12話 ジャパニーズサムライみたいな娘
第12話です。よろしくお願いします! ※誤字脱字・改行修正しました。コショウの数を変更しました
自分の部屋に戻ってきた俺は、パソコンを立ち上げ、治療に役立ちそうな情報を調べ、すぐさま薬局やコンビニに走り、必要な物を買い込んだ。
うん。ネット最強だな。薬局もギリギリ開いている時間だったのでなんとか、思いつくものを全て買うことができた。本当は、病院に連れて行ってあげたいのだが、一緒に転移はできるのだろうか?
いや、犬耳に尻尾がついてる美少女なんか連れ込んだら事案発生だ。大問題になる。絶対コスプレじゃ押しきれない。
異世界に戻り、彼女の容態を確認する。多分間違いないと思うのだが。おそらく彼女は壊血病の症状が出てるのだと思う。中世ヨーロッパの船乗りに猛威をふるったあの有名な病気だ。
当時も、同じ船の乗っている船員でも疾患する者しない者がいたために、謎の病と言われていたらしい。単純に、ビタミンCのある食材を食べているか食べてないかの違いだったのだが。
詳しい病状は医者に任せるとして、まずは、経口補給液をのませる。寝ている彼女を抱きかかえ、少しずつ口の中へ流し込む。どうやら壊血病だけではなく、体自体が大分弱ってしまっているようだ。この状態だと固形物を食べたりは無理そうだ。がんばって飲んでくれよ。
「貴方様は…………」
とても弱々しく、今にも消えてしまいそうな声だ。弱っている美少女。犬耳もペタンと倒れてしまっている。あぁ……、もふもふしたい…………いかんいかん! 今はそれどころじゃない!
「今は、何も気にしないでいいから。辛いかもしれないけど、頑張ってこれを飲んで」
彼女は目を閉じ、こくりと頷いた。よし、なんとか水分は取れるようだな。現代日本にはあらゆる栄養素がお店で売られているのだ。現代日本の力を見るがいい! もふもふしたい。
その後も少しづつ様子を見ながら、もふもふしたい欲求と戦いながら彼女を看病する。俺……彼女が元気になったら……全力でもふもふさせてもらうんだ!
♢♦♢
数日の間、毎日朝から晩まで彼女を看病している。ロランさんに状況を伝えると、仕事の話は落ち着いてからで構わないとのお言葉を頂きました。彼女はようやく意識がはっきりして、少し会話ができるようになってきた。
「体調はどう?」
「はい、楽になってまいりました。あの……貴方様が私を、御召し上げになったのでしょうか……?」
「そうだね……」
おぉぅ……、なんか気まずい……。悪いことはしてないはずなのだが、何故か後ろめたくなってくる。こんな時は……取り敢えず自己紹介とかしとくか。
「俺はアサヒナマヒロっていうんだけど、あぁ、マヒロって呼んで。君は? 実は名前もわかってなくて」
「えっ……と……? 私は、サクヤと申します」
「サクヤさんね。了解。それでの事情を説明するとね……」
海の呪い(壊血病)の治療をしている事等、説明をすると、サクヤはぼんやり覚えていたみたいで落ち着いて話を聞いてくれていた。
海の呪いが治ると説明するとすごく驚いていたが。いきなり暴れたりしないでくれてよかったよ。いきなり知らない男と2人きりとか怖いよね。
「そうでございますか。大変お世話をお掛けしてしまい、心苦しく思います。ご主人様……、私のことはどうぞサクヤと、お呼びくださいませ。ご主人様に命をお救い頂いたこの御恩、身命を賭してお返しいたします」
なにそれ、すごい重い。そんな固く考えなくてもいいよ。それにご主人様って。むず痒い。メイド喫茶すら行ったことのない俺にはレベルが高すぎる。言葉も崩して喋ってくれないと話しづらい。ジャパニーズサムライみたいな娘だな。
「そうでございますか。それでは失礼を致しまして、私のことをお買いになられた貴方様の事をご主人様とお呼びするのは当然でございます。それに、私はこれから奴隷として、ご主人様に全てを奉じるつもりでございますので」
