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11話 勢いで奴隷を買ってしまった

第11話です。よろしくお願いします。 ※誤字修正しました。改行、コショウの数を変更致しました。

 「此方のマヒロさんが、是非彼女を連れて帰りたいと言っておりましてね、お値段は金貨30枚でしたか? そこをを是非、金貨20枚でお願いしたい」


 ロランさんに交渉をお任せしたら、いきなりズバっと金貨10枚の大胆値引き交渉だった。


 「金貨20枚ですか。私共も、色々と経費がかかっておりますので、精一杯の値引きさせて頂いてのお値段でお話させていただいております」


 「そうですよね。私も商人の端くれなので、もちろんヴァレリーさんの苦労はお察しします。ただ、先ほど、教育が済んでないとおっしゃっていたので、それを考慮すると金貨20枚くらいが妥当ではないかと思いましてね」


 「そうでございますが、やはりあの器量でございますので」


 「なるほど。やはりあれだけの器量良しとなると値も下げづらいですよね」


 「さようでございます。ですので……」


 「ヴァレリーさん。売り時というものがあることはご存知かと思います。例えば、果実などは熟しているものが食べごろとして最も値段が高い。早すぎても遅すぎても値段は落ちてしまいます。人の売り買いでもまた同様かと」


 「今が売り時と、おっしゃっているのでしょうか?」


 「ええ。その通りです。ヴァレリーさんは、教育という形で奴隷を熟させ、一番いい時に売る。流石1流の奴隷商人です。


 ただ、彼女に関して言えば、これ以上時間をかけてしまいますと、先ほどヴァレリーさんがおっしゃった器量が、海の呪いにより崩れていきますよね? 


 これはすなわち、唯一の商品価値が落ちることになる。今日よりも明日、明日よりも明後日と、日が進むごとに落ちていきます。


 ところが今現在、確実に、明日には値が落ちる商品を買いたいと言う客がいるのです。ならば、買い手がつかず、金貨20枚を下回り、さらには、ただ無駄に死を待つだけになってしまうかもしれない。

 

 そんな不安定な未来に賭けるより、今現時点で確実に売り払ってしまって、利益を確定し、損切りをしてしまったほうが賢い選択ではありませんか?」


 「…………、なるほど。たしかにそうでございますな。金貨20枚でお売りいたしましょう」


 おお! 本当に金貨10枚も値切った。値切れても金貨2〜3枚くらいかと思ったけど、まさか金貨20枚を押し通すとは。なんだか話を聞いてたら、人の不安を煽るような悪徳商法みたいな値切り交渉だったな。


 「商談成立ですね。それでは金貨20枚確、お受取り下さい。私共も後の予定もありますから、手早く契約のほうをお願いします」


 ロランさんは立ち上がり、爽やかスマイルを浮かべ、ささっとヴァレリーに歩み寄ると、金貨を手渡す。なんて素早いんだ。相手に考える隙を与えないこの行動。ロランさんたらすごいできる商人なのではないだろうか。まじイケメン。


「は、はい…………、確かに金貨20枚でございますね。それでは契約師を呼んでまいりますので少々お待ちくださいませ」


 ヴァレリーさんが従業員の男に目配せすると、天幕の奥へ彼女以外の奴隷を連れて引っ込とすぐに、臙脂のローブを羽織い、杖を持った男が現れる。


 「それでは契約を行いますので、血を1滴お願いします」


 ローブの男からナイフを渡された。え? 血を1滴ってどうするの? よくわからないが、取り敢えず指先をチクッとしとく。ローブの男は彼女を此方へ連れて来て、貫頭衣の袖をぐいっとまくる。彼女の二の腕に、タトゥーのようなものがある。


 「此方へ血をお願いします」


 言われるがまま、タトゥーらしきものに指先を当て、血を付ける。


「ー□□ー□ーー□□ー」


 ローブの男が何やら、歌の様なリズムを呟くと、俺と彼女の体か朧気に光る。これはあれか! 魔法なのか! 前にロランさんがゴブリンの血を落としてくれた時と同じような光だ! 


 「無事契約できました。どうぞご確認下さい」


 なにを? 何を確認すればいいのかわからないので、取り敢えず曖昧にうなずいておく。


 「問題ないようでございますね。若君方、是非とも、またいらしてくださいませ」


 何が何だかよく分からないまま、彼女をつれて辞去する。


 「いやぁ、なんとか値切れてよかったですね。ちょっとむずかしいかと思っていたのですが」


 「いやいや、流石に金貨10枚は無茶だとおもいましたよ。それに金貨20枚も持ってたなんて驚きましたよ」


 「何かあったらと思い、多めに持っておいてよかったですよ」


 利に聡い商人だ。また借りを作ってしまったな。それにしても金貨20枚分のコショウとは、小数点切り上で、約29本か。


 「コショウなんですが、銀貨7枚でお売りするとしたら29本で問題無いですか?」


 「ええ、コショウ以外でも問題ありませんので、話し合いながら決めていきましょう」


 おぉぅ……、いきなりコショウ以外の物も含まれている。コショウしかなったらどうするつもりだったんだろう。それに俺が逃げたりとかするかもとは考えないのかな? 逃げたりはしないけれども。


 「了解です。一応売れそうな商品に心あたりがあるので、相談させてもらいます。金貨20枚、なるべく早く返済できるようにがんばりますね」


 「ゆっくりで構いませんよ。コショウの在庫はまだ有りますしね。これからも長い付き合いになりそうなので、のんびり行きましょう。それよりも彼女を早く休ませてあげましょう」


 彼女は意識が朦朧としてるのだろうか、俺に手を惹かれてふらふらと歩いている。今にも倒れてしまいそうだな。急いで連れて帰ってあげないと。宿に戻ってから彼女の治療をしよう。


 異世界に来て、早々、勢いで奴隷を買ってしまった。こんな勢い任せでいいのだろうか。自分のことながら心配になってきた。そういえば、夜のお店行けなかったな。また今度、お金が入ったらロランさんに連れて行ってもらうか。


 兎にも角にも、まずは彼女の治療に専念しよう! これで治りませんでしたじゃ冗談にもならないからな。


 宿の受付に相部屋に1人増えたことを伝え、2人部屋に移動させてもらう。追加料金を払い、ロランさんに暇乞いをし、彼女をつれ部屋に入る。今度は2階の角部屋だ。


 そーいえば、彼女の名前もわからないな。まあ、そのへんも全部治療終えてからでいいだろう!

 

 ひとまず彼女をベッドに寝かせ、俺は自分の部屋へ転移した。


お読み頂きありがとうございますっ!

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