたい。座標はランダムだなんて言われたらたまったもんじゃない。もしそうなら、地面の上に転移してくれだけで御の字だな。
人工物や人の痕跡はないか?慎重にもう一度ぐるりと見回してみる。遭難したときのhow-to記事を読んだ時の記憶が頼りだ。なんとも心細いけど。
あっ、あれは? 遠く、木の隙間に今人影が見えたような。
行ってみるか。
どうだったでしょうか
ぜひブックマークと評価お願いします!