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5話 馬車って結構ゆれるんですね

第5話です。よろしくお願いします。

 ケツが痛い。なぜこんなにケツが痛いかと言うと、俺は今絶賛馬車でドナドナ中だ。最初は馬車の旅とか風情が在っていいかも! と、テンション高めで乗りこんだはいいものの、信じられないほど揺れる。異世界の道事情は現代日本と違い酷いものだ。舗装なんてされてないよね。馬車も馬車でサスペンションなど無い。こんなもので1月も2月も旅ができるとか、旅人我慢強すぎる。景色も見飽きてきた。なぜこんなことになっているかというと、ロランさんの相談を受けたためだ。



♢♦♢



 「そこでですね、少々相談がありまして……」


 何やら爽やかな笑顔で持ちかけられた相談は、単純に今手持ちがないとの事だった。元々ロランさんは行商でエピタの町のある、アポリナル王国に行商で来ただけらしい。これから東に向かい、拠点としているヴィクトル王国へ帰るとこなのだとか。要するに、この国で帰り分の商売品を買い込んだから手持ちがなく、一緒にヴィクトル王国に来てくれないかの事だった。俺としても、これ以上この町にいても商売にもならないので、願ったたりかなったりだ。人生初めての馬車の旅のお誘いに快く同意したのだ。仮に、ロランさんが良からぬことを考えていたとしても転移で逃げればなんとかなるだろう。


 「どのくらいでヴィクトル王国とやらに着くんですか?」


 同意してから、それでは早いうちに出発しましょう、とロランさんに言われ、昼を少し過ぎた頃にエピタの町を出発した。幌馬車の荷台に潜り込み、御者席の近くに腰を下す。

 

 「ここからなら、2日と半日といったところでしょうか」


 そうか。そんなに掛かるのか。まだ荷台に潜り込んで2時間くらいしか経っていないというのに、いろいろ限界だ。ちなみに、旅の間の食事やら何やらは全部ロランさんが面倒見てくれるとのこと。食事は毒とか盛られたりしたら怖いから家に戻って取る予定だ。夜の内に、一度気が付かれないように戻って取ってこよう。今日、明日は野宿の予定だそうだ。キャンプみたいで楽しみだ。焚き火にあたりながらコーヒー飲みたい。


 旅のメンバーは俺にロランさん、護衛になんと、冒険者が3人いる! 俺も自称商人兼冒険者だが。腰に帯剣し、盾持ちのおっさん、多分俺と同年代くらいの背中に大剣背負った筋骨隆々の男。そして、明らかに魔法使いですよ! と言わんばかりのローブと杖を持ったおねーさんだ。やはり異世界といったら魔法だ。あるのだろうか。かなり気になる。冒険者組は、もう1台の幌馬車で先行しているので、あいにく挨拶くらいしかできなかった。


 ガタガタと馬車に揺られている間に、ロランさんからいろいろな情報を仕入れた。曰くこの世界はルドラアトルと呼ばれているらしい。


 今現在いる大陸がノーザンスト大陸と言って、最も西に位置する大陸らしい。大陸の配置は、時計で言うと9時にノーザンスト大陸、6時にアルディナ大陸、3時にオーディスティ、12時にバスルナ大陸となっていて、このノーザンスト大陸が一番小さいらしい。それ以外にも島国も存在するとか。この世界が球体であることは公になっているらしい。世界の果ては滝じゃないんだね。


 冒険者が存在するならば、それと対をなす者。やはり、魔物も存在する。今から向かう街は、ヴィクトル王国の中心から北西に位置するグラヴィーナと言う街だそうだ。その街道沿いにも魔物が出るとかで、護衛に冒険者を雇ったらしい。街道沿いは、各国の軍による魔物の間引きが行われているとかで、ゴブリンなどの弱い魔物などしか出てこないらしい。ゴブリン見てみたい。たまに、盗賊の類もでてくるとか。


 「そろそろ今日の野営場所につきますよ。お疲れでしょうが、あと一息頑張ってください」


 街道沿いには野営スポットのようなものがあるらしい。車など無い、移動手段に限られるこの世界だ、泊まれる村などが無いなら野宿するしか無い。なので、街道沿いにそういった場所が整備されているらしい。


