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10話 彼女を買いたい

第10話です。よろしくお願いします。

 天幕に5人の男女が入ってくる。皆膝丈くらいの薄い貫頭衣を着ている。首には、奴隷の証の黒いチョーカーだ。


 「では、右端の女性からご説明させていただきます。この者は、歳は24、剣術スキル持ちでございまして、スキルレベルは2となってございます。きちんと教育を行ってございますので、伽の方もご満足いただけるかと。次の者は……」


 おお、スキルがまた来たな。剣術スキルか。そういえば、図書館で調べるの忘れてた。語感からするに、小説やゲームであるようなスキルなんだろうけど、レベルもあるのか。説明を聞いていると、皆剣術スキル、槍スキル、短剣スキルと、武器スキル持ちみたいだ。連れてこられた奴隷の中の2人は女性で、夜の方も承諾済みだとか。なかなかに美人さんだ。心が揺れる。


 「ご紹介致しました5人でございますが、皆、大変尽くす奴隷にございます。お値段でございますが、普段なら金貨80枚と申したいところなのですが、本日は月に3度しか無い市の日でございますので、金貨50枚でいかがでございましょうか?」


 いや、高すぎて手が出ないですよ。金貨50枚となると、日本円換算で500万だろ? 人の人生をそれで買えるのかと思うと、安いような気もするのだが、とてもではないが俺には手を出せそうにないな。


 「もう少し安い奴隷で、護衛に向きそうな奴隷はいませんか?」


 ロランさんは奴隷を買う気なのだろうか? 俺の今の全財産は、金貨4枚弱だ。どんなに安くなっても買えないだろう。


 「左様でございますか。護衛向きとなりますと、武器スキル持ち等になってきますので、そういった奴隷ですと、どうしても先ほど前後のお値段になってきてしまいます。それよりもお安い奴隷ですと、少々歳が行っている者や、体に負傷があったりなどいたしますが、ご覧になられますか?」


 「せっかくなので見せて頂きましょうか。ね? マヒロさん」


 いやいや、ね? と言われても、見ても買えないですし、見る意味あるのかな? まあ見る分にはタダだからな。ここまで来たら最後まで見てみるか。ロランさんを見てこくりと頷いた。


 「かしこまりました。連れてこさせますので、今しばらくお待ちくださませ。」


 ヴァレリーは、奴隷を引っ込める指示を出すと、一緒に天幕の裏に消える。それにしても、ロランさんは何を考えてるのだろうか? 

 

 「ロランさんは、奴隷を買うつもりなんですか?」

 

 「いえ、そのうち買おうかとも思っていますが、今日はマヒロさんが奴隷市は、初めてだったようなので、せっかくなので色々見てもらおうかと思いましてね。マヒロさんもそのうち入用になることもあるかと思いますので、見ておいて損はないかと思いましてね」


 ははは、と爽やかスマイル。なるほど、おれの社会見学させてくれていたのか。俺が奴隷を買う日は来るのかは分からないが、いろいろお世話してくれてありがたいな。


 「お待たせしました」


 ヴァレリーが天幕に戻ってきた。裏はどうなってるのだろうか? 先ほどの従業員らしき男に連れられて、3人の男女が天幕に入ってくる。


 連れてこられた3人の内、一番左にいる、犬耳の獣女性に、俺の目は釘付けになった。腰まで伸びる髪は、清々しく光っているような白銀色。サファイアの様な双眸、顔は非常に整っていて、優しさを感じさせる。足はスラっとしていて素晴らしいスタイルで、尻尾は髪の色と同じ色、フサフサとしている。肌は白磁のように美しく、もはや通り越して青白い。

 

 ん? 青白い? よく見るとものすごく具合が悪そうだ。体は震えているし、今にも倒れてしまいそうだ。よく見ると、顔もやつれている。眼の焦点もあっていない。


 「それでは、先ほどと同様に、右端の者からご説明させて頂きます。この者は……」


 獣人女性が気になり、全然説明が頭に入ってない。適当に相槌を打ち、説明を聞き流す。


 「最後にこの者なのですが、ご覧のとおり、見惚れるような美貌でございましょう。歳は17と若く、スキルに関しましても、刀術スキルが3と、護衛としの能力も十分でございましょう。ただ、先の2名同様に、問題がございます。もともと、この者は異国の者であったようで、ノーザンスト大陸に船で渡ってきたとのことでございまして、その際に、海の呪いをその身に受けてしまったようなのです。回復魔法でも回復は望めず、今はまだかろうじて歩けてございますが、もうしばらくすれば命を落としてしまうでしょう」

 

 海の呪い? 違うな。呪いなどあるはずがない。魔法があるから、あるのかもしれないが。それでも彼女の症状は断じて呪いなどでは無いだろう。


 「ヴェルレーさん、彼女は随分痩せているみたいですが、食事は取っていますか?」


 「それが、まったく取れていない状態でございまして。一日を朦朧と過ごしておりますので、教育なども全くできてない状態でございます」


 「彼女は値段はいくらですか?」


 単刀直入に尋ねる。できるなら今すぐにでも連れて帰って治療してあげたい。


 「この者ですと、余命幾ばくかと言いましてもこの美貌でございますので、金貨30枚でいかがでしょうか」


 くそ……、なんにしても高すぎて手が出せない。ロランさんに相談してみるか。


 「少し検討する時間をもらえませんか?」


 「かしこまりました。私は場を一度外させて頂きますので、ご検討が終わりましたら、こちらのベルをでお呼びくださいませ。それでは失礼致します」


 ヴァレリーは3人と従業員の男を連れて天幕の裏に引っ込む。さて、どうするか。ロランさんに借りるしか無いが、言い出しづらいな。


 「マヒロさん、先ほどの女性がお気に召したんですか?」


 「そうですね。彼女を買いたいと思いましたが、値段がね……」


 「海の呪いにかかっているのですよ? それでも買いたいと?」


 「ええ。あれは呪いなんかじゃありませんよ。俺なら彼女を救うことができるんです」


 「それは……本当なのですか? 海の呪いにかかったものを救うことができるとは……分かりました。こうしましょう。私が彼女の代金を支払ます。その分のコショウをまたお願いできませんか?」


 「え!? いいんですか? そんなことならでいいのなら、いくらでもお持ちします!」


 「ははは、それはまた豪気ですね。では商談成立ですね」


 「ありがとうございます! また面倒を見てもらってしまって、何度も申し訳ない」


 「何をおっしゃいます。困ったことがあれば言ってくださいと言ったではありませんか。私はあなたの友人なのですからね。ヴァレリーさんとの交渉は私に任せて下さい。多少は値引かせてみせますよ」


 爽やかスマイルのロランまじイケメン。よしっ! これでなんとかなりそうだな。ベルを鳴らすとすぐにヴァレリーが天幕に戻ってきた。


 「ご検討の程は、いかがでございましょうか?」


 「此方のマヒロさんが是非彼女を連れて帰りたいと言っておりましてね、お値段は金貨30枚でしたか? そこをを是非金貨20枚でお願いしたい」


お読み頂きありがとうございますっ!

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