表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/145

第九十一話 人形②

 

 朝、食堂では軽いパニック状態になっていた。


 食堂では周りにいる他のギルドメンバーが騒いでいた。

「俺が本物だ!!」

「信じてくれ!!」


 食堂にはすでに壱・式・パチ・優作がコーヒーを飲みながら周囲のプレイヤーの人間観察をしていた。

 だが、何が起こったかはNPCノンプレイヤーキャラクターが話しかけてきたことですぐ把握した。

 ――何かのクエストだと。

「|the last one party《ザ ラスト ワン パーティー》の皆さまですね」

「そうだが……」

 壱殿が対応する。

「この手紙を読んで下さい。そして内容に従うようGM(ゲームマスター)様より言付けを預かっております故」

「わかった」

 NPCノンプレイヤーキャラクターはそれぞれのギルドに手紙を渡しているようだ。


 そして、内容は感染クエストが終わると同時に発動するクエストだった。

 ギルドメンバーそっくりな偽物のプレイヤーをギルドに紛れさせる。

 タイムリミットがあり、丸一日だけ。もし過ぎると、偽物のプレイヤーから毒霧を撒き散らしギルド全員を【アウトオーバー】させる――という内容だった。

 ――さらには。

 ・ほぼ完璧に対象のプレイヤーをコピーしている。

 ・只、ほんの些細な癖や突発的な行動に差異がでる。

 ・仲間をどれだけ把握しているかがカギになる。

 ・判別すれば、手紙に同封されていたお札を張れば正体が現れる。

 ・もし、本物に張ってしまえば、そのプレイヤーは【アウトオーバー】となり、蘇生不可能となる。そして、また新たな偽物が誕生する。

 ・そして、正解した場合でもダミーが七福星という七体の大蛇に変身し、戦闘となる。

 ――と、いう内容だった。

 七福星といえば前回のアップデートでの最強ボスとして有名な魔物だった。

 毒を属性とし、攻撃力の高さとHPの高さを備える。それが七体同時に襲ってくる強敵だ。


「この中の誰かに偽物が混じっているというわけか」

 壱殿が言葉を漏らす。

「さて、どう見破るかだな」

 式さんの問いに、壱殿が答える。

「もし、この中の誰かに扮していればそれほど困難なクエストではない。人それぞれ固有の癖があるからな。問題は七福星だろう」

 これに優作が答える。

「確かにそうです。自分はゲームで闘ったことがありますがまるで歯が立ちませんでした。他のプレイヤーもギルド単位の大多数のプレイヤーでようやく倒したと聞いています」

「そうだ。あの魔物はかなり強い。ワシ達七人で倒せるかどうか……だ。そして、もう一つ重大な問題がある」

「重大な問題??」

「あぁ、こちらの方がはるかに問題だろう。さっきも云ったが、もし偽物が大人ならどうにかなる。だがしかし……」

 この時点で、皆が壱殿の云いたいことを把握した。

 だが、誰も続きを云えないでいる。

 あまりにも不安だから――


「みんな、おはよー!」

 ギクッ!

 皆が恐る恐る振り返ると、そこには元気に挨拶をするりゅうの姿があった。

 一瞬、皆が安堵の表情を浮かべる。

「おはようりゅう。ラテっちは?」

 パチが問うと――


『おやつちょーだい!!』


『ゲハァッ!!!!』

 大人たちはコーヒーを吹き出し、同時に机に頭突きする。

「よ…………よりにもよって、おチビちゃんとは……」


 ○



 ラテっちが二人。


『おやつちょーだい!』

 パチが二人のラテっちのアゴをタプタプするも、プニプニ感も一緒。


「困ったわね……りゅう、わからないの?」

「わーい! ラテっちが増えたー!!」

 二人の間に入り、手を繋いで喜ぶ。

 ラインダンスしながらスキップして二人のラテっちと楽しく遊ぶ始末だ。

「りゅうがこの調子では、誰もわからないわね。ねぇ、りゅう。ボンズはどうしたのよ?」

「出かけたぞ。買い物に行くって云ってた」

「買い物?? この非常事態に何をのんきなことをしているのよ。よし! 私が見抜いてあげるわ!! ラテっち。おねぇちゃんとお部屋にいきましょう」

『うちゅ?』


 三人が手をつないでパチの寝室に入る。――数秒後。

「やーめーてー!!」

「たちゅけてー!!」


『だれかーきてー!!』


 壱殿たちが慌ててパチの寝室に飛び込むと、パチがラテっちたちの上着をめくりあげ、おなかをタプタプし続けていた。


「何やってんだ。貴様は?」

「いや、タプタプ感に違いがあるかどうかを試して……」

 二人のラテっちが壱殿のズボンに抱き着く。

「うえーん、いちどのー」

「いちどのー」

『もうおよめにいけないでちゅ』

「パチよ……貴様本物の阿呆だな」

「いい案だと思ったんだけどなー」

 すると――

「ただいまー」

 その時、ボンズが帰ってきた」

「ぼんずだ!」

「ぼんず~!」

 二人のラテっちがボンズを出迎える。

「どこに行っていたのよ!!」

 パチが怒ると「すまんすまん」といって笑うボンズ。

「随分と余裕だな。この非常時に」

 壱殿も少し怒り気味だ。

「あぁ、これから本物のラテっちを当てるから」

「そんなことが可能なのか」

「あぁ、それより、歩きながら聞いたんだが、本物を見つけると戦闘なんだろ。岩石地帯まで移動しよう」

「あ、あぁ……」



 ○


 岩石地帯にて――


「さてボンズ。偽物の見分け方だが、どうするんだ?」

「あぁ、簡単だ」

 ボンズはアイテムポケットからデラックスケーキだす

『ふひょおおおお!』

 喜び方は一緒。

 ケーキをラテっちの目の前に用意。

『わーい!』

 二人のラテっちが喜んだ瞬間、ボンズはケーキの板チョコを取り上げ、食べてしまった。

「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!」

 途端に大きな声をあげ泣いてしまうラテっちが一人。

 もう一方は無表情のまま全く反応を示さない。


「わかったわ! 泣いている方が本物のラテっちね」

 パチの回答に首を横に振るボンズ。

「見てみな」

 ボンズは無表情のラテっちの前に立ち、顔のすぐ目の前で手を振る。

 それでも、反応どころか瞬きすらしなかった。

「…………もしかして、気絶してる?」

「はい、コッチが本物」

「どんだけおやつに命かけているのよ!!」




もーいーくつねーるーとー、おーしょーおーがーつー!

ふにゃっ!? あしたでちゅ!

いちねんかん、ありがとございまちた! らいねんもよろしくおねがいちまちゅ!!

らいねんはもっといいとしになりまちゅよーに!!

ばい、ラテっち まりゅ()

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