番外編 テレビアニメ |銀河《ギャラクシー》園児 コキャ・コーリャー
いつもどおり、番外編はみんなで一つ屋根の下で生活しています。
今日は、みんなでアニメを見る話です。
おでかけしていたボンズたち。
その中に、家まで慌てて走るりゅうの姿があった。
「早く、始まっちゃうよ」
焦るりゅうは家の中に入ると急いでテレビの電源を入れた。
――と同時にアニメが始まった。
「間に合った~!」
喜ぶりゅうと、隣にラテっちとテレビにかぶりつく。
後ろのテーブルに大人たちが座り、なんとなく一緒に見始めた。
【銀河園児 コキャ・コーリャー 最終話 『乾杯!』】
大宇宙の中、小さい少年が戦っている最中だった。
これが主人公か。金髪の園児……りゅうみたいだ。
そうか、キャラ設定はこれを真似たのか。
「コーリャーよ。これでおわりだ
疲弊しきった少年が、大勢の銀河悪魔に囲まれている。
「ちくしょう。ここまでなのか……」
ボロボロの姿で、剣を杖代わりにしながらようやく立っているようだ。
「とどめだ!」
銀河悪魔が一斉に襲い掛かる。
だがその時、コーリャーの眼の前に閃光が走り、銀河悪魔たちを消し去っていった。
「何者だ! 名を名乗れ」
「まったく……本当にしょうがないヤツだぜ」
「きみは、まさか」
「おまえのことがどうしても気になっちまってな、死神とやらに土下座して舞い戻って来ちまったぜ」
「パ・プシメン!!」
頭からつま先まで全身白タイツで覆われた男が現れた
気になるのが口元だけ穴があいていること。どこかでみたな……こんな男。
『説明しよう。パ・プシメンとは、以前は敵同士だったが次第に友情を深め、共に銀河を守ってきた相棒だったが、大悪魔の腹心ハパネーロの卑劣な罠にハマったコーリャーの身代わりになり、銀河の星になった男である』
……ナレーション、声優さんの無駄遣いだな。
「いくぞ! 炭酸毒きりシャワー!」
悪魔の顔面を両手で鷲掴みすると、口から霧を吹きかけた。
「グアアアアアア!! 目がぁぁぁぁぁ!!」
目がぁ……って。仮にも正義のヒーローが平然と毒霧をかますとは、斬新なアニメだ。
続いて、パ・プシ=ランナウェイ!
さっそうと逃げ回りながら毒霧をそこら一帯に噴射し、自分は安全地帯で腕組みしながら高笑いをしている。
「アイツ最低だ!」
「絶対に逃がすな」
パ・プシメンの卑劣な攻撃と人を馬鹿にした退き戦術に平常心を失う悪の部下たち。
いったいどちらが悪役なのかわからないな。
「さぁ、ここは俺に任せて先に進め! 頼んだぜ相棒!」
「なぁ、パ・プシメン……一つだけいいか」
「どうした? 戦いの最中だぞ」
「そうだよ。また……また一緒に戦えるんだな」
「ふっ、その通りだ!! さぁ行け!!」
「おう!!」
ついにラスボスとの対決のようだ。
「マスター・ドン、決着の時だ!」
「マスターに手出しはさせん!」
「君は、腹心『ミトナ・トュー』」
ミトナ・トューは手に持つ印籠のパワーでコーリャーの動きを封じこむ。
「く……こんなもので、ぼくは負けない! 最終変身! コキャ・コーリャー=スペシャルスパークリング=フルメタルバージョン!!!」
コーリャーの全身が光り始めた。
「ふおおおおおお!!」
気合いと「シャキーン」となる効果音と共にポーズを決める。
「銀河をまたにかけ、飛び交う悪を討ち砕く。銀河のヒーロー コキャ・コーリャー!!」
『説明しよう。コーリャーの変身時間はわずか0.98秒。だが、変身前のポーズをちゃんとしなければ変身できないので実際は10秒以上かかってしまうのだ』
翼が生えて、大きく広げる。
さらにはコキャ・ベルトに腕時計。ブーツにコキャ・ウイングまで装着していた。
なるほど。りゅうの口癖――「説明しよう」は、このアニメの影響か。
「おおおおおおおお! これがコーリャーの真の姿か」
律儀に変身するのを待つミトナ・トューとマスター・ドン。流石はアニメだ。
「マスター。コーリャーのパワー……計りしれません」
「臆するな! フッフッフッくらえ! 激辛ブラックホール」
マスター・ドンの掌に小さいブラックホールが出来上がる。
「最後の勝負だ!! 銀河の平和はぼくが守る! 光り輝け! ニュー・コキャ・ブレード!!」
ブラックホールと共に、ミトナ・トューとマスター・ドンをも切り裂いた。
――長い戦いは終わった。
「やったぜ、パ・プシメン!」
「コーリャー!」
『せーの、乾杯だ!!』
~ED~
弾ける感触たまらないぜ~(炭酸のめる?)
