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初めてのバイト

「坊っちゃま、バイトをしてみませんか。」

「.......バイト?」

ある日、メイドが突然そんなことを言い出した。

「はい、訓練のひとつとしてバイトをしてみた方がよろしいかと。」

「.......そうか。」

バイトか。

したことはないが、どういうものかは知っている。

してもいいが、気になることがあった。

「なんで、バイトをする必要があるんだ?」

これは純粋な疑問だった、残してくれたお金があるのでバイトはする必要はないとおもっていた。

「坊っちゃまは家からあまり出ないので世間というものを知りません、なのでバイトをして働くということを経験して欲しいのです。」

............確かに。

俺は働くということをしたことがなかった、ずっとベッドの上で寝てるだけだったので、そんなことをするなんて夢にも思わなかったのだ。

「わかった、やってみる。」

なので、俺は頑張ってみることにした。






「えっと、君がウタ・レーヴァン君?」

「あ、はい。」

俺は町の人気のある喫茶店に面接をしに来ていた。

目の前にいる女の人はこの店の店長であり、赤色の髪の毛をしており綺麗な人だ。

「バイトをするのは初めて?」

「はい。」

「それにしてもレーヴァンて、もしかしてあのレーヴァン家!」

「............はい。」

この際だから言っておくが、うちのレーヴァン家は町からちょっと離れていても分かるくらいの有名な貴族の家だ。

(まぁもう俺とアイツしかいないが。)

町の人たちは俺が家族に捨てられたことをまだ知らない。

「それにしても、あのレーヴァン家の人がバイトか。」

「あ、はい、世間知らずなので勉強してこいと言われまして。」

嘘は言ってない。

「そうなんですか。」

それからも他愛ない話が続き、運が良かったのか採用されることとなった。

「ありがとうございます。」

「うん、ところでレーヴァン君。」

「はい、なんでしょうか。」





「君、女装に興味ある?」

「........................................................はい?」




今一体この人なんて言ったんだ?

女装がなんとか。

「私、君を見た瞬間びびっときたのよね。」

「................」

「かわいい顔に、低くてかわいい身長、そうこの子なら!!」

「........................」

「この子が女装して接客したらお客さんが増えるって!!」

「帰らせていただきます。」

勢い良く椅子から立ち上がる。

ヤバいヤバいヤバいヤバい早くここから逃げないと。

そうか分かったぞ、何故この店は店員がいないのか!

(アレが原因か!!)

俺は目にもとまらぬスピードで出口に向かって走る、だが。

「フフフ、逃がさない。」

次の瞬間、俺の後頭部に衝撃が走った!!

(........................なっ。)

そして、俺は意識を失った。






「おい、知ってるか!!」

「なんだよ。」

「最近、あそこの喫茶店にすごいかわいい女の子がバイトしてるらしいぜ。」

「な、マジかよ。」

「言って見ようぜ。」

「おう!」

そう言って男達は喫茶店に入る。

「いらっしゃいませ、2名様ですか。」

天使のような笑顔を放つ女の子が2人を迎えた。



(俺、何やってんだろ。)

あの後、気がついたらいつの間にか女装させられており、紐で縛られ脱出不可能な状態になっていた。

写真も撮られて、働かないならこれをばらまくと脅され働くことが避けられない事となった。

「いいねぇ、君、本当にかわいいよ。」

「あはは、ありがとうございます。」

何故、こんな男共の相手をしなくちゃなんないんだ。





「お疲れ様。」

「ハァーーーーーー。」

あれから客が押し寄せ、めちゃくちゃ忙しかったが、やっと終わった。

「いやぁ助かるよ、やっぱり私の目論見通り客が増えたね!!」

「........................」

鈍器が欲しい。

こんなにも人を殴りたいと思ったことは初めてだった。

「これからもよろしくね。」

「............................................................え?」

「忙しくなるわよ。」

嫌だ。

こんな地獄の所業がこれからも続くなんて。

(こ、これが働くということなのか。)

その時。

俺が絶望していると、ドアが開いた。

「ただいまお母さん。」

「あら、お帰りなさい。」

「ん?」

その娘には見覚えがあった。

「あ、あなたは//////」

「こ、こんにちは。」

確か前に助けたあの娘だ。

「知りあい?」

「うん、前に助けてくれて//////」

「あら、そうだったの。」

まさかあの娘が、アレの子供だったとは。

あの娘の方は母親とは似ておらず、黒髪であり清楚な感じである。

「あの、お母さん//////」

「なに。」

「どうしてあの人がここに//////」

「ああ、今日からうちで雇ったバイト。」

「........へぇ//////」

嬉しそうに見えるのは気のせいだろう。

そんなことより。

「あ、あの店長。」

「何、ウタちゃん?」

「ちゃん付けやめてください殴りますよ。」

はっ、しまった、つい本音が。

「そんな怖い事言わないでよ、うちのメイドが。」

「え?メイド?」

その娘にも聞こえてしまっていた。

(こ、このくそあま!!余計な事言いやがって!!)

我ながら思考が乱暴になってきたが、今はそんなことはどうでもいい。

「ええ、そうよ、ウタ君には女装してメイドをしてもらっているの。」

「............女装」

「い、いや、その、これには深い訳があってだな。」




「似合うと思います。」

「............は?」




その娘は意外な事を言った。

「やっぱり、さすが我が娘、分かってるじゃない。」

「うん//////」

や、ヤバいぞこのままだとあの娘まで納得してしまう、心のどこかで止めてくれるとちょっと思っていた。

「あ、言い忘れてたけど家の娘も一緒に仕事手伝ってくれるから。」

(............え、てことはこの娘にもあの格好を見られるってことかよ。)

「よろしくお願いします//////」

「お、おう。」

このバイト、絶対にメイドには言えない。

そう思う俺なのであった。


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