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2話 完全なる異世界だ

第2話です。よろしくお願いします。

朝比奈真尋こと俺は、異世界と思われるところに来ていた。


 まだ異世界かどうかは確定ではないのだが、希望的観測から異世界で在ってほしい。


 トラック衝突スローモーションから意識を回復させてあたりを見渡してみれば、外灯など無いのだが、月明かりのおかげで中々に明るい。と言うか、月が3つあるんだよね。これ重力とかどうなってるんだろう。


 まあ、特に体に異変は無いし問題ないか。月が、月らしきものが3つあるということで異世界確定でいいよね? とりあえず辺りを探索してみるが、やはり立ち並ぶ家々が明らかに中世ヨーロピアンな趣。まあネットとかでしか見たこと無いんだけども。


 「これどうしよう、治安とか大丈夫なのかな? 地球時間で深夜2時すぎだったけどこっちも同じなのか? 結構怖いな……。お金なんかも全然もってきて無いんだが……、どうにもなんないよな〜」


 心細くて思わずひとりごちる。いや本当にどうするか。冷静になって考えると小説のや物語の主人公達はすごいな。いきなり異世界らしきところに転移しても動じないで行動起こせるとか、なんて行動力なのだろうか。


 いや、俺もせっかく異世界デビューしたのだ。ここで行動せねばいつ行動すると言うのだ。よし! 頑張ろう! さて、とりあえず町の中みたいだから落ち着いて大きな通りを探そう。本当にいきなり草原パターンとか、森パターンじゃなくてよかったよ。


 あれ? そう考えたら俺にはお約束チートあるのかな? 神様的なのには出会ってないから無いのかな? まあ無いんだろうけども。なんか魔力的なのがあふれてくる〜とかそんなかんじも全然しないしな。


 体調も普段と全然変わらないし、現代知識がチートパターンかな。まだこの世界の文明レベルがわからないからなんとも言えないが、周りの建築様式からして中世くらいでお願いしたいところだ。


 裏通りらしきところを抜けて、少し大きめの通りに出たはいいが……人がぜんぜん見当たらない。いきなりその辺のお宅を訪問するのもまずいだろうしな……宿に泊まろうにもどこにあるかもわからないし、見つけられたとしてもお金などもない。なかなか詰んでるな。


 せっかく異世界に来たのに全然盛り上がってこない! なんてことだ! どうしよう……。


 「なんでこっちでお金になりそうなもの持ってきてないんだ俺! あぁ〜本当にどうしようか……、とりあえず一旦家に帰れればな」


 思わずひとりごちた瞬間、体の中からスッと何かが出て行くような感覚がして、目の前の景色が歪む。


 「へ? これどうなってんの?」


 気づいたら見慣れた自分の部屋だった。


 「え? これで俺の異世界デビュー終了!? え〜何がどうなったんだ! まじでなにがどうなの! ほんとなんだったんだ……」

 

 なにが起きたのかさっぱりわからず叫んでしまった。家に一旦帰れればと思ったら自分の部屋だったとか、どうしてこなった。もしかして夢でもみたのか? 


 あんなリアルな夢あるのだろうか。とにかく戻ってきてしまったものは仕方ない。いろいろ言いたいことはあるがやることは一つ!


「ホント初めから最後まで全然意味がわかんなかったな! なんだんだよ! 弄びやがって! 寝よっ!ふて寝だよっ!チクショー」



♢♦♢



「知ってる天井だ」


 取り敢えず言ってみた。どうやらまだ昨夜の興奮が覚めてないみたいだ。朝起きたらまた異世界にいたとか期待していたがそうはいかなかったらしい。夢でも見ていたかのようだが、まあ夢なら夢でまた行けたらいいな。


 異世界はあったんだ! またいつか行けるはずさ! と自分を奮い起こす。枕元においてあったスマホを確認すると10時前だった。


「取り敢えず何か食べるか」


 カップラーメンを食べながら昨夜のことを考える。なぜ一瞬だけ異世界転移できたのか。神様的なものがトラックに轢かれそうな俺を助けてくれたとか? ないな。そんな高尚な生き方をしてきてない。神様もそこまで人が良くないだろう。人じゃないか。


