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第八十四話 感染⑤

ねーこはコタツでまるくなるー

 

「にゃああああああああああああああん!! ん?? ん!?」

 落下が止まり、戸惑う猫。

 実はこうなることを既に予期していた優作は、一階下で分身を待機させており、落下する猫を捕まえたのだった。

 流石はギルドNO1のお気遣いプレイヤー。

 状況判断と、保険的行動に余念がない。

 だが、正直に云えば本当に落とすとは思っていなかった。

 脅しだけで済むと思っていただけに、猫を捕まえることはできたものの軽く青ざめていた。

「パチさん。これは本気ですか……流石の自分もドン引きです」

 猫を抱きかかえたまま、取り合えずパチとラテっちの元へと階段を上る優作。

 正直、戻ってよいものかと悩んでいたが、このままでは先へと進むことができないのも事実。なんとか招き猫の協力を仰げないものかと考えてながら階段を登りきると、意外にも猫の方から優作の腕から飛び出し、その場で土下座し始めた。

「スンマセン! マジ、スンマセンでした!」

 何度も土下座するアイテム。

「……で!? 教える気になったのかしら?」

 腕組し、猫を見下し睨み付けるパチ。

「勿論ッす。アイテムのことはアイテムにお聞きください!」

「それ、さっき私が云った台詞でしょ!」

「へい、それでは……コホン。階段には無いと思います。最上階にはあると思いますが、恐らく先を越されているはずです」

「それはもう知っている。他にはないの?」

「あのですね、各階ごとに、壁に敷き詰められたレンガの一つが外れるようになっているようです。その中にあると思われます」

「この中に? 無数にあるレンガから探せって云うの? その一つを正確に見つけることは出来ないの?」

「はい……そこまでは」

 パチは再び猫の首根っこを掴みだした

「本当です! 嘘ではありません! 信じて! 信じて下さいよ!!」

「役に立たないものは捨てる」

「やめっ、やめて! ママー!!」

 アイテムの絶叫を無視し、再び地面無き位置まで歩み寄るパチ。

「――やめてあげましょう」

 この一言を口にすることが出来ず、腕をばたつかせてオロオロする優作。

 アイテムのあるじ的存在のラテっちはポケーっと見ていた。

「あそんでもらっているのかな?」――と、勘違いしているのかもしれない。

 実際、ラテっちは優作が今度は猫を階段からバンジージャンプのように飛び落とし、落ちた猫をまたキャッチしてくれるのを心待ちにしていた模様だ。


「――そうだ! 正確にはわかりませんが、近付いていけば半径2(メートル)くらいの位置までは特定できるかもしれません! だから……だからご勘弁を!!」


 必死だった。アイテムなのに。

「それを先にいいなさいよ。それじゃ、行くわよ」

「……はい。ズンマセン」


 襟巻を掴みながら宙ぶらりんの状態で猫を連れていくパチ。

 襟巻の隙間から、猫の首筋に「地」と書かれているのに気付いた。

「ねぇ、何? この文字は」

「これですか。あっしのシンボルマークみたいなものでさぁ」

「シンボルマーク?」

「はい。生まれた時からあるんですよ」

「ふーん。何か意味でもあるの?」

「それが、あっしにはサッパリわからなくて」

「本当に使えない猫ね」

「へい……すみません」


 何はともあれ、下へと降りていく女子組三人。

 しばらく歩いていると。

「――ここです!」

「……本当かしら? もし間違っていたら……」

「本当ですって! 信じてください!」

「わかったわよ。でもここから半径2(メートル)といえば、空中にあるわけないし……やはり壁ね」

 問題はこの無数のレンガ。さてどうしたものか。

 するとラテっちが腕まくりする。

「こうなったらぜんぶたたくでちゅ!! ほぉーったたたたたたほぉっわちゃあ!!」

 ところかまわず辺りのレンガをペチペチ叩くラテっち。

「それしかありませんね。効率を上げるためにも――鏡同和(きゃんどんほー)

 三……四人に分身した優作がラテっち同様辺りのレンガを手あたり次第触りだした。

 後ろで見ていたパチ。

「なんか、意味不明で面白い光景ね……」

「姐さんはやらないんですかい?」

 猫が尋ねると。

「うっさいわね!今やるわよ!」

 すると――

 ガチャリと音が鳴るとレンガの一部が開きだした。

 するとそこには宝箱が――中身は当然ワクチン入りの注射器だった。


『やったーーー!!』

 喜ぶラテっちと優作。

「こんなに簡単に見つかっていいのかしら」

「何を云っているんですかパチさん。この調子ならみんなの分をここで入手できるかもしれません!」

「確かに、優作の言うとおりね。よし、猫。働きなさい」

「イェッサー!」

 階によって注射器ではなく違うアイテムだったり、何もなかったりしたが、数十階降りる頃には注射器は四つまで獲得できたのである。

 だがしかし――

「もうそろそろ限界のようね。優作」

「ですねパチさん」

 なぜなら、パチたちの後に来たプレイヤーと、先に来て降りてきたプレイヤーたちと挟み撃ちになってしまったのである。

 勿論、素直には通してくれそうもない。

 相手の目は既に血走っていた。


 ここでラテっちがひょっこり現れ「みんなでさがそ~」と元気よくお誘いした。

 すると、あるプレイヤーが「ワクチンよこせ!!」とラテっちの胸ぐらを掴みあげたのだ。

 その瞬間、パチが装備している錫杖をそのプレイヤーの脳天に叩きつける。

「何すんのよ。せっかく誘っているのにその態度は何!?? もしボンズがこの場に居たら殺されているわよアンタ!!!」

「ふみゅ~ぱち~」

「おーよしよし。こわかったねー」

 パチがラテっちを慰めている後ろで優作から一言。

「パチさん、お言葉ですがその人もう血だらけです。頭からピューピュー血が出ています。死にそうです」

 ぶっちゃけ、三人で行動してからパチにドン引きしまくりの優作であった。

 だが、その後も上からも下からもジリジリと詰めかけられる。

「話の通じる状態ではないみたいですね。ここは自分が闘います」

「大丈夫よ優作。それよりも鏡同和(きゃんどんほー)を解いて。――ラテっち。猫をしまって。あとはわかるわよね」

「らじゃ!」

 優作が鏡同和(きゃんどんほー)を解除し、亡者と化したプレイヤーから襲われる瞬間だった。


 パチが優作を引っ張りこみ、三人で飛び降りたのだ。

「きゃああああ!!」

 あまりにも突然のことに、思わず悲鳴を上げる優作。

 その時――

「あれでもないこれでもない、あれでもないこれでもない……あった~!!【ぷかぷかたたみ~しかもにじょう(二畳)】」   

 空中でタタミを出すラテっち。

 三人はすばやくタタミに飛び移り、逃げることに成功した。

 襲い掛かったプレイヤーは、追いかけていた勢いに釣られ階段から次々に落ちていった。

「あはは、人が生ゴミのようだわ いや、ゴミというよりクズね」

「パチさん、それだけは云わない方がいいと思います」

「ふふふ、ぼんず。まっててね!」


「あ、そうだ。壱殿たちにチャット送っておくね。ワクチン四本ゲットしたってね!!」


 ラテっち、パチ、優作の女性チーム。クエスト一段落。



ラテっちもコタツでまるくなるー にゃー

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