第百十三話 友達
十三龍門
13匹の龍の死霊を操りどのような攻撃も効くことはなく、もし1匹でも欠けることがあろうともすぐさま再生する。
攻撃力も圧倒的に高く、攻防一体となった13匹の死霊に囲まれた術者は、もはや『無敵』と言っても過言ではない。
そんな相手と闘い続けていた【九蓮宝燈】を振りかざす少年りゅう。
これまで「斬る」と「避ける」を繰り返していたのだが、ラテっちが自分の真後ろに漂着してしまったことで「避ける」という選択肢が無くなってしまった。
「大丈夫だラテっち。絶対ボクが守ってみせる!」
「うん」
2人の会話を聞いていた黄龍が鼻で笑う。
「できるのかな? 己が誰かをかばいながら我の相手をするなど笑止。すぐに現実というものを見せつけてくれよう。暴れろ、下僕たちよ!」
13匹の死霊が、りゅうとラテっちに襲い掛かった。りゅうは斬りつけながら、残り4匹…………いや、精一杯斬りつけるも、どうしても残り2匹を凌ぐことができなかった。
りゅうはこの2匹の死霊を目前に「ダメだ」と、あきらめかけていた。
「防ぎきれない。ラテっちにあたっちゃう」
その時――
2人の前で大の字になり盾になる者。左腕と左わき腹をえぐり喰われながらも死霊の行く先を変え、りゅうとラテっちを守った。
うめき声一つあげずにその場に崩れる。
「ボ…………ボン……ズ?」
りゅうの頭の中が真っ白になる。
「ぼんじゅ!! ぼんじゅっ!! しっかりちて!!」
ラテっちが泣きながら、かたわらでボンズの身を揺らす。
「こ…………この…………このぉ!!」
りゅうが総毛だちかがみこんだ。
ガシッ
「え?」
そこには、りゅうのの足首を残された右手でつかむボンズがいた。
「り…………りゅう…………倍プッシュは、使うな」
「で、でも!」
「それだけは、さいごのさいごまで使っちゃだめだ。必ず必要となる時が来る――それは今じゃない」
「…………でもでも!! このままだとボンズが消えちゃう…………消えちゃうんだぞ!!」
「へへ、カッコ悪いところを見せてごめんな。でもな、りゅう、ラテっち。あんなにも他人を拒絶し続けてきた、どうしようもなくダメダメだった――明日の色さえ見えなかった俺に、初めて色を塗ってくれた…………俺の人生初めての友達は、あんなヤツには負けない…………そうだろ」
「ボンズ…………」
意識を失いそうになるボンズの右手を強く、しっかりと握りしめるりゅう。
「ラテっち!」
「わかってまちゅ! ラテっち、ちょーほんきもーどでちゅ!!」
「パチ! 今からコイツをぶった斬る! すぐにボンズを回復するんだ!!」
「は、は、はい!」
「まってろよボンズ!」
一部始終を見ていた黄龍は高笑いを見せる。
「不可! 不可! 不可! 不可! 不可能! 不可能!! 我を傷つけるなど神ですら不可能! 無論【九蓮宝燈】を遣う君ですらな! ましてやこの世界になど1人として存在しないのだ!!!」
「いや、いたさ。かつて…………たったひとりだけ!!」