 とにかく1度行けたならまた行けるかもしれない。転移した時を思い出す。駄目だ。なにがきっかけだったのかわからない。当たり前か。突拍子もなさすぎる。ふぅ〜とため息を吐き首を振る。箸も進まない。


「ホントにつかの間の夢だった。あのまま残っていれば現代知識でチートできたのに……」


 目をつぶり、昨夜の光景の脳裏に巡らす。初めて自分の目で見た中世ヨーロッパ風な町並み、外灯のない街並みを照らす3つの月。目を開いた時に、飛び込んできた見知らぬ風景を強く思い出しながら、何気なく呟く。


 「なんとか、また転移できないかな」


 昨夜と同じ様な感覚がして、目の前が歪む。気づいたら昨夜の裏路地らしきところにカップラーメン片手に座っていた。


 「うおぉっ! なんだ! ここは……昨日の路地か? まさか……、戻ってこれた?」


 これは、あれなのか!? もしかしたら自由に行き来できるとか? それならば……とんでもないことになる。俺は……、行き詰った人生を立て直せるのでは……? おぉ神よ……! いるのかわかりませんがなんて幸運を! もしいるなら感謝を! 


 慌てて立ち上がる。カップラーメン片手持っていたことすらも忘れていた。スープが溢れるが気にしない。まずは、人と接触しなければ! 昨夜と違って日が高い。これなら誰かしらいるだろう。俺は昨夜向かった少し大きな通りに向かって歩き出した。


 昨夜とは変わって人の生活する音がいたるところから聞こえてくる。地球では冬まっただ中だがこちらはそこまで寒くない。四季などあるのだろうか。そんなことは今はどうでもいいか。


 もう少しで通りに出るというところで、ついに見つけた! 人だ! 言葉は通じるのだろうか? 取り敢えず積極的に話しかけてみよう! 


 「こんにちは、言葉通じてますかね?」


 「おや? なんだいあんた! 変わった服着てるね? 異国から来た冒険者かい?」  


 これ通じてるのかな? 取り敢えず返事をくれたから通じてるっぽいな。服装は家着のスウェットだ。この世界の人からしたら変ななのだろうか? 茶髪の見た目40歳代くらいの人の良さそうなおばちゃんだ。萌黄色した足首まであるワンピースみたいなのを着ている。


 買い物でもしてきたのだろうか手に麻袋みたいなものを持っている。と言うか、すごいワードが出てきたぞ! 冒険者か。やはりあるのだろうか。


 「そうなんですよ。ちょっと遠くの国から来た冒険者でマヒロと言います。昨夜ついたばかりでこの辺に疎くて。この町ってなんて呼ばれてるかわかります?」


 しれっと冒険者宣言しておく。


 「やっぱりそうかい! 見慣れない格好だからそうだと思ったんだよ! あたしの旦那が昔冒険者やっててね、遠い国から流れてきた冒険者が変な格好してたって聞いたことがあってね、そうじゃないかと思ったんだよ。それでね……」


 全然質問の答えが帰ってこない。町の名前聞いたハズが何故か旦那さんとの馴れ初めの話なっている。地球でも異世界でもおばちゃんはよく喋るのか。このままでは生誕まで遡ってしまうかもしれない。


 「あ、あの……買い物か何かの途中でした? あまり長く話してると買いそびれちゃうかもですよ」


 「ああ、そうだったね。それでなんだったかい? 町の名前だったかい? この町はね、ピエタっていうんだよ!」


 なるほど、ピエタか。まったく聞いたことがないな。取り敢えず、通りにでて再度情報を集めよう。おばちゃん話長かったな。暇乞いをして通りに向かう。


 

 感動した。声も出ない。紛うことなき異世界だ。


 

 通りに出た俺の目に飛び込んで来たのは、頭に犬の様な耳がある人、鈍色の鎧や剣を背負っている人、カラフルな髪、まさにファンタジーな人々が行き交っていた。もう間違いないだろう、完全なる異世界だ。あまりの感動にそのまましばらく通りを眺めていた。

お読み頂きありがとうございますっ!

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