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 番外編 クリスマス


 ここは、番外編おなじみの架空の一軒家。

 ゲームの世界ですが、どこの大陸でもない見知らぬ土地に家を構え、みんな揃ってこの家に仲良く暮らしています。

 ちなみに、ギルド結成してからしばらく先の出来事となっております。



 


「ねぇねぇ。わたち、いいこかな?」



「どうしたラテっち、突然そんなこと聞いて」

「サンタさん……きてくれるかなぁ」


 ――そうか、もうクリスマスか。


「おやさい、ちゃんとたべてるし、ごはんもいっぱいたべてるし、おやつもたべて、いいこにしてたの」


 食べることが「いい子」の基準なのか。

「なぁボンズ。お手伝いもしたら、もっといい子になれるかな?」

 りゅうも気になっているようだ。


「大丈夫。きっとサンタさんは来てくれるよ」

「ほんと?」

「本当か??」

「あぁ、本当だとも」

『よかった~!』


 その時だった――

「うわっ! ラテっちとりゅうって、まだサンタのこと……」


 瞬時に壱殿と式さんがパチの両脇を抱え、連行する。

「チョット……なにすんのよ!」

『それはこっちの台詞だ!!』


「うちゅ? どったの?」

 ラテっちが不思議そうに優作に聞く。

「え……えーっとね……そうだ! サンタさんは実はおじいさんだけじゃなくて、お兄さんもいるらしいよ」

「ほぇー、それじゃ、おひげは?」

「おひげは……生えているのかなぁ?」

「優作は物知りだな!」

「そ……そうだね。二人ともサンタさん来てくれるの楽しみですね。だから今日は早めに寝ましょうね」


『うん!!』


 その頃、別室にて――


「正座――」

 3人の男に囲まれるパチ。

「なんでよ」

『せ! い! ざ!!』


 有無を言わさず正座させる。


「……なんでしょうか」

「あのな、まだサンタのこと信じている子どもに正体をばらすなんて最低の行為だぞ」

「最低いうな!」

 PK(プレイヤー・キラー)の式さんに最低呼ばわりされるパチ。だが、この場合は100対0でパチが悪い。

 式さんのいうことがまさしく正論だ。

 パチは常識があるんだかないのだかわからんことをするから困る。

「……たく、優作が上手くフォローしてくれているといいんだけど」

「ふーん、で?」

「で? って、反省してないな」

「そうじゃなくて、男が三人ガン首並べているのはいいけど、結局誰がサンタをするの?」


『……はっ!』

 盲点だった。これは重要な役目だぞ。


 それは、後においておこう。

 今は、りゅうとラテっちが欲しい「プレゼント」を知ることだ。


「それじゃ、フォーメーション『(サンタ)』――いくぞ!」


「あのさ……」

「なんだ? まだ正座しとれよ」

「サンタさん、私のプレゼントは?」


『……………………死ね』



 みんな、リビングに集合しクリスマスパーティーの支度を始める。

 まずは――

 ・大きい靴下を作る

 赤くて大きい布を靴下の形にハサミで切り、二枚用意する。

 二枚の布を縫い合わせて出来上がり。


「うんしょ、うんしょ」

「ちょきちょき」

 りゅうとラテっちが布を頑張ってハサミで切っている。

 出来上がった布を優作が縫ってあげた。


『できた~!』


「これに、サンタさんがプレゼントを入れてくれるんですよ」

「楽しみだな~」

「でちゅね~」


 次に――

 ・ツリーを作る

 式さんがもみの木を担いで持ってきた。

 高さが1Mほどの丁度良い高さなのだが、根元が黒焦げになっているのは見なかったことにしよう。

 土の入ったレンガ造りの大きな鉢植えに木を突き刺す。なんという力技だ。

「これになにか飾れ」

 式さんのアバウトな発言にりゅうもラテっちも不思議そうな顔をする。

「うーん、例えば……」

 式さんはマクラを引きちぎると、中の綿をひも状にして、もみの木に巻きつけ始めた。

『おぉ~!』

 雪をイメージさせる飾りに満足そうな二人。

 でも、これだけでは物足りない。

「式さん――チョット」

「どうした、ボンズ」

「あのさ、爆弾の代わりに電球の様な灯りを具現化することはできないの? キラキラしたの」

「……お前も大概ムチャなことを云うのな」


 こんなこともあろうかと、優作が星形や丸型をした色とりどりの紐つき折り紙を用意してくれていた。

「これをみんなで枝に付けましょうね」

『はーい』

 流石女の子! 頼りになる。


 ・料理とケーキを作る。

 七面鳥のローストは定番すぎるが、必須だろうな。

 あとは、サイドメニューか。


【ルートフィスク】という、干し鱈をバター添えした料理があるが、子どもには少しクセが強いかもしれない。

 ムニエルにしようかな。

 いや、グラタン風にホワイトソースをのせてオーブンで焼こう。

 待てよ、サーモンのクリーム焼きも捨てがたい……迷う。


 子どもたちの分だけではなく、大人の分も考えないとな。

 お酒の肴にカナッペなども用意しておこう。

 特に生ハムや新鮮な刺身と組み合わせると、いいツマミになるだろう。

 いやいや、刺身を使うならカルパッチョの方がよいのか? ……またまた迷う。


 スープはクラムチャウダーにして……いや、コーンスープのほうが……いやいや、もう迷わず突き進もう!


