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9話 やって来ました歓楽街

第9話です。よろしくお願いします。 ※誤字修正しました。

 やって来ました歓楽街! 夜のネオンが眩しいぜ! ネオンではないけれども!


 宿に戻ってから昼食をいただいた後、ロランさんが少し用事があり、日が沈む頃には戻ってくると言って出かけていったので、一旦家に転移して、身を清めた後はゴロゴロして時間を潰して戻ってきた。


 歓楽街は夜になると、あちらこちらのお店で魔道具が灯り、きらびやかに通りを照らしているのだ。灯りの魔道具も、赤や橙の温かな暖色系から、青のような寒色系の光まである。


 グラヴィーナはダンジョンがあるおかげで、魔石の流通量が多く、灯りの魔道具が多く出回っているから夜でも、灯りがいたるところに掲げられている。魔石ってなに? の質問の返答は、魔石とは、魔物の体内で生成される魔力の塊みたいなものだとか。なぜだか、ダンジョンの魔物は皆体内に魔石を有していて、外の魔物は、魔石の無い魔物が多いそうだ。それを加工して、様々な道具を作っているとのこと。それらの道具の総称を魔道具というらしい。魔石が電気の代わりみたいなものだな。


 灯りの魔道具などは比較的安価で買えるらしい。魔石は国の財産にもなるので王国法で他国に持ち出すことは違法になるそうだ。宿にあるシャワーも魔道具だったようだ。やはりこの世界は、魔法があるから、ちぐはぐな発展を遂げてる印象だな。何かを発明するときに魔法と言う便利な力があるから、何段階か飛び越えて発明できてしまうのだろう。その代わり、科学的な根拠や理論は育たないんだろうな。そもそも魔法に科学的な根拠など求められないか。


 「いや〜、全然ピエタと違いますね。あっちは真っ暗だったのに」


 「ピエタのあるアポリナル王国にはダンジョンがないので、魔石を輸入に頼っていますからね。どうしても高価になってしまうんですよ。それにエピタは国の端にある小さな町ですから、夜でもやっている店は酒場くらいしかありませんよ」


 なるほど、確かにグラヴィーナと比べると規模が違うもんな。グラヴィーナの歓楽街は、冒険者と言う刹那的に生きる人々が多く集ってるため、賑わっている。冒険者は命を賭ける職業なだけあって、豪快な人が多いそうな。


 歓楽街を少し進むと、妙齢の女性が数多く立っていて、通りがかる男に声をかけるというスポットになっている。出店の串焼きをかじりながらぶらつく。歩いてるだけで楽しいな。


 しばらく進むと、娼館が密集している通りがあるらしい。そこのにお目当ての店があるのだとか。期待に胸をふくらませながら歩く。この世界は美男美女が多いのだ。通りに立っている客引きしているおねーさんも綺麗な人が多くて、付いて行ってしまいそうになる。しかし、これから行く店は、もっと美人さんが多いというではないか。否が応でもでも高まってくる。あ、ちゃんとしたお店に行かないとやはり病気のリスクが高くなるそうです。やっぱりそこはきちんとしないとね!


 ふと脇に目をやれば、天幕が密集しているのが目にはいったので、何の気なしにあれなんですか? と聞いてみる。


 「今日は奴隷市が立っているんですよ。前月、中月、後月の最終日に奴隷市が開かれるんです。ほら、あの方は首輪をしているでしょ? あれが奴隷の目印なんですよ」


 おぉ……、やはり奴隷もあるのか。言われた方へ目をやれば、小綺麗な格好をした男と一緒に歩いている犬耳の青年が、首にチョーカーのようなものを巻いていた。ふむ、奴隷か。この世界の文化にケチを付けるつもりもはない、多分、社会機構として組み込まれていて、労働力としては欠かせないものなのだろう。それでも俺には全然馴染めなさそうだ。

 

 「そうだ、マヒロさん、少し覗いてみましょう」


 ん? 覗くって奴隷市のこといってるのかな? えぇ……、気が進まないな……。全員開放してあげたくなってしまいそうだ。


 「奴隷と言うのは、裏切らない護衛にもなるのですよ。冒険者などはよく利用していたりします。奴隷とパーティーを組めば報酬は独り占めですからね。それに、奴隷は一般奴隷、借金奴隷、戦闘奴隷、犯罪奴隷と分かれていて、一般奴隷と借金奴隷は財産の所有を認められていて、主人のさじ加減ですが、与えられた賃金で自分を買い戻すことができるんです」


