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第九十七話 遠泳

 

「おいっちにーさんしー」

 日課の早朝ラジオ体操を終え、ヤクルコを飲み、宿屋に帰るりゅうとラテっち。

(ついでに、未だに二人に教えるのが上手くいかず、毎度この光景を悔しがる優作の影も一緒に)

 それは、宿屋に着いた途端の出来事だった。

 ラテっちが目をこすり、驚きのあまり思わず声を上げる。

「タイヤキさんがういてりゅっ!!」

 そう、目の前に焼きたてのたい焼きがプカプカと浮いているのだ。

 だが、なぜ浮いているのかわからない。

「あやしいでちゅ……」

 さすがのラテっちも怪しむ。

「そうだよラテっち。いくらなんでもタイヤキが浮いているなんてありえないよ。それになんか糸みたいのが見えるような……」

「いと? ふちゅぅ」

 ラテっちがタイヤキに近づくと確かに細い糸が見える。

 だが――

 ラテっちが近づくと、たい焼きがピクピクと動き出し、まるで宙を泳いでいるようだった。

「お、おっ、およげたいやきくんでちゅ!! もうがまんできまちぇん!! カプッ!!」

 ラテっちがタイヤキに食らいつくと、案の定上へと引っ張られていった。

「あぅぅぅぅ。でもはなししゃない!!」

 宿屋の屋上へとつられていくラテっちを横目にりゅうがため息をつく。

「もう、しょうがないなぁラテっちは――――ん??」

 りゅうが何かに気が付いた。

 その先にはキラリと光る物体が!

「あ! あ! あ! あれは!! コキャ・コーリャーの限定プレミアムカード!! しかもコーリャー最終形態ゴールデンバージョンだ!!」

 一心不乱に飛びつくりゅう。

 だが、カードはヒラリヒラリとかわしていく。

「逃げるな! まって!! おおおおおおおお!!!! 捕まえた!!!!!!!!!!!!!!」

 すると、りゅうもラテっち同様宿屋の屋上へと引っ張り上げられていった。


 ――


「ただいまー」

「お、式さん。朝早いね何してたの?」

 ボンズが台所に立って包丁を磨いていた。

「ちょっとそこまで釣りにいって来た」

「そうなんだ。釣れたかい??」

「ああ、大物だぞ」

 後ろから両手にバケツを一つずつ持っている。

 その中には満面の笑みを浮かべるりゅうとラテっちがバケツにそれぞれ入っていた。


「……式さん」

「なんだ?」

「リリースで、お願いします」

「キャッチ&リリースか。仕方ない」


 りゅうとラテっちが解放された。

 タイヤキを食べたラテっちはウットリ。りゅうも欲しがっていたカードをゲットしてウットリしている。

 そして、一言。


「つられました!!」


 そこの二人、笑顔で言わない。


 その様子を一部始終見ていた壱殿が、微笑ましく見ているかと思いきや、険しい表情をしている。


「釣り……泳ぐ……」

「どうしたんだい壱殿」

「ワシ達も……泳がされているのではないか」

 一瞬、周りの空気が張り詰める。

「……どういう意味だ?」

 式さんも壱殿の話に喰い付いてきた。

GM(ゲームマスター)が前回のクエストの後に云った台詞を覚えているか?」

「え? 何も言っていなかったと思っていたけど……」

「『余暇をお楽しみください』だ」

「余暇…………!! いや、まさか」

「そのまさかだったら大変だぞ!」

「どういうことだ! 教えてくれ」

「式、このゲームで余暇といえば何を連想する」

「ん、うーん。なんだろうな」

「魔物も存在しない、娯楽のみ用意された最後の大陸『ジハイ』だよ」

「!!」

 式さんもさすがに気付いたようだ。

「つまりあれか、『余暇』とは、『ジハイにある賭場を攻略しろ』ってことか!!?」

「あぁ。それならいつ終わるかもわからない状況の中で数日をも無駄に過ごしていたかもしれん」

「大変だ!! 今すぐ急いでジハイに行こう!!」

 ボンズの呼びかけにそこにいる男三人は頷き、出発のじゅんびを始める。

「オレはパチと優作を呼んでくる」

「あ、自分はもうここに居ますよ」

「うわっ! ビビった!! 何でいる?? つーか、起きていたのか? いや、なぜそこにいる??」

「それは……いや、それどころではないでしょう。自分はパチさんを呼んでくるので、皆さんは早く出発準備を!!」

「わ、わかった。よし、ほかのみんなは大丈夫だな」

「おう」壱殿が頷く」

 ボンズも同意した。

「りゅう、ラテっち。準備はいいか?」

 ボンズの問いに――


「うっとりぃぃぃ~~~」


「君たちは、もう少し緊張感を持ちなさい!!」


次回から、賭場編です。

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