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第百弐話 文字

 

 おもむろにため息をつき、椅子に座る壱殿

「実はなボンズ、ワシは嘘をついていた。四つの神具についてだ。以前、ワシは『オープンβ(ベータ)の時、船や賭場の壁紙を調べたら書いてあったのだからな。神具のことを』と云った。それ自体は嘘ではない。だが、その先のことは何も書かれていなかった」


「それって――【九蓮宝燈(ちゅーれんぽうとう)】とかのことか?」

「そうだ。ワシはゲームの世界ではアカウント停止になった事となっている。当時、ゲーム会社からネット販売したアカウントを元にワシに連絡があった。

 内容は行為を戒めることではなく、何故一夜にして莫大な報酬をギャンブルで得られたのか、その方法を知りたいとのことだった。だが、ワシは断ったよ。

 ネタバレするのはゴト師として恥ずべきことだからな」

「ゴト師?」

「あぁ、正規な手段や運に頼らず、別の方法を用いてギャンブルで収入を得る者の総称だ。そして、ワシはもう二度と『ゲーム』では賭場に入らないことを条件にある情報と交換した」

「それは―まさか…」


「このゲーム最大の謎――神具の全てだ」


「現実と化したこの世界でならば賭場に入れると踏んでいた。既にゲームではないのだからな」

「だから詳しかったのか」


 この世界には、チビッ子の持つ【九蓮宝燈(ちゅーれんぽうとう)】の他にあと3つ。



 十三龍門(しーさんろんめん)=符術

 天和(てんほう)地和(ちーほう)の狛犬と狛猫=意思を持つアイテム

 そして、燕返し=スキル だ



「神の具現とされるこれらのものは、まさに『何か』というものであり、形があるとは限らない。つまり、【九蓮宝燈チューレンポトウ】のような実態がある物だけではないのだ。

 その正体は、装備・アイテム・符術・スキルの四種を大陸になぞらえて用意されている。」


 そして―この際だからハッキリ云おう。ボンズには燕返しが秘めている。

「え…?」

「おチビちゃんが誘拐された時のことを覚えているか……おい、聞いているのか」?


 りゅうとぱちが頷く。

 予備動作どころか、一切の過程が存在しない攻撃。

 攻撃とは、相手に敵意を持ってから相手の身体に触れるまでの過程全てを指す。

 だが、燕返しとは攻撃の動作――移動、拳や蹴りなどを走らせる動作その他諸々が存在していない。

 発動と同時に攻撃が確実にあたるという因果律を完全に無視したもの。

 ゼロからの攻撃―それが燕返しだ。


「俺にそんなスキルが?」

「まだ自覚がないだろうな。それ故、使いこなすことも現時点では不可能だ。だが、今後操れるようになるかはボンズ次第だ」

「どうすればいい?」

「そこまでは……わからんな」

 そうか……俺も【天に愛されている者】だったなんて。

 ここで突然、パチが話に入ってきた。

「あのさ壱殿。ついでにさっきのアイテムのこと、詳しく教えてくれない?」

「どうした? 聞きずらそうに…」

「いや、少しでも早く確かめたいことがあるの」



「パチさん……それって」

 優作も同意見のようだ。

「えぇ……あのね、ラテっち。以前高い塔の中に入った時に出してくれた悩んでいる招き猫を出してくれない?」


「んちゅ? いいでちゅけど、なんで?」

「説明は後でするから、ね」

「わかりまちた。あれでもないこれでもない、あれでもないこれでもない……ありゃりゃ」

「どうしたの?」

「でたくないって。ねむいって」

 パチがラテっちのカバンに向かって話しかける。


「これから先の温かい眠りと、冷たい永眠とではどちらがお好みかしらね。あと二秒以内に出てこないと……わかっているわよね!」

 猫がカバンから飛び出した


「パチを見て、姐さん、ご無沙汰してます。命ばかりは、命ばかりは~!」

 ―と、土下座する子猫。

「パチ……いったい何をした」

 驚きを隠せない壱殿。


「おぉ、この猫か」

「チビッ子、知っているのか?」

「あぁ、ラテっちと一緒に拾ったんだよな。大きくなったな」

「拾った? どこで」

「忘れた。この世界に来てすぐだったぞ」

 首に巻いてある襟巻をを恐る恐るめくると、身体には『地』と書かれている。

「これは間違いなく生きたアイテムの神具の片割れ。『地和(ちーほう)』」だぞ!!」


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