20話 武具創生っ!
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「もぅっ! お戯れもほどほどにして下さい!」
プンプンとサクヤはお怒りだ。ただブラジャーを紳士的に一緒に通販しようと思っただけなのに。やましい気持ちはなかったんだよ? 取り敢えず、目についた下着のセットは何点かポチっておきました。
おっと、当初の目的を忘れるところだった。刀は日本刀で間違いないのか、サクヤに確認しておこう。
「サクヤ、これ見て?」
「またいやらしい物をお見せになるつもりでございますか?」
いや、ちがうから、そんな冷ややかな目で人を見てはいけませんよ? 恐る恐る画面を覗き込むサクヤ。
「なんて綺麗な……、こんな素晴らしい刀が此方の世界にはあるのですね。なんと素晴らしい……」
問題なさそうだな。これでいってみるか。果たしてどうやったら武具創生できるのだろうか? 画像を頭に焼き付け、あぐらをかきながら、うん! やら、ぬん! やら唸ってみるも何も起こらず。あれれ? 欠陥品なのかな?
「ご主人様。スキルを使うときは、声に出すとイメージが明確になり発動が補正せれ、成功しやすくなると言われています」
心配そうに見守っていてくれたサクヤからのアドバイス。声にだすの恥ずかしいよね。右手が疼きだしてしまいそうだぜ。しかし、ここはサクヤの期待に答えるためにも恥を忍んでやってみよう。開け俺の第三の目よ! イメージしろ! 岩をも断ち切る刃を!
「武具創生っ!」
体の中から、ごばっ音がした! 何かが大量に吸い上げられ手掌から外へ流れていく! まずいっ、何がまずいのかわからないが! 脳が危険信号をビンビンと送ってくる! 両の手から光が溢れだす! 思わず手掌を上に向け胸の前に掲げる。光が辺りを覆い、両の手掌に重みを感じたと思えば、光が収束し消えてゆく。
「おぉ、焦った……なんだ……こ……れ……」
体が言うことを聞かなくなり、目が重い。ブツリと電源を落とされたように意識が途絶えた。
♢♦♢
「……さま……ご主……! ご主……様……! ご主人様!」
うぉっ! 何だ!? 目の前にサクヤの顔があってびっくり! なんで寝てるんだ? 体を起こす。
「あぁ、良かった、お目覚めになってくださって。お体はどうですか? 痛いところなど御座いませんか?」
「ああ、ごめん、なにが起こった? 俺、意識失ってたの?」
「はい、ご主人様が叫んだと思ったら、光が部屋を覆い尽くして目も開けられぬ程でした。光が収まってみればご主人様が刀をお持ちになってがっくりとうなだれていたので、横にさせていただきました」
そうか、気絶していたのか。1度だけ貧血で倒れたことがあったが、同じような感じだったな。
「おそらく魔力を使いすぎてしまったのでしょう。それにしても、すぐお目覚めになられてよかった。何か他の事情で気絶されてしまっていたら、私では何もできないので」
涙の跡が見える。随分と心配かけてしまったようだ。どれくらい寝ていたのか確認すると30分位気絶していたみたいだ。
それにしても焦ったな。なにやら、魔力を使い過ぎると意識が朦朧として、枯渇してしまうと気絶してしまうそうな。武具創生で魔力を使い果たしたみたいだ。
「ごめんごめん。もう大丈夫だよ。体はなんともないし、意識もしっかりしてる。それよりも刀は?」
「それよりも、では御座いません! お体をご自愛下さいませ!」
プリプリと怒りながら刀を寄越してくれる。
鞘は漆黒、金色の桜の花弁が散りばめられ、下緒も金色。鍔は丸型、此方にも桜の花弁が。柄は漆黒の目貫から黄金の輝きが漏れている。刃を抜く。波紋は丁子乱刃、刃渡り70cmくらいだろうか? 剣呑な銀の輝きを放っている。
凡そイメージ通りに出来たみたいだな。切れ味はわからないけれども。一体材質はなにでできているんだろうか。無から有を生み出す。質量保存の法則は何処へ行ってしまったのか。
「なんとかできたみたいだね。取り敢えずこの刀を使ってよ。切れ味はどうか分からないけど」
「このような素晴らしい刀を、私のような未熟者が使ってもよろしいのでしょうか?」
「サクヤのために作ったんだし、サクヤもお伽話の冒険者の様な冒険をこれからするんだから、良い武器は持っておかないと」
そう。サクヤもこれから人生を再建できるのだから、昔、思い描いた夢をもう一度。俺に出来ることは手伝ってあげるからね。それにおれも冒険者ってやつをやってみたいしな!
「ご主人様……、なんと申し上げればよろしいのか、言葉も出てきません。ただ、今までの辛いことが全て、貴方様に巡り逢うためにあったのだと言われても私は納得してしまいそうです」
サクヤは、瞳に涙をためてゆっくりと言葉を吐き出し、恭しく刀を受け取る。大げさだけれども、喜んでくれているなら嬉しいよ。
あぁ、そうか。人生で人の為になにかしたか? と言われたら優しくしてきたとか、曖昧なことばかりで、俺も、俺がそう接してきた人にも、これといって具体的な記憶は共有されて無いだろう。
けれど、これは違うんだ。確実に今サクヤを想っているし、サクヤも想ってくれている。この想いがお互いの心に焼き付いて、信頼につながって、簡単に壊れない関係になっていくんだな。
なんだ。俺はいままでちゃんと人と付き合ってなかったのか。本音で話してぶつかるのが面倒くさい、回りに合わせて適当に、一人の方が楽だとか、そりゃ楽な方向はダメになるよな。水は低きに流れる、人は易きに流れる。っていうもんな。低い方に流れていってしまっていたんだ。
人の中に自分を映す、確かに労力がいることだろう。だけど、なかなかに気持ち良い事ではないか。
「サクヤ、ありがとう」
「……? お礼を言うのは私の方でございます。これより先は、ご主人様に仇なす者は全て叩き切ると、この刀にお誓い致します」
お、おう……、随分と物騒な誓いだね。叩き切らないでまずは対話からはじめようか? 刀を抱きしめて、喜びに咽び泣いているサクヤの頭をグリグリとなでて和ます。よく泣く娘だね。
「もぅっ! 子供扱いしないでくださいませ!」
泣いたカラスがってやつだ。笑顔で怒っても怖くないからね。
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