サクヤの言葉は難しくてよく分からないので、日本人固有スキル曖昧に笑顔で頷くで対応しておく。
「まあ、取り敢えずサクヤさんには取り敢えず元気になってもらって、俺の護衛をしてもらいたいんだよ。ちゃんと賃金も出すようにして、そのうち解放するしからさ。あと、俺は事情があって、この大陸? の事とか常識に疎いところがあるから色々教えてくれると助かるんだよ」
「サクヤとお呼びくださいませ。ご主人様。私は、賃金など必要ありません。全てを失った身の上でございますので」
全てを失った身?奴隷になってしまったことを言っているのだろうか? 見惚れてしまいそうな笑顔なのに、悲しげに見える。なぜ奴隷になったのか聞いてみたかったのだが、まだ、ゆっくり休んでもらおう。
「う〜ん、取り敢えず、今は体をしっかりやすめてくれ。俺は少し出てくるから、部屋の物は好きに使っていいから。水分をこまめに補給するようにしてね。飲み物はこれをのんで」
「かしこまりました。お気をつけて行ってらして下さい」
まだまだ全快には程遠いだろうからな。家から持ってきたペットボトルを渡し、部屋を出る。ロランさんに一刻もはやく借金を返すべく仕入れてこなければ。
それと、金貨を日本で換金してみようと思ってたのだ。此方のもので、日本で売れそうなものは無いかと考えていたのだが、手っ取り早く金貨を換金してみることにした。
部屋から出て、転移を発動、一瞬で自分の部屋だ。さあ、人類の叡智、インターネットにアクセスして、換金できるとこを探してみよう!
家に戻り、ネットで金の買い取りをやっているとこを調べ、何軒か回った所、金貨1枚14万円位で買い取ってくれた。
何軒か回ったのは、買い取ってくれないお店も有ったからだ。中には、アンティークコインとしての価値があるかもしれないから、アンティークコインを扱ってる店に持ってくことを勧められたりもした。
異世界の金貨に、地球の歴史上の価値もないだろうし、いろいろ聞かれても答えられないので、純粋に金の買い取りをしてくれる所で換金してきた。最終的には、個人でやっている質屋で2枚ほど売り払ってきた。
俺はあまり貯金ができていなかった。捨てられた彼女にお金を使っていたのもあったし、なにせ5年間引きこもったのだ。母が残していた貯金なども少しあったのだが、残金わずかだったので金貨が換金できるのは助かった。これで、こちらで物を買い込むことができる。
取り敢えず、スーパーを巡りコショウを30本ほど買い込む。あちこち走り待って疲れる。車がほしいな。免許はあるんだが、車がない。そのうち必要になるだろうから、お金が溜まったら是非購入したいものだ。
時間を確認すると、14時を過ぎた所だ。朝から動いていたのに、結構時間かかったな。コショウをもって異世界の宿に転移する。
「ご、ご主人……様……? いったい……、今のは……」
サクヤがいるの忘れてた……恐る恐る振り返ると、ベッドで水分補給をしていたサクヤが、口を半開きにして呆然としていた。やっちまったぜ。でも、奴隷契約をしてるから、口止めすれば問題ないよね? それと、美人がそんな面白い顔してはいけませんよ?
「ああ……、これはね……、なんていうか、おれ異世界人なんだよ!」
うん。言い訳を考えるべく脳みそをフル回転させてみたが、どうにもできそうにないので、素直に言ってみた。普通はこんなこと言われても信じないよな。犬耳美少女から変人扱いされる事案の発生だな。
「それは……、真でございますか?」
おぉぅ……、怪訝な目で見つめられる。そうだよね、そんな目で見ちゃうよね。でも、犬耳美少女にそんな目で見つめられたら……うん。全然ご褒美じゃありませんでした。俺はその業界の人間ではないのだ。
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