カフカの春
グレーゴルは芋虫に変身する。
それだけでも十分に狂気に満ち溢れているのにカフカはその後も文章を続けていた。
研究家や専門家ではないから詳しいことは分からないけれど、あの作品には特殊な経緯があったことは間違いない。
カフカの思想や心理状況が物語のなんとも言えない重苦しさを生み出したのか。
名前のみを定められた主人公が物語の一人歩きを始め、そのエンディングが変身だったのか。
僕には分からない。
けれど久しぶりに「変身」を手にとった今朝、不意に頭を過った言葉があった。
カフカは変身したグレーゴルをその目で見たのではないのか。
4月下旬の朝、今年はどこか肌寒い。