表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/145

第七十八話 体操

 

 朝――

 りゅうとラテっちが起きあがり、ベットを降りて洗面台で顔を洗う。

 この後、二人には恒例行事があった。

 ボンズが起き、二人は彼の足元に顔を擦り付ける。

「おひょーふにふに」

「おはよう、ボンズ。スリスリ」

「はい、二人ともおはよう」

 りゅうとラテっちはお気に入りの者でも物でも朝に顔をスリスリ擦り付けるのが日課だった。

 無論、ギルドメンバー全員がお気に入り。

 今度はパチの方へ――

「パチ、おはよー」

「おひょー」

「ラテっち、『おはよう』って云えてないわよ。ちゃんと起きないと。はい、あごタプタプ」

「あぶぶぶ」


 式さん――

「にゃんにゃん、おはよー」

「ついに『式』の一文字もなくなったな……。まぁ、おはよう」

「かまってースリスリ」

「は?」

「かまえよー。ぼくらと遊ぼうぜ」

「……朝食食べた後なら……」

「絶対だぞ!」

「はいはい」


 壱殿――

「いちどの、おはよー」

「壱殿ー、おは……寝たのか?」

 壱殿は無造作にベットから起き上がるも、帽子もサングラスもしたままで、少しよろけていた。

「いちどの、だっこして」

「ん……おチビちゃん。朝から元気だな」

 ――と、壱殿がラテっちを抱き上げると。

「あー、おさけくちゃーい」

「……む。そうか?」

「むふふ、おっさけくちゃーい。わーい」

 ラテっちが壱殿から飛び降り、りゅうと部屋を後にした。


 優作――

「ゆーさく、おはよー」

「おはよー」

「はい、おはようございます」

 だが、優作はこの後の恒例行事に一抹の不安を抱えていた。

「それじゃ、いつもの体操しようぜ!」

「たいそー!」

「はい、それでは外へ出ましょうね」

 宿屋の前にて――

「それじゃ、腕を大きく上げて背伸びの運動から――」


「ぷーにぷにロック! ぷーにぷにロック!」

「いぇい! いぇい!」


 なぜか体操にならない。

 ラテっちは腕と首を上下に激しく振り、りゅうに至ってはツイストのようなものを踊っている。

「ようなもの」と表現したのは、足に両腕、首に至るまで左右に振ってはいるが、全てがバラバラに動いており、奇妙かつ器用に踊っている。

 そして、なぜかこの踊りを見ていると符力を少しだけ吸い取られている感覚に襲われるのだ。

「ふー、今日もいい運動をした」

「つぎはあさごはんでちゅ」

 二人は「わーい」と喜びながらその場を後にするが優作の心中はいささか不安であった。


「自分の教え方が悪いのだろうか……それにしても、ボンズさんも壱さんも、よく勉強を教えているな……」



 今日もまだコロシアムで闘いが繰り広げられているが、観戦しないボンズらは正直少し暇を持て余していた。


 壱殿が迎え酒を飲む。

 子どもたちはジュース。

「朝からお酒なんか飲んで……子どもの教育に悪いわよ」

「パチよ、貴様から『教育』という言葉が出るとは意外だったぞ」

「うるさいよ」


「それにしても、のんびりしながら話をするなんて、まるでオフ会みたいですね」

「ほほう、では云い出した者に質問だ。そういえば、優作は酒を飲める歳なのか?」

「優作は十代だよ」

 ボンズが横から口を挟む。

「そうなんです。まだ飲酒はできません」

「そうだったのか。その口調からワシとさほど変わらん歳かと思ったぞ」

「それじゃ、壱殿は何歳なんだ?」

「おっと、大人の歳など聞かぬほうがよい」

「最初に聞いたのアンタだろうが!!」 


 ――――


「全く……それにしても、オフ会か……つか、こうやって話し合う機会はあまりなかったから、色々話したいな」

 ボンズの意見に、パチが思わぬ提案をしてきた。

「ねぇねぇ、それじゃあさ、現実にいた時のことを含めて実際にあった怪談噺でもしない?」


「――怪談??」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