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31話 我々はやり遂げたのだ!

第31話です。よろしくお願いします!

 今日も日が昇る。俺たちは、いつもの様に直立不動で並んでいる。今日からヴィニー、ロイド、バートの大中小トリオも参加だ。今日から訓練は、5人の新米冒険者に4人の鬼教官が付き訓練スタートとなる。


 「人数が増えたな! そこのでかいの! 貴様は何者だ!!」


 「俺はヴィニーと言い」


 「ちがう! マヒロ!! 答えてみろ!!」

 

 「イエス・マアム!! 我々は等しくゴブリンの糞であります!!」

 

 「上出来だ! 今日は走りこみを倍にしてやろう!! 喜べ!!」


 上出来なのに走りこみが倍になる。これはもはや通過儀礼である。そう。ここに立ち並ぶ5人はどれであれ、等しくゴブリンの糞である。 


 今日も走っては倒れ、回復魔法を掛けられては立ち上がり、また走る。

 

 「ほらほら! 立ち止まると火傷するわよ!!」


 今日からは走りこみで立ち止まると、リオッテさんの炎魔法が飛んで来るようになった。初めて攻撃魔法を見たのが、自分に向かって飛んできている魔法であったのだ。


 そして、ある程度走るとボンストさんフィルツさんが待ち構えており、足元に転がった訓練用の武器を取り打ち合うのだ。


 「おら! マヒロどうした! そんな甘いガードじゃすぐに死んじまうぞ!」


 めった打ちである。スキルのあるサクヤはなんとかガードしているのだが、おれや大中小の3人組はめためたにやられて、地を舐める。そこにすかさず回復魔法がとんで来て走らされる。


 3人組はもはや泣いているが、訓練はもう止らないのだ。こうなったらギブアップもできない。やり切るしか無いのである。


 走りこみが終わると素振りではなく、教えこまれた型の訓練に移行した。這いつくばっても何度でも起こされひたすら型を繰り返すのである。



♢♦♢



 「今日からは第二次訓練を開始する! 貴様らがお待ちかねの実践訓練だ! 喜べ!!」


 「「「「「イエス・マアム!!」」」」」


 我々は、厳しい走り込みや型の訓練を乗り越え、本日より、実践形式での訓練に移行する。本日よりは、我々訓練生5名に軍曹殿を初め教官殿が手合わせをしての訓練の実施となる。総員本番の戦闘を想定して気を引き締めて事に当たる。


 「何だその攻撃は! 踊りでも踊っているのか! 立て!! いいか!! 貴様らは人間ではない! 魔物を屠るための道具だ! 屠れなければ存在する価値は無い!! 分かったなら立て!!」


 フランカ軍曹になんど打ちのめされようと立ち上がる。我々はマシーンなのだ。魔物を屠るためだけに存在する!! ヴィニー訓練生が立ち上がろうとしない。我々はマシーンなのだから早急に立ち上がり敵を屠らなければ!!


 「ヴィニー訓練生! 何をしている捕まれ! 早く立つんだ! 我々はマシーンなのだ!! 魔物を屠るのだ!!」


 「マヒロ!! 救援感謝する!! だが! マシーンとは何だ!?」


 我々は何度倒れようと立ち上がるのだ。この世の魔物を屠るために。



♢♦♢



 「よくここまで耐え切った! いよいよ最終訓練に入る!! いいか! 貴様らは今日の訓練を持ってゴブリンの糞を卒業する!!」


 「「「「「イエス・マアム!!」」」」」


「貴様らはこれから! 最大の試練と戦う! これよりは命を賭しての訓練となる!! どうだ!! 嬉しいか!!」

 

 「「「「「イエス・マアム!!」」」」」


 「総員戦闘準備! 発見次第敵を屠れ!! 行け!!」


 我々は走りだす。これより、ダンジョン1階層にいるゴブリンを殲滅する。


 訓練を乗り越えた体は軽やかにダンジョンを駆ける。すぐさま敵影確認、作戦行動に移る。


 「サクヤ訓練生! 前方に敵影3! 先行する!!」


 「畏まりました! フォローに入ります!!」


 ゴブリンが振り向くより早く駆ける、接敵、薙ぐ! 槍は標的を体ごと吹き飛ばす。近くにいる次の標的を突く! 爆散するがごとく貫通! 右後方よりサクヤ訓練生が残る標的目がけ駆け出る、すれ違いざまに一閃、そのまま駆けて行く。


 この階層に潜伏する敵対勢力であるゴブリンを屠るマシーンと化し、ダンジョンを縦横無尽、見敵必殺で駆け回る。



♢♦♢ 



 「作戦行動終了!! よくやった貴様ら!! たった今を持って貴様らは冒険者である!! この訓練を乗り越えた貴様らは冒険者の絆で結ばれる。貴様らのくたばるその日まで。どこにいようと我々は貴様らの同胞だ。冒険者は危険なダンジョンへ向かう。ある者は二度と戻らない。だが肝に銘じておけ。貴様らは決して死んではならぬと! なぜなら貴様らの死に心を痛める同胞がいるからだ!! 何があっても最期の瞬間まで諦めるな!! それが冒険者だ!! 分かったか!!」


 「「「「「イエス・マアム!!」」」」」


 我々は泣き崩れた。今迄の訓練が脳裏を巡る。これで我々も一人前の兵士となるのだ! サクヤ訓練生は、フランカ軍曹、クレール教官と抱き合い咽び泣いている。大中小トリオも、ボンスト教官らと喜びあっている。彼らとは同じ隊で絆を深め、以前の諍いがあったなど嘘のようだ。


 「ヴィニー訓練生、ロイド訓練生、バート訓練生。いや、もう訓練生ではないな……。我々は新兵だったな。君たち同じ隊であったことを誇りに思う。いままでありがとう! これからもよろしく頼む!」


 「ああ、俺達も同じ気持だ。ダンジョンで会うこともあるだろう。これからもよろしく頼む!」


 「マヒロ、新兵ってなんのことだ?」


 なんと晴々しい気持ちだろう。我々はやり遂げたのだ! これから先はどんな辛いことがあってもこの訓練を思い出せば乗りきれないことは無いだろう。この素晴らしい訓練を指導して頂いたフランカ軍曹にお礼を言わなければ。


 「フランカ軍曹! ご指導ありがとう御座いました! これより我々は立派な海兵隊員として職務に励んでいきます!!」


 「ああ、マヒロもよくがんばったね。あたしも心を鬼にしてやってきた甲斐があったよ。この訓練であんたの実力は随分と上がったはずだ、これからは一端の冒険者としてがんばるんだよ。なにか困ったことがあったらすぐに言いな! それと、海兵隊員て何だい? あんたは冒険者だよ?」


 こうして我々は全ての訓練を乗り越え、ダンジョンを後にするのだった。


 翌日、魔物の解体方法等の座学を教え忘れていたとの事で、呼びだされた我々は冒険者ギルドの1室で座学の補修を受けるのである。

お読み頂きありがとうございます!次回より訓練に毒されていた主人公は正常に戻ります!

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