表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/145

 番外編 怒られちゃった

 


 じとーーーーーーーーー

「どうしたの?」」

 ラテっちはりゅうの胸元を凝視している。

「やっぱりきれいでちゅねー。わたちもほちい!!」

 どうやらりゅうの装備しているレアアイテム『スライムの恩返し』に興味津々だそうだ。

「うーん、ぼくもプルプルに会いたいし……きょうはいっぱいおひるねをして夜にでかけようよ」

「おおーないすあいであでちゅ。さっそくおひるねしまちゅ」

 ふたりは三時のおやつを食べてから、本日二回目のお昼寝をした。


 ――そして夜中。

「ラテっち、おきて」

「うーん、ねむいでちゅ~」

「ぷるぷるに会いに行って、ワッペンもらうんだろ」

「――は! そうでちた」


 二人はいそいそと準備をし、外へと飛び出そうとした。

 だが、宿屋の廊下を歩いている途中に物音が……

 気になった二人はその部屋に入る。すると、そこには一冊のノートがあった。

 なんとなくそののーとを覗いてみると、りゅうとラテっちは青ざめた。


 それはパチのノートであった。

『もしもりゅうとラテっちが悪さをしたときのおしおき表』

 ・お尻ぺんぺんの刑

 ・おなかタプタプの刑

 ・おやつ抜き


 ぞおおおおおおおおおおおおおお!!


 二人はムンクの「叫び」のような顔をして凍りづく。


「ど、どうちまちょう」

「はやくにげなきゃ」


「…………もう、手遅れなんだけど」

 二人の後ろには既にパチがかおを覗き込んでいた。

『にゃあああああああああああああああああああああ』

 ふたりは驚きあたふたする。

 そしてなぜか踊ってしまう。

 混乱のせいでふしぎなおどりを踊ってしまった。

「と・こ・ろ・で」

『ぎく』

「こーーーーーーーーんな夜更けに小さいお坊ちゃんとお嬢ちゃんがどこへお出かけかしら?」

「ぷるぷるに……ともだちに会いに行くんだい!」

 りゅうがそういうとパチの表情はどんどん険しくなり、「どんな理由でも、子どもだけで夜に街をうろつくなんてダメでしょ! 前回りゅうがでていったときだって知っていたら止めていたのよ」

「でも……」

「でもじゃありません! そんな悪い子はおしおきとしておやつ抜きです!!」


『しょぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼおぼぼーーーーーーーーーん』



 朝――

 ぼんずが起きると足元が濡れていた。

 さては、おねしょをしたと思い優しくといかけようとした途端。

「うお!!!」

 驚きのあまり叫んでしまった。

 ベッドの片隅でりゅうとラテっちが丸くなりイジけを通り越して二人の頭上には小さな雨雲が発生し、雨が降っていたのだ。

「…………どうした? ……二人とも」

 ボンズがただ事ではないと心配しこえをかけるも無反応。

 あさの体操にもいかず、雨に打たれている。


 朝ごはんの時も――

「サーーーーー」

 お勉強中も――

「サーーーーーーー」

 お昼ご飯の時も――

「サーーーーーーー」

 二人の頭上には雨が降っていた。



 これは一体どういうことだ?


 不思議に思いボンズがみんなに尋ねると――パチがりゆうを説明した。

「そんな夜更かししていたからっておやつぬきにしなくても……それはイジけちゃうよ」

 ボンズがそういうとパチがキッと睨み付け――「夜更かしじゃなくて夜遊びしようとしていたから怒ってんのよ。アンタね、もしまた甘い顔しておやつを隠れてあげたりなんかしたら……穴、ぶち抜くぞコラ」

「――ハイ!」

 眼が本気だ。ところであなとはどこだろう? 拷問には違いないだろう。

「しかし、あの年で夜遊びとは将来大物だな。がっはっは!」

 壱殿が場の雰囲気を変えようとしても――

「お義父さまはだまってて下さい!!」

「誰がお義父さまだ、おい!」



 そして運命の三時がやってきた。


「びええええええええん」

 ラテっちが泣き出した。

「おやつたべたいよ~おなかすいたよ~」

 つられるようにりゅうも泣き出す。

「びえええええええん」


 泣く二人を励ますみんな。

「明日があるさ!」

「ファイトだ!」

 みんなも動揺しているのだろう。励まし方が雑過ぎる。


「すると、パチが二枚のお皿をもって来た」


「ほら二人ともテーブルに座りなさい」

 さらの上にはトースターと薄く切ったバナナが乗せて焼いてあった。臭いからしてバターに砂糖も使っているのだろう。


「ほら食べなさい」

 りゅうとラテっち、さらには周囲のみんなも驚いて「たべていいの?」と聞く。

「よくいうでしょ。『バナナはおやつにはいりません』ってね」

 ニコっと笑うパチ。

 でも――

「本当にたべてもいいのか?」

「ぱち、おこってないの?」

「そりゃあ、おこっているわよ。でもそれはね、それだけあなたたちが急にいなくなったら悲しいってこと。愛しているのよ」


 りゅうとラテっちは椅子から降り、パチに抱き着いてわんわん泣いた。

「ふふふ、ほんと、子どもなんだから。さぁ、冷めないうちに食べなさい」

『はーーい!!』

 二人は満面の笑みでパチお手製のトーストを食べた。


 一部始終をみていたみんなは――


 優作――「さすがパチさん。素敵です!」

 式 ――「お前……ひとの心があったんだな」

 壱殿――「流石我が娘! 役者よのう」



 ちなみに――


「とこでさぁ、ボンズくん、チョット来なさい」

 ギク!!

「はーい、上着脱いで~」

「やめ、やめ、ああああああああ!!」

「上着からはポテチやチョコが山のように出てきた」


『マジシャンか、アンタは!!』


 みなのツッコミなどお構いなしに、パチはボンズに歩み寄る。

「もしあの子らにおやつをあげたらどうなるか、忠告しておいたよね」

「違う! これは、ほら、あれだ! 明日の分! そう、みんなでたべようと……」

「そうなんだ~、アナ、ブチヌキマース!!」

「やめ、やめて、ああああああああああああああ!!」


 ボンズ以外、平和な一日となりましたとさ。 










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