シュワシュワ広がるとまらなーい(炭酸好き?)
いつでもどこでもどこまでも~
銀河の果てまでとまらないぜー!
だけど振らないでね、あふれちゃーう
振っちゃったら泡になっちゃーう
シュッ、シュッ、シュワシュワ~
子どもの笑顔が元気の源
だけど僕も子どもだったぜ~(まっ、いっか!)
キンキン冷えてるコーリャー
だけど熱血コーリャー
熱いぜ~ぬるくはないぜ! コーリャー!
さぁ、今日から君もコキャ・コーリャーだ!
スカーッシュ!!
『ここで番組からテレビの前のよい子たちへお知らせだ。この宛て先までハガキを送ると先着100名様にコキャ・コーリャーのサイン色紙とパ・プシメンの全身タイツをプレゼントするぞ。みんな! ふるって応募してくれよな!!』
◎
「おもしろかったでちゅ!」
「早く手紙送らないと!! ボンズ、手紙くれ!」
後ろで見ていた大人たち。
『……変なアニメ』
――あれ? まだ終わっていない??
【緊急速報! 銀河園児コキャ・コーリャー 映画化決定!!】
予告PVが流れ始めた。
「――知っているか? 最近、これまで戦ってきたヒーローたちが次々に姿を消しているらしい」
銀河が平和になって一年が経過した。
もはや悪は消え去ったと思われていた――だが!
「コーリャー……助けてくれ」
かつて、コーリャーやパ・プシメンと同じく、ヒーローになるべく修行を積んだ仲間からのSOSだった。
悪の残党か? ――否!
全ての悪が消え去ったのは間違いなかった。
だが、銀河を平和を脅かし、次々に銀河を守るヒーローたちを襲っていたのは、コーリャーをはじめとした全てのヒーローの師である「ファタン」であった。
「勝てるわけがねぇ……いや、あの人とだけは争いたくなんかねぇよ!! コーリャー、俺はどうしたらいいんだ」
絶望に打ちひしがれるパ・プシマン。
何故、ヒーローを育ててきたファタンが銀河の平和を脅かすのか!?
「コーリャーよ、ワシを倒さぬ限り銀河は終わる。ワシと戦え!!」
最悪の選択肢がコーリャーに振りかかる。
銀河の平和か。
親同然に育ててくれた師への恩か。
「逃げるんだコーリャー! お前だけでも生き延びてくれ! 生きててほしいんだよ……師匠となんて戦ってほしくないんだよ……相棒!!」
命を賭けてコーリャーを守りぬくパ・プシマン。
だが、コーリャーはファタンと対峙することを選んだ。
「己の最も大切なものを己の意思で選択し、行動で守り抜いてみせろ! 全てを守るなんて綺麗事を並べるな!! そんなこと、この世に誰も出来るわけがないのだ!!」
「……いたじゃないですか。かつて――たった一人だけ」
「その人に、その人の背中に我々ヒーローは憧れたんだ。大切なものに一番なんてない。順番なんてないんだ! それをぼくに、ぼくらに示し続けてくれたのはあなただったはずだ!! ファタン師匠!!」
銀河を……尊敬する者を、全てを守るために――コーリャーは再び立ち上る!
『近日公開――映画の前売り券を買ってくれたヒーロー諸君には、映画館でコーリャーとの握手券を同時にプレゼントだ!! みんな、僕と一緒に戦おう!!』
………………チラッ。
横に視線を移すと、すでにりゅうが土下座していた。
「一生のお願い! お手伝いもちゃんとするから買って下さい!!」
「わたちもおねがいちまちゅ!!」
「逃げられない」――ボンズは悟った。
けっこうムチャぶりですw