27話 トラウマを乗り越え
第27話です。よろしくお願いします!
「さあ、どうぞ一思いに!」
遭遇したゴブリン三匹を鎧袖一触である。現在も、サクヤに瀕死のゴブリンを残してもらってから止めを刺させてもらっている。弱らせた獲物で子供に狩りを教えるシャチのごとし。昏倒して地面に寝転がっているゴブリンにぐいっといく。
「だいぶ慣れてきた様に思うよ。そろそろ一人で相手をしてみようかな」
「それでは、次に遭遇したゴブリンでお力をお試しくださいませ!」
うちのサクヤはスパルタなのである。うまく出来るかわからないが、サクヤがフォローしてくれるとの事なのでなんとかなるだろう。
通路を進んでいると、先ほどから他の冒険者とすれ違うが、特にお互い声をかけたりすることなく一定距離を保ってすれ違うようにしている。
ダンジョンの中では何が起こるか分からないし、いきなり襲われたら堪ったものではないので、お互い警戒しながらって感じだ。
ちなみに、先程から倒しているゴブリンの死体は、放っておくとなんとズブズブと地中に飲み込まれていった。流石不思議空間である。
「ご主人様! 来ます! 2匹です!」
「了解! 一人でやってみるから、危なくなったら頼む!」
先行させてもらう。うん、落ち着いている。何度か目の前で戦いを見ていたし、止めを刺し続けた甲斐があったかもしれない。
コブリンが走りだす前に此方から走りだす! 槍の届く距離、ステップを細かく踏んで左足を踏み込む。勢いそのままに、右脇を引き締め、真っ直ぐ顔のど真ん中を突く!
ごがっと音がして頭を吹き飛ばすように貫通、すぐ引き戻す! 槍を上に返して、右手を上に持ち直しそのままもう1匹のゴブリンに向かって上方から振りかぶる。
穂先は肩から胸までざっくりと切り込まれている。2匹とも倒れ動かなくなった。
フッと息が抜ける。無呼吸だったようだ。初の単独戦闘にしては上出来だろうか。俺はトラウマを乗り越え、前に進んだのだ!
「お見事でございますっ! 流石ご主人様! 流れるような体捌き!」
サクヤからお褒めの言葉を頂いた。褒めすぎなような気がするが、サクヤは飴と鞭を使う魔性の女なのだ。
「なんとかって感じかな。槍の使い方を体に覚えさせないとね」
「ご主人様ならば、すぐにスキルを習得出来てしまいますよ! 先ほどの槍捌きは才能が垣間見えておりました! 流石ご主人様ですっ!」
あれ? 俺って才能あるのかな? なんて思えてきたよ。この調子でがんばろう! 体に何か入ってくる感覚。また魂の階位が上がったのだろう。
「もう少し倒したら、今日のところは帰ろうか。無理しても良くないしね」
「はい! また素晴らしい槍捌きを期待しておりますっ!」
その後も、ダンジョンをウロウロしてお互いケガをしないようゴブリンを狩っていき、お腹もすいてきたし、出口まで戻るのも面倒だったのでそのまま転移で帰ることにした。
宿の部屋に戻り、一つ気になったことをサクヤに聞いてみた。
「魔石って結局どうやって手に入れるの?」
「はっ!? 申し訳ございません! 魔物の体内にありますので、倒したら解体し魔石や素材を回収するのですが……、うっかり忘れておりました……私としたことが……」
犬耳がぺたん、尻尾もしょぼんとなっているサクヤも素敵ですね。しかし体内にあるって、解体とか簡単にできるのだろうか?
サクヤに聞いてみたらやったこと無いらしいけど、どうするつもりだったの?
「そのへんは、ざっくり解体していけばそのうち回収出来るかと思いまして」
魔物をミンチにでもするつもりだったのだろうか? サクヤ恐ろしい娘! そんなスプラッターなサクヤは見たくないので、だれか教えてくれる人を探したほうがいいかもな。
♢♦♢
絶賛、筋肉痛だ。翌日、宿で目をさますと、俺の体は未だかつて経験したことのないほどの筋肉痛の様な痛みに襲われていた。
サクヤによれば、初めて階位を上げる時になるらしく、魂の成長してる証拠だと。一回なってしまえばもうならないと言われているらしい。成長痛みたいなものなのかね。
甲斐甲斐しくサクヤが看病してくれている。ふと、思ったのだが、当たり前の様に同じ部屋に寝泊まりしているけど、サクヤ的にどうなのだろうか? 俺的にも最近のサクヤは体も健康体に戻ってきていて、とても魅力的なのだ。
とてもどころか物凄くだ。俺のほうがヤバイかもしれないな。
「サクヤ、あまり男女で同じ部屋っていうのはまずくなかろうか? 今までは看病が必要だったしそのままで来てしまってるけど、もう体も回復しているならこのままっていうのも」
「そんな!? 私の事がお気に召さなかったでしょうか? 仰って頂ければすぐに直しますのでっ!」
食い気味の反応。いやいや、違うからね? そういう話ではなくて貞操的な話ですよ? 取り乱すサクヤを宥めて部屋を分けようかと提案するも
「私は、ご主人様のお世話をさせていただくのでお傍を離れる訳にはゆきません! このままでお願いします!」
まぁ、いいかと、肯定のお返事を返すと嬉しそうに「私がしっかりお世話しますからね」と満足気。サクヤがいいなら良いだろう。
それはそうと、ダンジョンについて教えてくれる人を探さないとな。できれば槍も教えてくれればなお良しだな。
「魔物の解体とか戦い方を教えてくれる人を探そうと思ってるんだけど、何か心当たりない?」
「教えてくれる人でございますか……、それならば、ギルドに依頼として出してみるというのはどうでしょうか?」
「おぉ! その手があったな! サクヤは賢いな! それに美人だ!」
サクヤの案を採用だな。この筋肉痛が治ったらギルドで依頼してみるか。褒められたら嬉しそうに尻尾を振りまくるサクヤまじチョロイン。悪い男にだまされないか心配になるぜ。あ、痛いので照れ隠しに叩くのやめて欲しいです。
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