1話 異世界に迷い込んだかもしれないっ!?
初投稿です。よろしくお願いします。
新しい年が来てはや一月が過ぎようとしている。
今年こそは、と思いながらも怠惰に過ごす日々。
おれは引きこもりってやつだ。
俺こと、朝比奈真尋は今年で30歳にもなろうというのに、今日も変わらず引きこもっている。家を出るのは夜中にコンビニに行くくらいなもんだ。
こんな生活がはや5年。なにをどう間違ってこうなってのか、何度目かもわからない自問自答の中にいる。本当はなんでこうなってしまったかなんてわかりきっているのに。
もともと俺は普通の見た目に、それなりの社交性があり、それなりの人生を送ってきた。
コミュ症で、対人恐怖症とかだったりしたわけではない。ちょっとオタクなだけで、自分に甘く、逃げぐせがあっただけだ。うん。こう考えると引きこもるべくして引きこもったような気がするな……
俺は昔なじみの先輩の会社で働いていたんだ。それなりに上手くやっていた。あいつが会社に来るまでは。
まあ話はよくある話で、よくあることだ。俺は昔なじみの先輩こと、社長に気に入られていたから何かと面倒を見てもらっていた。それが気に食わなかったのか、それとも上昇志向のあるやつだったのかもしれないが、なにを思ったのか、自分のミスや他人のミスをすべて俺にかぶせるようになってきたんだよ。
あれだよ意識高い系男子が、人をたたいて凹ましてから踏みやすいようにして、踏み台にして上に登ろうとしていただけなのかもしれない。意識高い系怖い。
それからというもの、会社では同僚の皆様の軽蔑するような視線を頂き、うわさ話で評判ガタ落ち、社長にまで「おいおい、最近変な報告入ってきてるけど、なにか私生活とかにでも問題でもあるのか?」と聞かれたから、とりあえず「大丈夫だ、問題ない」的なことを返しておいて、言い争うのも面倒くさいし、そのうちおさまるだろ〜とか考えて放置しておいた。
そしたら会社クビになりました。
ある日、社長に呼び出されたと思ったら、横領の疑いがかかってるって。なにが起こったか全然わからなかったので焦って例のセリフを口走りそうになったがなんとかこらえた。
意識高い系だとかなんだとかそんなチャチなもんではなかったらしい。あいつの仕業だった。そこで断固抗議しておけばよかったんだが、社長ならわかってくれるでしょ!
とか思ってたら、「俺とお前の仲だ。訴えたりはしないが退職してくれ。内々で処理しておく。その代わり、俺の前に二度と顔をだすな」と言われ、その日の内に追い出される始末。最後にあいつがひと声かけてくれたよ。「おつかれさん、まあいい駒だったよ」てね。
まあ、その後も収入の途絶えた俺は、当時付き合っていた彼女を親友に取られたりとか、その彼女もただ単に俺を銀行のATMくらいにしか思ってなかったとか中々に堪える展開の連続だった。
俺もATMも体温同じくらいだから間違ってもしかたないよね〜。と、まあこんな具合に俺の精神をゴリゴリ削っていくことが起これば、逃げたくもなる。そのまま実家に戻り、引きこもり中年の出来上がりだ。そしてつい最近母が亡くなった。
人生は上り坂だと言われた事があった。坂を登って行くのは大変だし、足を止めれば踏み出す次の一歩が重くなり、つまずいて転べば後ろに転がっていってしまう。ああ、なんて生きていくのは大変なのだろう。
「違う世界にでも行って、やり直さないとこのまま人生終わりだな」夜中のコンビニ帰りにふと呟く。最近お気に入りのネット小説でそんな話を見たのだ。異世界に迷い込んだ主人公が異世界で幸せになる。
俺も異世界で人生立て直したい。この世界は、一度レールから外れてしまった人間は非常に生きづらい世の中になっている。
吐く息は白く、手に持つ缶コーヒーは暖かい。お弁当はコンビニで暖めない。家に帰ってからレンジでチンするのだ。いや、ほんとこれからどうやって生きていけばいいんだろ。
こんな横領疑われた引きこもり5年生、30歳の手に職持たない凡人に仕事などあるのであろうか。いや、なんにせよ気力がわかない。ほんとに無気力だ。
どんなに頑張っても落ちるときは一瞬だ。他の人はこんな時どうやって立ち直るのだろう。俺にはできそうにない。人はあんなにも簡単に利用して裏切る。それなのに、人に依存していかないと生きてい行けない社会とはこれ如何に。怖すぎる。
自分だけで完結できる生き方があればいいのだが、それこそ完全自給自足でもしないかぎりは無理だろう。俺にできるはずもない。
あれやこれや考えながらぼけ〜っとしていた俺は光と音が迫ってきているのに気づいた、が、時すでに遅しだ。トラックが信号無視で突っ込んできてる。
嘘だろ!まずいまずいまずい!スローモーションでトラックが迫ってくるのがわかる!けど!体が動かない!うごけうごけ!まだ死ねな……あれ……死んでもいいかも?とりあえずあれだ死んだら異世界にどうか神様!あと痛くありませんように!とにかく異世界へ!
恐怖のあまり目を閉じ、反射的に顔を守ろうと腕を顔の前で構えてこれから来るであろう衝撃を待つ。数秒が何分にも感じる。恐怖のあまり呼吸することも忘れていた。もう死んだのかな?
いくら待っても衝撃が来ない。恐る恐る目を開ける。息を吐く。あれ? 生きてる? と言うか、怪我すらしていない。手には缶コーヒーに弁当の入ったコンビニ袋をぶら下げたまま。
何がどうなったんだ……全身を確認して見るが特に異常はない。怪我どころか服も汚れすらついていない。突っ込んできたトラックを探そうと顔をあげ、あたりを見回してみる。
なんだこれ……、コンクリート製の建物ではない。全体的に赤っぽい。レンガのような……こんな雰囲気ある建物うちの近くにはなかったはずだが。一体何がどうしてこうなったんだ。ここはどこなのか。まさか……、まさか……こんなことが起こるのだろうか。通りをしばらく歩くがやはり見慣れない建物ばかり、これは……?
「異世界に迷い込んだかもしれないっ!?」
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