 聞いた話では、職業斡旋所も兼ねているとか。戦闘奴隷は、他国との戦争で捕虜になった元兵士等がなるらしく、此方は開放が認められていない。犯罪奴隷は軽い罪なら数年で開放されるとか、それでも殆どが、危険な仕事が多い鉱山などに送られるらしく、開放される前に死んでしまうことが多いのだそうだ。


 確かに戦闘ができる護衛がいれば安心なんだよな。それに絶対裏切らないというのもプラス査定だ。この世界の常識なんかも教えてもらったりもできそうだしな。相変わらずスキルとかよく分かってないままだし。どうやら、魔法で縛ることによって、主に危害を加えないようにできるとか。ロランさんの実家にも奴隷の使用人が数人いたらしい。裏切らないのなら重宝しそうだな。除くだけ覗いてみるか。


 「わかりました、少し見てみますか。ただし、買わないですからね!」


 強めに断っておく。フリじゃないからね? どちらにしてもお金も無いしな。とにかく可能性の一つとして、見ておく分には問題無いだろう。


 奴隷市が開かれているのは、広場の様な場所だ。天幕が30ほど建てられ、色々な灯りの魔道具が広場を照らしている。お香でも焚いているのだろうか? どこからともなく甘い匂いが漂ってくる。幻想的な雰囲気だ。


 「若様方、奴隷をおさがしょうか?」


 どこの天幕を覗こうかと話しながら歩いていると、奴隷商らしき男に声をかけられた。40代の顎鬚、高級そうなローブをはおっている。首元には金の装飾品が見える。見事なアルカイックスマイルだな。なんとも強かそうな。ロランさんといい、商人と付く人種はどうしてこうも、含みのある笑顔をうかべるのだろうか。商人怖い。


 「ええ、少し奴隷を見ていこうかと思いまして」


 こっちも爽やかロランスマイルだ応戦だ。奴隷商と聞くだけで身構えてしまうので、対応はロランさんに任せておこう。


 「それはそれは、なんともちょうど良い所でございました。私、奴隷を商っておりますヴェルレーと申します。この街にも店を構えさせていただいておりまして、本日は一の月最後の奴隷市にございますから、1級品をご用意しお客様をお迎えさせて頂いておりまして、ささ、こちらへどうぞ」


 ヴェルレーなる奴隷商が、大げさな身振り手振りでついてくるよう促し、ささ、どうぞどうぞと、自分の店の天幕に案内し始めた。まだ行くとも言ってないのだが。ロランに確認すると、まあ行ってみますか、と言っていたので、付いて行ってみる。


 ヴェルレーの天幕に入ると広場に漂っていた甘い香りが更にはっきりしてくる。ちょっと焚き過ぎ。だんだん鼻が麻痺してきた。どうぞお座り下さいとソファーに案内されたので腰を下ろす。ヴェルレーが天幕の裏に声をかけると、若い男がどうぞ、と飲み物をだしてくれた。赤ワインのようだ。ヴェルレーがどうぞ喉を潤し下さいと言いながら、ソファーの対面に浅く腰掛ける。


 「さてさて、先ほども申しました通り、本日は1級品揃いでございまして、必ずやご期待に添えるかと思っております。若君方は、どういった奴隷がご所望でございましょうか?」


 「そうですね、護衛に向きそうな奴隷を見せてもらってもよろしいでしょうか?」


 「かしこまりました。それでは準備させますので少々おまちください」


 そう言って、ヴェルレーは天幕の裏に消えていく。


 「ロランさん、大丈夫なんですか? お金も持ってないのに一通り見せろなんて。見せてもらって、買わないとか怒られたりしません?」


 「ははは、大丈夫ですよ。ヴェルレーさんは、北区画で、10年以上奴隷商館を構えてる方ですから。不穏な噂などあるような商人ではないですよ」


 ヴェルレーのことを知っていたようだ。ロランさん曰く、奴隷商は人を扱う仕事柄、商人ギルドに登録するのではなく、国からのライセンスで営業許可が出るのだとか。なので、そのへんのギルドに登録だけしている商人よりも、身元が確かなそうな。ただ、違法奴隷を扱っている闇奴隷商なるものもいるから気をつけてくださいだって。なにそれ、闇の奴隷商とか怖すぎる。


 奴隷商について聞いていると、ヴェルレーが戻ってきた。


 「それでは5人ずつ呼んでまいりまして、ご説明させて頂きますので、気になる奴隷がおりましたら声をお掛け下さい」


 パンパンと手を叩くと、先ほどの飲み物を出してくれた男が、5人の男女をつれて天幕の中に入ってきた。


お読み頂きありがとうございますっ!

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