 ケーキはロールケーキのブッシュドノエルがいいだろう。

 ココアのロールケーキにチョコをタップリとトッピングして、イチゴと生クリームで作ったサンタをケーキの周りにたくさん囲おう。

 ケーキの上には板チョコで組み合わせた煙突を作って完成だ。


 さて、クリスマスパーティーの支度は整った。

 この隙に二人が何を欲しいか、さりげなく聞くも――「ひみつ」の一点張り。

 結局聞けなかったので、「靴下の中に、欲しいプレゼントを書いた紙を入れておかないと、サンタさんが困るよ」と云い聞かせ、書いてもらうこととした。


「みちゃアプッよ!」

「ほいほい」


「んしょ! んしょ!」 

 クレヨンで紙いっぱいに一生懸命書くラテっち。

 欲張りだなー。

 りゅうは――もう書き終えたようだ。


「二人とも、書き終わったら靴下の中に紙を入れるんだよ。すぐにごはんだからね」

『はーい!』


 それではクリスマスパーティーの始まり。

 みんなでボンズ特性の料理を食べる。


「へぇ、ボンズにこんな特技があるとは意外だな」

「ボンズさん凄い! 美味しいです!」

 式さんや優作が料理を褒めてくれる。

「ケーキはお楽しみなのか?」

「しょくごのデザートなんでちゅね」

 子どもたちはケーキの方に興味がいっているらしい。

「【ルートフィスク】は確かスウェーデンのクリスマス料理……クセがないようにアレンジしたな。クリームが~うんたらかんたら」

 壱殿は相変わらずのようだ。



 ――――――――――



 お楽しみのケーキを食べた後、りゅうとラテっちに歯みがきを促し早めに寝かせる。


「さてと……」

 寝静まった二人の部屋に静かに侵入し、靴下の中に手を入れる――紙があったぞ。

 二人が書いた紙をリビングまで持ち出し、大人たちでコッソリ拝見する。

 なにが書いてあるのやら……おもちゃとお菓子かな?


「まずは、りゅう……と。なになに」


【サンタさんへ。ラテっちの欲しいもの下さい】


「――りゅう」

「コイツらしいな」

「だな」

「本当。ラテっちのこと、いつも大切に思っているものね」

「それじゃ、次はラテっちだな。どれどれ……」


【さんたさん、りゅうと、ぼんずとね、ぱちと、いちどのと、しきにゃんと、ゆーさくと、みんなずっとなかよしで、げんきでいられるおくすりをくだちゃい】


 ――――――――


「――ボンズ、行って来い」

 そう云うと大量の金貨が詰まった布袋を取り出し、ボンズに手渡す壱殿。

「こんな大金……店ごと買い占めろと?」

「おい、店が閉まっていたらこれで扉をぶっ壊してでも買ってこいよ」

 そう云ってドラ爆弾を手渡す式さん。

「いや、この爆弾は式さんしか使えないような……つーか、アンタの爆弾使ったら店ごと跡形もなく吹き飛ぶでしょう」


「ボンズさん」

「優作……」

「はい覆面と風呂敷。これなら思う存分暴れてもバレないですよね」

「君だけは良心的な発言を云ってくれると信じていたのに……」

「何を云っているのですか。これは重要な役目なのですよ。絶対に二人が起きてしまう前にプレゼントを持って帰って来て下さいね!」

「……念のため聞くけどさ、もしもだよ、もしも間に合わなかったら?」

「死ぬ気で走って下さい。間に合わなかったら、死んで下さい」

「どんだけ!!?」

 すっごい爽やかな笑顔で云わないでよ。

 それにしても、まさか優作までこんなことを云うとは。

 いや――もしかしたら、りゅうとラテっちに関わった人たちは徐々に性格が変わっていくのかもしれない。



 それに――

「結局なにを買えばいいんだ?」


「まぁ、いざとなったらマフラーなんてどう? 寒いし。あったかくていいでしょ」

 意外な……パチがまともなことを云った。

「あと飴を人数分ね! 薬が必要なんでしょ!」

「わかった! 行ってくる!」




 翌朝――



 ベットから飛び起きたりゅうとラテっちがプレゼントをみんなに見せて回った。

『みてみて! サンタさん、きてくれた!』

「よかったな」

『うん!!』


 余程嬉しいのだろう。二人とも早速マフラーを着けて、部屋を走り回っている。

 笑顔を顔いっぱいに広げながら。

「マフラー、あったかいな!」

「おくすりもあるの! これ、みんなでたべてね!」


 ラテっちの見ている前で、みんなで飴を食べる

「よし! これで、みんな元気だ」

「あぁ、力が湧いてくるようだ」

「とても温かくなりました。ラテっちさん、ありがとう」

「うむ、若返った気分だ」

「美容にもよさそうね」


「みんなげんき!! いぇーーい!!」

「イェェーーイ!」


 青色と桜色のマフラーを首に巻いたりゅうとラテっちが並んでガッツポーズをとった。



「あのさ、パチ」

「なによ」

「これ、ついでに……」

 パチにもこっそりとプレゼントを渡すボンズ。

「『ついで』とか云わないでよね。それに手袋って、センスないわね」

「――返せ」



「イヤよ。せっかくだから、貰ってあげる」




メリー・クリスマス!

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