19話 女性の買い物は長い
第19話です。よろしくお願いします!
「これはどうでしょうか?」
女性は物を選ぶときの情報量が多いそうだ。ブランド、色、品質、デザイン、人気、等。更には、商品を選ぶ過程を楽しむのだとか。それを自分で使用した時にどうなるのかを、あれやこれや想像して楽しみながら選ぶらしい。
男性なら俺と同じように、予め買うものを決める、選ぶ、お会計、といったスリーステップで終わる同志諸君が多いのではと思うのだが。他にも色々と理由はあるそうだが、女性の買い物は長いということだ。
「さっきのもいいけど、それも似合うんじゃない?」
先ほどからの、これどうでしょう? に無難に対応しておく。欲しいものは全部買ったら? などとは言ってはいけない。良い物を自らの手で探し出した! という満足感も、女性が買い物に求める要素の1つなのだから。
「ご主人様? 先程から同じお返事ばかりで全然決まらなくて困ってしまいます。せっかく買って頂くのですから、お気に召したものをお教え下さい!」
おっと、それも似合うんじゃない? と返答するマシーンになっていたようだ。もう結構な時間こうしてるからな。本腰を入れて買い物を終わらせに行こうか。
「あれ? これ何?」
「あっ、ダメですご主人様っ! それは……」
サクヤが気に入った服の中山から1枚手に取ると、うろたえたサクヤがすっ飛んできた。どうしたの? あぁ、下着だったのね。サクヤが顔を赤くしながら下着を引っ掴んで回収する。
「もぅっ! 恥ずかしいのでこんなもの手にとらないでくださいませ!」
そんなに恥ずかしがらなくても大丈夫だよ。なんといっても此方の下着はドロワーズというやつで、全く俺の琴線に触れないからね。全然そそられない。
どうやらブラジャーもないらしく、布を巻くだけだとか。形くずれるよ? ここは私が、紳士的にサクヤの下着を日本で買っておいてあげようではないか。せっかく良いスタイルしてるんだからね。
結局、サクヤの選んだ服の中から、外套や、厚手のワンピースやら、シャツやら、丈夫なパンツやら、ポンチョやら、ブーツやらを、20着と2足ほど購入した。トータル金貨4枚とちょいだった。この世界の服は魔物の素材を使っていたりすると非常に丈夫で長持ちするそうだ。その分お値段も上がるらしい。
「申し訳ございません……。買い物など随分と久しぶりだったもので……」
「気にしなくていいよ、仕事で大分懐に余裕ができたからね」
「うぅ……、私は何もご主人様のお役に立っていないのに、散財させてしまうだなんて。私にも何かできる事があればいいのですが」
結局、夕方まで掛かってしまった。宿に戻り項垂れているサクヤを慰める。いやいや、出来る事も何も、そもそも護衛してもらうつもりだったんだよね。 確か武器スキルをもってるとか聞いた覚えがあるよ?
「はい。私は刀剣術という、ビゼンノ国伝統の武器のスキルを持っています。あまり一般的な武器ではないので、ビゼンノ国以外では手に入れにくいと思うのですが……」
あれかな? 刀かな? 刀剣術と言うのは、ビゼンノ国の建国の祖が持ち込んだ日本刀のスキルのようだ。俺と同じ日本からこっちに来たようだな。刀使えるなんて格好良すぎる。サクヤにスキルを聞くと、
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名前:サクヤ・テンロウ 種族:天狼族
スキル
刀剣術(3)
ユニークスキル
隷属:マヒロ・アサヒナ
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サクヤは天狼族と言う、ビゼンノ国の建国から、国の要職に名を連ねる高位貴族だったそうだ。耳は犬耳じゃなくて狼耳だったのね。
父親が、国の近衛師団の団長を努めており、サクヤも幼い頃は武術を教わっていたと。幼い頃、サクヤを可愛がってくれていた祖父が、冒険者が活躍するお伽話を読んでくれていたそうで、それに憧れいつかは冒険者になってダンジョンを攻略したりと、そんな夢を持つ少女だったらしい。
それがある日、第1王子の目に止まり、拒否をしたものの、王子の婚約者候補になってしまい、それからは刀に触れない日々だったそうな。この美貌だもの、さもありなん。
そして、国の内乱からの出奔、奴隷落ちである。中々にハードな話だ。俺の想像していた奴隷と違ったのは、お嬢様だったからなのかもね。いつかビゼンノ国もいってみないとな。
「いつか、ビゼンノ国に行こう。俺も、同じ世界から来たかも知れない人に興味あるしね」
「はい。ご主人様。私は、何処までもお伴させて頂きます」
当初の目的に戻すが、サクヤに護衛のための武器を何か持たせたほうがいいよな。本人は、刀じゃなくても剣であれば多少は使えると言っていたが、刀と剣ではかなり違いが出るのではないだろうか?
ビゼンノ国以外では、刀は手に入りにくいと言っていたしな。ここは買うより作ってしまった方がいいだろう。ユニークスキル、武具創生の出番だな。チート万歳だ。
「よし! サクヤ! おれが武器を作るよ。初めてスキル使うから、うまくいくかはわからないけど、なんとかやってみる」
「ご主人様に作って頂けるのでございますか!? 私は、なんという果報者なのでしょう」
胸の前で手を組み、キラキラお目目で尻尾がちぎれんばかりに振られてる。なんというプレッシャー。できるかわかんないからあんまり期待しないでね?
スキルの使い方がわからないので、取り敢えず床に座りあぐらをかく。さて、どうしたもんだろう。スキルの解説には、想像した武具をとあったが……取り敢えず刀を想像してみるか。
……刀、駄目だ! 現物も見たこと無いしな。全然想像ができない。現物……、こんな時のインターネットじゃないか! 画像でも見てイメージを明確にしよう。サクヤをつれて、早速転移だ!
ふむふむ、PCを立ち上げ、検索でこの刀を参考にするか、長さは二尺五寸八分ってよくわからんな、80cm位でいいだろ。刀の情報を頭に入れて画像を脳裏に焼き付ける。
……ふう、時計を見るとPM8時前だ、全然できる気配がない。俺のスキルは欠陥品なのかな? 取り敢えず腹減ったから夕食にでもするか。そういえば、今日は昼食を食べてなかったな。なんか材料あったかな?
冷蔵庫を見てみるが何もない。コンビニでいいか。サクヤに何か食べたいものあるかと聞いたが、ご主人様に頂くものはなんでも美味しいからなんでもいいって、なんて良い娘。もはや、女の子座りでテレビに夢中である。
コンビニで多めにいろいろ買ってきた。シソーラスにもしものために食べ物はいれておいたほうがいいだろうからな。サクヤの下着も買ってあげたいけど店舗に俺が買いに行くのはヤバイから、ネットで頼んでおくか。
サイズはわからないから、各種大きめのサイズまでを頼んで、体に会うものを着てもらえばいいだろう。
ご飯を食べて、一息、サクヤには紅茶を入れてあげた。俺はコーヒーのほうが好きなのでコーヒーだ。一緒にPCで下着でも選ぶか。
「サクヤ、これ見て? どれがいい?」
「これって……え? ちょ、ちょっと……ご主人様!?」
ボンッ音がするんじゃないかというくらいに一瞬で顔が赤くなった! 肌が白いからよく分かるね!
「映像のアーティファクトで女性の胸を見ていらっしゃるなんて、ご主人様は発情されていらっしゃるのですか?」
なんて失礼な! 私は紳士ですよ! 良かれと思ったのだが。
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