 「馬車って結構ゆれるんですね。初めてなのででものすごく堪えましたよ」


 野営スポットに到着して、ガチガチになった体をほぐす。


 「そうですね、慣れてしまえばなんともないのですがね」


 いくら休憩を挟んでいたとはいえかれこれ5時間、御者をしていたとは思えない爽やかスマイルでロランさんが返してくれた。さすが行商人だな。さて、早いところ家に移転して食べ物をとってこよう。良い人そうだけど、会って1日では信用出来ないからね。寝る時も幌馬車の中で寝かせてもらうことにして、転移して家で寝るつもりだ。



♢♦♢



 ロランさんと冒険者3人組と、焚き火を囲い、車座になってのディナータイム。メニューは俺だけ別、日本産のおにぎりだ。みんな物珍しそうにしていたが、特になにか言われるようなことはなかった。


 「へぇ〜皆さんはグラヴィーナでダンジョンにもぐるんですか」


 食事をしながら冒険者3人組の話を聞く。盾持ちのおっさんがボントス、大剣持ちがフィルツ、魔法使いのおねーさんがリオッテというらしい。話を聞いてると、見た目通りリオッテさんは魔法を使えるらしい。何やら魔法スキル持ちだとか。魔法にスキルとか、またワードが出てきたな。この3人でもうパーティーを組んでもう4年とか。なかなかの熟練者パーティーらしい。それにダンジョンか。俺も挑戦してみたいところだが、三十路の凡人にはむりだろう。


 「魔法はリオッテさんだけしか使えないんですか?」


 「あ〜簡単な生活魔法とかなら使えるが、攻撃魔法なんかは無理だな。属性魔法スキルは習得するのに才能が無いとな」


 ボントスさんが教えてくれたのだが、魔法やスキルについて知りたいなら、グラヴィーナには図書館があり、そこで色々調べられるから言ってみるといいと勧められたので、行ってみようと思う。現在は情報がなさすぎて謎ワードばかりだから、お金が入ったら少し時間を懸けて、この世界のことを調べてみないとな。


 「さて、明日も早いのでそろそろお開きにしましょうか。見張りの順番はボントスさん、お願いしますね」


 色々と聞いていたら、かなり時間が経っていたらしい。ロランさんに言われるまで気づかなかった。魔物や野党が出るから見張りもいるのか。この旅の間は冒険者3人が順番にやってくれるらしい。見張りをしなくてはいけないとか、日本と感覚が違いすぎて気付きもしなかった。流石異世界ファンタジー。


 「そうですね。長々と、話し込んでしまってすいません。それじゃ俺は馬車で寝かせてもらいますね。話聞かせてくれてありがとうございました」


 馬車に戻って少し横になってから、自分の部屋に戻る。魔法にスキルか。早くグラヴィーナの図書館に行きたいな。その日は、なれない馬車移動で疲れていたのか、目を閉じるとすぐに眠りに落ちていった。



♢♦♢



 朝日が登る前に目を覚ます。異世界の朝は早いのだ。日の出と共に一日が始まる。旅の同行者が起きる前に馬車に戻らなくてはいけないため、身支度を整え馬車に転移する。俺が転移できるのは誰にも言わないつもりだ。強欲な人間に知られれば無用なトラブルに巻き込まれそうだしな。わざわざ異世界に来てまでトラブルに巻き込まれたくないもんだ。


 「おはようございます。随分早いですね? ゆっくり眠れませんでしたか?」


 転移して幌馬車から顔を出すとロランさんが身支度を整えていた。


 「おはようございます。旅に慣れてないもんで早く目が覚めてしまいました」


 「そうですか、疲れが取れていればいいのですが、まだまだ先は長いですからね」


 朝からロランさんの爽やかスマイル頂きました。俺はこの先の馬車移動を考えると辟易する。移動中に家に転移しているわけにも行かないから頑張るしか無いか。ケツが痛い。

 全員起きだして朝食をとる。俺は安定のコンビニおにぎりを持ってきたのでみんなと食す。


 「そろそろ出発しましょか」


 朝食の片付けを終え、一息ついたところでロランさんの出発の合図だ。

今日も1日頑張りますか! まあ、荷馬車にのってるだけなんだけども。


 

お読み頂きありがとうございますっ!

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