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ヤンデレ兄とニート妹シリーズ

ヤンデレ兄とニート妹 その2

作者: スイレン

今回は観月ちゃんでてきますよー。

新太の人気のなさにびっくりです。

 兄の居ない中、私は一人静かに過ごしていた。

貰った本を読んでも、ゲームをやっても集中できずに終わる。


(兄さん、まだかな。)


社会人である兄が中々帰ってこないのは分かっているがそう思ってしまう。

初日からこれでは先が思いやられるな、一つため息をついて兄から貰ったウサギの人形を抱きしめる。

柔らかい感触が酷く心地よかった。


(あ、そう、だ。)


ズボンのポッケからケータイを取り出して兄にメールを送る。

内容は


『料理作りたいから台所にいっていい?』


というもの。

お昼時で、そろそろお腹がすいてきたためそう送る。

テレビもトイレもお風呂もあるこの部屋だが台所だけはなかった。

忙しい兄のことだからそうすぐに返事はこないだろうと思っていたが送ってから1分も経たないうちに返事が返ってきた。


『いいけれどすぐに部屋に戻ること。食材の場所は分かるよね? 後、ウサギの人形、そんなに気に入ってくれた? それなら嬉しいよ。』


その内容を読んで安心する。

返事にお礼とウサギの人形は一番最初に兄から貰ったからだという旨をしたためつつ台所へと向かう。

お米を研ぎ、セットしつつ適当に置いてあった麻婆豆腐の素を使い麻婆豆腐を作る。挽き肉と玉ねぎを追加で入れ(このことでさらにボリュームが増える)、豆腐を投入したら後は待つだけだ。

その隙に使った道具を洗う。

いつも通りの手順でいつものように。


ご飯を食べ終わると、これから何してよう、という思いが湧き上がった。

取りあえず片付けも終わったし部屋に帰ろう、それが兄との約束だ。

階段を登り、部屋に戻る途中にふと兄の部屋の扉が開いているのに気がついた。

隙間から見ることはできないが、普段きっちり鍵がかかっている兄の部屋の鍵がかかっていない、という状況は大いに私の好奇心を刺激する。


「じゅ、10分だけ、10分だけよ。」


そぉーっと扉を開け中を除く。

ーーそこは、用意された私の部屋とは正反対に、何も無かった。

パソコンと、その下にある机、そしてベッド。

シンプルな、物がなさ過ぎるその部屋は、どこか悲しかった。


ゆっくりと、兄のベッドに近付く。

黒一色で固められたそこには、兄の匂いが染みついていた。


「‥‥落ち着く。」


ポスリ、と顔を兄のベッドに埋める。

信じられないことに、自分のベッドよりも落ち着くことが出来た。


「‥‥ちょっとだけ、ちょっとだけ。」


そう自分に言い聞かせて兄のベッドに身を沈めた。





『高坂さんってさ、暗いよね。』


『てゆーか何で自分の父親死んでもあんな落ち着いていられるわけ?』


『おかしーんじゃない?』


『あ、あとさぁ、カッコイイ義理のおにーさんもいるじゃん?』


『そうそう、マジイケメンだった!!』


『いいなー。あんなおにーさんと一つ屋根の下二人っきりとかー。』


『やだなにそれぇー!!』


『ちょぉっと美人なだけで、調子乗んないで欲しーよねー。』


やめて、やめてよ。

悲しいよ、苦しいよ。

お父さん死んで、悲しくないわけないじゃん。

でも、分からないんだよ。

千尋兄さんのこと、そんな風に言わないでよ。

兄さんを、顔で判断しないでよ。

私、美人なんかじゃないし、調子にも乗ってないよ。


『マジさー居なくなれば良いのにねー。』


貴方達が私を否定しないでよ!!

だれか、助けて、

にいさん




「観月、おきて。」


「‥‥ん、う?」


「大丈夫? 泣いてるよ?」


優しい振動で目が覚めた。

しばらくぼんやりとしていたがハッとする。

ここは、兄のベッドで、目の前に兄がいる。

時間は?

バッと振り向いて時計を確認するともう既に兄の帰ってきてもおかしくない時間帯だった。

ヒュッと息を呑む。


「あ、その、ごめんなさ、」


息が乱れて、上手く呼吸できない。ヒューヒュー言いながら、私は一つのことを考えていた。

怒られる、嫌われる。

何よりも、それが恐ろしかった。

言いつけを守らなかったばかりか、兄の部屋に勝手に入って寝ていたのだから。


「落ち着いて、観月。」


抱きしめられて、ゆっくりと背中を擦られる。


「ほら、息をゆっくり吸って、吐いて?」


兄の言うとおりに、ゆっくりと呼吸をする。

すると段々冷静さを取り戻してきた。


「あ、う、その。」


「落ち着いた?」


その穏やかな、優しい笑みに今更ながら羞恥に襲われる。


「ご、ごめんなさい‥‥。」


「何で?」


「いいつけ、守らなくて、勝手に部屋に入って、ごめんなさい‥。」


怒らないで、嫌わないで。

そう震えながら呟くと兄は大きくため息をついた。

ビクリと震えて兄を見上げると、顔を歪めている兄と目が合った。

やっぱり、怒っている。


「なんでそう、煽るかな‥‥」


「‥‥?」


兄の言葉が良く聞こえなくて、首を傾げると、何やら脱力したように兄が笑った。


「別に、いいよ。外に出てたらどうしようかと思ったけど、俺の部屋だし。‥‥けど、なんで寝てたの?」


どうやら怒ってないことに気がつき、ほっとする。

でも、兄の問いに答えるのは中々恥ずかしいものがあった。


「‥‥えっと、」


「なに?」


「うっ‥‥。その、千尋兄さんが、いなくて、不安で‥‥。けど、‥‥兄さんの匂いで、安心、したから。」


「~~~~~~!?」


真っ赤になりながらそう答えたものの、やはり恥ずかしく、兄の胸に顔を埋める。


「もう、ほんと‥‥」


何やら兄が呻いているようだが、生憎それを気にする余裕なんて私にはない。

暫くすると、兄はゆっくりと私の体を引き離した。


「‥‥分かった。この部屋は、自由に来て良いよ。」


「!! 本、当?」


まさかそういってもらえるとは思ってもいなくて兄に問い返す。

でも、と力の抜けた笑みを浮かべて兄は続けた。


「‥‥この部屋にいるときは、ちゃんとメールすること。分かったね?」


「うん!! ありがとう‥‥!」


そういって微笑むとなぜか兄は固まった。

しかしそれはほんの一瞬で兄はいつものように微笑んだ。


「‥‥部屋、戻っていて? ご飯用意するから。」


「‥‥うん。あ、麻婆豆腐残ってるからそれで良いよ? 千尋兄さんも食べる?」


「いただくよ。」


「あと、その、一緒に食べたいんだけど、いい‥‥?」


「あ、うんいいよ。」


「よかったぁ‥‥それじゃ、あとでね‥‥?」


そういって、兄と話すことが出来て上機嫌になりながら、私は部屋へと戻っていった。






「ーーーーやっばい。なにあれすっごい可愛い。」


観月がいなくなった後、千尋はそう呟いて自身のベッドに顔を埋めた。

いつもは自分の匂いしかしないのに、今は彼女の匂いが移ったのか、ほんのりと甘い香りがする。


「今夜、眠れるかなぁ‥‥。」


後で、この部屋にもカメラつけとかなきゃ。

そう呟いて、千尋は幸せそうに微笑んだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 観月ちゃんは普通?に可愛い少し引っ込み思案な女の子なのに、千尋が、歪みなく、病んでる…… 続き、待っています!
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