第九十四話 読書
相変わらずGM からの連絡がないまま数日間過ごしていたころ――
式さんがリビングのソファーで何やら古めかしい書物を黙々と読みふっていた。彼のイメージからは程遠い姿と、あまりにも真剣に読みふけっている姿に、敢えて誰も話しかけようとはしなかった。
そう、話しかけてはいなかった。
彼のもとにいつものやんちゃ坊主だち、りゅうとラテっちがカキピーを片手に近づいてきた。
足元まできても、式さんは視線を本から離さない。
りゅうが右足。ラテっちが左足に抱き着いてきたが全く微動だにしない式さん。
りゅうとラテっちはそのまま式さんの足をよじ登り、それぞれ両肩にちょこんと座り、式さんが何を読んでいるのか覗き込む。
だが全然理解できない。難しい文字がいっぱい書かれている本だ。
一方式さんは両肩にチビッ子たちを乗せているにもかかわらず一心不乱に本を読んでいる。
二人のことなどまるで気に留めていない。
だが――
ポリポリポリポリ――
二人は式さんの両肩の上で、持っていたカキピーを食べ始めた。
ポリポリポリポリ――
……………………
ポリポリポリポリ――
……………………
ポリポリポリポリ――
……………………
ポリポリポリポリ――
……………………
ポリポ――「うっせーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
式さんは怒鳴ると同時に立ち上がり、りゅうとラテっちを振り落とす。
二人は、くるりと回りながら見事着地。式さんを見つめながらまたカキピーを食べ始める。
「さっきからだまっていれば人の耳元で、ポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリ
と、うるっさい!! 本当にうるさい!! 君たち風に云うとな、もう『うっちゃい!!』」
ポリポリポリポリ――
「まず、食うのをやめろ!!」
りゅうとラテっちはカキピーを食べるのをやめた。
「式さん、何読んでいるんだ??」
「ガキンチョたちには関係ない!」
ポリポリポリポリ――
「だー!! もうわかったよ! スキルに関する本を読んでいるんだ」
「スキル?」
「簡単に云うとな、もっと強くなりたいんだよ、オレは」
「しきさんは充分強いじゃないか」
「もっと強くなりたいんだよ」
「ふーん、まえにボンズもおんなじことをいっていたな」
「ボンズも……まぁ、オレの場合はこの爆破能力をもとっと強化したいという理由から、本で爆破に関することを調べていたんだけどな」
「ギャグきゃらとしては、かんぺきなんでちゅけどね~にやり」
「おじょうちゃん……君にだけはいわれたくないよ」
「ほーほー。でもね、ぼんずはおそとでれんしゅうしてまちた。なんでにゃんにゃんは、おうちのなかなの??」
「そりゃぁ、知識を得てだな…………(まてよ、いわれてみればそのとおりかも。それにこの二人なら練習相手にはもってこいだ)」
式さんは突然二人を抱きかかえると――
「おい、二人とも外に出て俺の修行に付き合ってくれないか?」
すると二人は「たきにうたれるんだな!」と大喜び。
「違う! 爆破の強化の修行だ」
二人はおおきく頷く。
「おう、いいぞ!!」
「どんとこーい」
「よし、それじゃ早速行くか!!」
『おおー!!』
「ちょっと待って下さい!」
すっると、部屋のドアから優作が入ってきた。
「抜け駆けは無しですよ式」
「そんなつもりはないんだが、お前も一緒に行くか?」
「もちろんです。――ただ、その前に……」
「その前に?」
優作が式の耳元でささやく。
「とりあえず皆さんに……特にボンズさんの了解だけは取っておいた方がいいですよ」
「ボンズの? なんで? お前さ、バトルものは隠れて修行して強くなるからかっこいいんじゃないか」
「何をベタなことを……いいですか! あなたは攻撃力だけで言えばかなり高いんですから。りゅう君は大丈夫かもしれませんが、もしもラテっちちゃんにケガなんて負わせたら……ボンズさんに指から包丁で千切りにされますよ」
「まさかそんな……………………あるな」
サーっと青ざめる二人。
取り合えず、ギルドメンバーを集めて修行したい旨を伝えた。
式さんはポツリと呟いた。
「なんか……カッコわるい……」
すごい久々の更新です。しかも短い……ドキドキ




